猛暑日の過去最多が続々!暑すぎた2023年夏なぜ異常気象に?
2023
気象庁では気温に応じた予報用語があります。
夏日…1日の最高気温25度以上の日
真夏日…1日の最高気温30度以上の日
猛暑日…1日の最高気温35度以上の日
熱帯夜…夜間の最低気温25度以上のこと
冬日…1日の最低気温0度未満の日
真冬日…1日の最高気温0度未満の日
じつは猛暑日という言葉は、気温の高まりを背景に「熱中症」などと合わせて2007年から使われ始めた言葉です。このままでは最低気温30度以上、最高気温40度以上の日にあらたな名前がつく日もそう遠くないかもしれません。
全国 各地 で猛暑 の新 記録
40度超 え続々 、過去 ”最高 ”の最低 気温 31.4度 も
実際にどれくらい異常な暑さだったのか、2023年の夏を振り返ってみましょう。
まず注目したいのが最高気温です。8月5日に福島県伊達市梁川で40.0度、8月10日には石川県小松市で 40.0度を観測するなど、40度台の気温が記録されました。また、新潟県糸魚川市では 8月10日の最低気温が 31.4度となり、全国を通じてこれまででいちばん高い最低気温を記録しました。なお、7月16日から8月23日の期間で全国の観測点 915 地点のうち 106 地点で1日の最高気温の過去最高記録を更新しています。
※平年値…過去30年間の気象データにおける平均値のこと。2023年に使われている平年値は1991~2020年の気象データの平均値となる。平年値は10年ごとに更新され、2031年からは2001~2030年の平均値が平年値となる。
猛暑 日 が連続 22日 、夏 の平均 気温 は史上 最高
高い気温を記録しただけでなく、暑い日が長く続いたのも2023年の特徴です。
兵庫県豊岡市では猛暑日が7月22日から8月12日までの連続22日という最長記録を記録しました。また、猛暑日が観測された日数は京都市で43日、東京都心で22日といずれも過去最多に。さらに9月28日には三重県桑名市で35.3度を記録し、9月末にも関わらず異例の猛暑日となりました。
なお、気象庁によると、9月の平均気温も全国的に平年値より2~3度ほど高く、2023年の7月から9月の平均気温は気象庁が統計を取り始めた125年間でもっとも高くなりました。まさに異常気象です。なお、異常気象は高温だけに留まりません。2023年の9月は台風の発生がたったの2個で、異常に少ないという特徴もありました。
猛暑 の原因 は自然 現象 +温暖化 ?
この暑い夏をもたらしたものはいったい何だったのでしょうか。これは複数の要因が絡み合っています。
ひとつめは、夏に日本列島付近を覆う太平洋高気圧の勢力が強かったことです。また、北半球において真ん中あたりの緯度の上空を流れるジェット気流と呼ばれる強い西風が、日本列島の近くで北方向に膨らむように曲がってしまったのも原因です。このジェット気流の蛇行によって生まれた背の高い高気圧と太平洋高気圧の合わせ技で、日本列島は雲がかかることなく晴れて、灼熱の太陽が照りつけることになりました。
太平洋高気圧の勢力が強まり、日本列島付近でジェット気流が曲がった原因はいくつかありますが、日本の南方にあるフィリピン付近で積乱雲がたくさんできたことによる影響のようです。2023年の前半には、ラニーニャ現象というフィリピン付近の海面水温が高くなる現象が発生していました。それにより海水が盛んに蒸発して、積乱雲がたくさんできやすくなったのです。大気や海は地球全体でつながっているので、フィリピンのように日本から遠く離れた場所の状態が日本にも影響を及ぼすことがよくあります。
また、2023年は北日本の海面の水温も記録的に高かったというのも特徴です。これは、高気圧による晴天が続いていたことと、暖流の黒潮が北日本にまで流れてきた影響によるものだと考えられています。海面水温が高ければ、海と接する空気の気温も高くなるので、これも2023年が特に北日本で高い気温を記録した原因のひとつだと考えられています。
太平洋高気圧の張り出しが強くなったり、ジェット気流が蛇行したり、ラニーニャ現象が発生したりすることで異常気象になるのは、太古から地球上で繰り返されてきたことです。ただ、今年の猛暑が近年類を見ないほどの暑さになったのは、これらの自然現象のせいだけではありません。二酸化炭素といった温室効果ガスの排出など人間の活動が原因で起こる地球温暖化による気温の底上げも影響していると考えられています。
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2023年10月24日に発表された気象庁の3か月予報では、偏西風はやはり日本付近で北方向に蛇行しており、シベリア高気圧からの寒気の南下が弱いと予想されています。少なくとも1月までの気温は全国的に高い傾向になる可能性が高いようです。なお、11月7日にはフェーン現象が発生したことで関東地方を中心に夏日を記録する地点が続出し、半そででも汗ばむ気温となりました。東京都心では27.5度を記録して、100年ぶりに11月の最高気温の記録を更新しました。
今年の猛暑を経験して、「地球はこれからどれだけ熱くなるのだろう」と心配になってしまう人もいることでしょう。
日本の平均気温の変化は、1898年から2019年の間に、100年当たり1.24度の割合で上昇しました。これは世界平均よりも大きい変化です。
21世紀末の日本の平均気温は、20世紀末と比べて、地球温暖化対策をまったくしていない場合だと最大で約4.5度上昇すると考えられています。この場合、猛暑日と熱帯夜の日も増えて、猛暑日は全国平均で19日、熱帯夜も約40日も増えるとみられます。ますます夏が厳しく、長くなりそうです。
気候変動については、インターネット上にもたくさんの学習サイトなどがあり、子ども向けのものもあります。たとえば、神奈川県気候変動適応センターの「かながわ気候変動WEB KIDS」では、気候変動による猛暑や自然災害への対策をキャラクターと一緒に学べる動画で紹介。気温や温室効果ガス量がどれくらい変化しているかなどの基本的な疑問も、グラフなどを使って分かりやすく解説しています。
また、学研キッズネットでSDGsについて学べるまんが連載「地球防衛隊SDGs」でも、目標13「気候変動に具体的な対策を」を取り上げた回があり、その解説編では目標達成に向けた考え方などを紹介しています。
これから地球の気象はどうなるのか、気候変動を防ぐために何ができるかなど調べてみましょう。
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参考 資料
気象庁「令和 5 年梅雨期の大雨と 7 月後半以降の顕著な高温の特徴と要因について」:https://www.jma.go.jp/jma/press/2308/28a/kentoukai20230828.pdf
ウェザーニュース「2023年の夏は過去最高を大きく上回る圧倒的な暑さ」:https://weathernews.jp/s/topics/202309/010215/
気象庁「日本の気候変動2020 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書」:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2020/pdf/cc2020_honpen.pdf
海洋研究開発機構「黒潮親潮ウォッチ 最近の海洋熱波・寒波(2023/8) 北日本の高水温、台風の影響」:https://www.jamstec.go.jp/aplinfo/kowatch/?p=12842
気象庁 3か月予報(2023年10月24日発表)の解説:https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?term=P3M
文/今井明子