ロシアが、西隣のウクライナに攻め込んだのは2022年2月のことです。多くの人の命をうばい、夢や生活をうばい、街を壊しても、いまだ戦争は終わっていません。学研キッズネットでは、この戦争についての記事を公開するとともに、みんなが知りたいこと、ふしぎに思っていることを募集しました。たくさんの質問がよせられたうち、まず5項目について、ウクライナ研究の専門家、岡部芳彦さんに回答してもらいました。
※2022年8月22日時点での認識に基づいて回答しています。
※すべての質問に回答しているわけではありません。
※内容の似た質問は、まとめて回答しています。
ロシアのウクライナ侵攻についての詳しい記事はコチラ
戦争の理由は何ですか?(御厨天惺・中学1年生・長崎)
ウクライナとロシアの戦争はなぜ起きたのですか? (石井はるか・小学4年生・神奈川)
岡部さんからの回答
ロシアのプーチン大統領は、東ウクライナの「ロシア語を話すロシア系住民がウクライナに迫害されているので、それを助けるために」、戦争ではなく「特別軍事作戦」を行っていると説明しています。またアメリカやヨーロッパの多くの国が加盟する軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO、ナトー)がロシアに敵対的な態度を取っているとも言っていました。この2つについては具体的な証拠がなく、ロシア側の思い込み、あるいはロシア側に作り出されたフェイクニュースといっていいでしょう。
一方、2014年にウクライナで政変があって政権が交代した際、その混乱を突いて、ロシアはウクライナ南部のクリミア半島を占領し、ロシアに無理やり取り込みました。東ウクライナにもこっそりと軍隊を送ってロシアの勢力圏にしようとしてきました。それまではウクライナは政権が違っても、事実上の「中立政策」をとっていました。しかし2014年以降、ロシアの脅威に対抗するために、軍事面ではNATOへ、経済面では欧州連合(EU)への加盟を目指します。ロシアは、自分たちから離れようとするウクライナを引き留める最後の手段として、ウクライナ全土の占領、それができないにしても首都キーウを攻撃して大統領を代えて、ロシアにとって都合のいい政権を作ろうとしました。それが戦争の原因です。
どちらが悪いのですか?(スライム・小学6年生・熊本)
ウクライナとロシア、どちらが正しいの?(のざきゆうこう・小学4年生・東京)
岡部さんからの回答
理由はどうあれ、戦争を始めたのはロシアです。いきなり戦争を始めることは正しいことでありません。百歩譲って、ロシアに理由があったとしても、それを話し合いで解決しようと最大限の努力をしませんでした。また直前まで「侵攻はしない」とウソをつき続けました。その意味でロシアが正しくないのは間違いありません。
ウクライナの人はどうしてますか?(コザクラインコ・小学4年生・神奈川)
ウクライナの人たちはどんな生活をしているのですか?(バナナ・小学3年生・東京)
岡部さんからの回答
戦場となっている東ウクライナや南ウクライナをのぞけば、3月にはロシア軍から攻撃を受けて危機的であった首都キーウでさえ、市民が日常を取り戻そうとしています。一方、時にはウクライナ全土に空襲警報が出ることもあり、まだ安心はできない状態です。ウクライナが戒厳令を出していて行動などに制限もあり、飛行機が飛んでおらず、列車か陸路しか移動手段がありません。
いつ戦争が終わるの?(⭐Amu⭐・小学5年生・愛知県)
戦争は来年中に終わると思いますか?(虎・小学6年生・神奈川県)
岡部さんからの回答
分かりません。今回の戦争は2022年2月24日に急に起こったのではなく、2014年にロシアによるクリミア占領があり、そして東ウクライナでの紛争も8年間ずーっと続いてきました。ロシアが占領した地域に、世界中からは認められない、自分たちだけで勝手に名乗る「国家」を建設しようという動きもあり、長期化することも考えられます。
私たちの力で戦争を止められますか?(yuiri・小学5年生・富山)
岡部さんからの回答
僕は、できると思います。ここに質問してくれたこと、つまりこの戦争への関心を持ち続け、戦争への批判的な声をあげ続けることこそが、この戦争を早く終わらせる方法の一つです。
たくさんの質問をありがとうございます
学研キッズネットでは、みんなから、ロシアのウクライナ侵攻についての岡部さんへの質問を募集していましたが、2022年12月31日で受け付けを終了しました。たくさんの「なぜ」「どうして」を寄せてくれて、本当にありがとうございました。
回答してくれた方:岡部芳彦
1973年生まれ。
博士(歴史学)、博士(経済学)。
神戸学院大学経済学部教授、ウクライナ研究会(国際ウクライナ学会日本支部)会長。
日本人初のウクライナ国立農業科学アカデミー外国人会員。