こたえ:カナダは人気の語学留学先であるなど、政治・経済・文化の多くで安定した交流をもっています。
日本は、カナダがイギリス自治領だった1889年、バンクーバーに領事館を設置しました。1928年には両政府が正式に外交関係を結ぶことで合意しました。
明治から大正時代の大きなつながりは、日本からカナダへのたくさんの移民です。ただ第二次世界大戦中は敵国関係になり、日系カナダ人は強制収容されて自由や財産を奪われるなどしました。
カナダは大戦後、日本の国際社会復帰に理解ある対応を取り、そこから現在にいたるまで友好的な関係を深めてきています。
経済での結びつき
日本はカナダから原材料・農産品を輸入し、日本からカナダへは自動車や機械等の製造業品を輸出するなど、産業の強みがかみあっている貿易関係です。
日本にとってカナダは、輸出先として世界18位、輸入先としては13位です(2022年)1)。
日本からカナダへは、自動車、建設用・鉱山用機械、蓄電池などの電気機器、農林水産物として日本酒などを輸出しています(2022年)2)。
カナダから日本へは、石炭など鉱物性燃料、採油用の菜種、豚肉などを輸入しています(2022年)3)。また日本の木材の輸入先として、カナダが最も多い第1位の輸入額です
(2022年)4)。
日本とカナダはともに、両国を含む11か国で経済連携ルールを定めたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定に加わっています。
文化での結びつき
日本とカナダは、語学学習を通じた交流がさかんです。日本の学生にとってカナダは人気の留学先となっています。日本の地方自治体が国と協力して実施している「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」には、2022年時点で500人以上のカナダ人青年たちが招かれていて、全国の小・中学校のALTなどとして活動しています5)。
サトウカエデの樹液からつくるメープルシロップは、カナダの特産品です。カナダ人作家モンゴメリの長編小説『赤毛のアン』は、日本でもよく知られています。
明治時代に日本へ派遣されたカナダ人宣教師たちは、現在、東京都の麻布高校と東洋英和女学院につながる私立学校を設立しました。
神奈川県横浜市の山下公園前に係留されている「氷川丸」は、第二次世界大戦前から、アメリカのシアトルおよびカナダのバンク―バーと日本を結ぶ貨客船などとして活躍した船です。
明治時代から日本人の移民がはじまり、現在のバンクーバーにある日本人街はその名残です。また当時バンクーバーで日系カナダ人を中心につくられていた野球チーム「朝日」の活躍は、漫画化・映画化もされていて有名です。2021年の調査によると、カナダには99,000人以上の日系人がいます6)。
政治・軍事の結びつき
日本とカナダはともに、地球規模の課題について話し合う先進国の集まりG7の構成国として友好関係をたもっていて、太平洋を囲む国同士としても連携しています。安全保障面でも自衛隊とカナダ海軍の共同訓練、共同研究・開発などで協力関係を築いています。
第二次世界大戦後、カナダは、日本が国連といった国際組織や貿易ルールに加わろうとする場面で連携するなど、日本の国際社会への復帰を助けました。
出典
参考資料
監修者:井田仁康
1958年、東京都生まれ。筑波大学人間系長、教授。博士(理学)。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任。社会科教育・地理教育の研究をおこなっている。編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本 世界212の国と地域が2時間でわかる』(ダイヤモンド社)、『高校社会「地理総合」の授業を創る』(明治図書)。監修に『オールカラー 楽しく覚える! 世界の国』(ナツメ社)、『地図でスッと頭に入るアジア25の国と地域』(昭文社)などがある。