2022年2月にロシアが、西隣のウクライナに攻め込んだ戦争は、いまだ終わりが見えません。学研キッズネットでは、この戦争についての記事を公開するとともに、みんなが知りたいこと、ふしぎに思っていることを募集しました。みんなからよせられた質問に、ウクライナ研究の専門家、岡部芳彦さんに回答してもらう記事の第2弾です。
※2022年10月24日時点での認識に基づいて回答しています。
※すべての質問に回答しているわけではありません。
※内容の似た質問は、まとめて回答しています。
ロシアのウクライナ侵攻についての詳しい記事はコチラ
質問への岡部さんからの回答その1
ロシア側が得することはあるのですか?(こちゃ・小学6年生・神奈川)
損得だけで戦争が起こらないことも今回の教訓です。偏った歴史観を指導者が信じ込んだり、国の威信のためだけだったりしても戦争が起こることも覚えておいてください。
ウクライナ軍がロシアの領土に仕返しをしないのはなぜですか?
(かんちゃん・中学2年生・福島)
現在、ウクライナはまだ自国の領土がロシアの攻撃にさらされています。ウクライナは侵攻を受けた側で、もともと戦争がしたかったわけではありません。一方、侵攻してきた敵を軍事力を使って撃退するには、自国の国土が戦場となるため、市民の損害も大きく非常に難しいのも分かりました。ロシアに攻撃をするとそれを口実に核兵器を使用する恐れもあるため積極的な攻撃はできない状態です。
最終的にはウクライナはNATOに加盟することはできますか?
(ゼレンスキー・中学2年生・愛媛)
実はこの戦争が始まるまでウクライナのNATO加盟は夢のまた夢、個人的には少なくとも10年、もしかすると20年ぐらい先ではないかとも思っていました。欧州連合(EU)については、6月下旬に「加盟候補国」と認められました。以前なら、こうなるまで相当な時間がかかると思われたのですが、今回の戦争に関連して、ウクライナへの支援や応援が背景にあります。歴史が動く時には、戦争や大きな出来事がきっかけになることもあるのでウクライナのNATO加盟についても何が起こるか分かりません。
今はあまりウクライナのニュースを見ません。なぜですか?
(いなり・小学5年生・兵庫)
日本の、そして世界のマスメディアが急速に話題に飽きてきているからです。またメディアは視聴者の見たいものを意識するので、視聴者の「飽き」とも言えるでしょう。
ロシアや、ウクライナからの情報は、どこから発信されていますか? 正確なのでしょうか?(淵脇啓太・小学6年生・鹿児島)
戦争なのでどちらも情報戦を仕掛けています。ただロシアの情報戦は国民に真実を隠す方法、ウクライナはどちらかと言えば世界に向けてオープンな姿勢をアピールする方法でやり方が分かれています。
開戦以降にウクライナ国内のロシア系住民が迫害されたというニュースはロシア側の宣伝を除いて耳にしません。何故でしょうか?
(けんと・中学3年生・神奈川県)
ウソだからです。2014年の東ウクライナ紛争の初期には、欧米や日本の記者もロシア側が多く取材することができましたが、その時ですら、誰一人として大量虐殺や大規模な迫害現場を撮影することができませんでした。
日本がこの戦争に参加することはありますか?
(おかもと・小学4年生・大阪府)
実は日本はロシアから「非友好国」に指定されていて、戦争状態の一歩手前という捉え方もできます。また第二次世界大戦後、日本とロシアの間には北方領土の問題もあり平和条約が結ばれていないため真のパートナーではないことは意識しておいてください。
ロシアが日本に攻め込んできたとき、日本は反撃しますか?
(みんと・小学6年生・大阪府)
日本は第二次世界大戦後、「専守防衛」つまり自国が攻撃されたときには、自国内で防衛する方針できました。実はその「専守防衛」を行っているのが今のウクライナです。自分たちの町や市民に犠牲を出しながらの専守防衛が非常に難しいことも今回の戦争で分かりました。
核兵器を持っていれば、何をしても良いとというのが核の抑止力ですか?
(かんちゃん・中学2年生・福島)
良い質問です。本来であれば、核兵器を持つ大国同士はそれを使わないために慎重な行動が求められ、核抑止力と呼ばれるようになりました。ただ今回、ロシアはそれを逆手にとり、核兵器を持っている自分たちには、どの国も強い態度に出られないだろうと考えているようです。
なぜ人々は争うのでしょうか、話し合いという術を使わないのでしょうか?(クヴェイト・その他・神奈川県)
非常に大切な、そして重い質問です。どうして争いがなくならないのか、それを考え続けることこそが、無益な争いをなくす第一歩だと思います。
中国の一帯一路政策にウクライナが積極的で、ロシアがシベリア鉄道の利権を守ろうと考えてウクライナに侵攻したのだと思うのですが、ロシアと中国は同盟関係を結んでいると思いますか?(j・中学3年生・北海道)
非常に面白い視点です。たしかにウクライナがここ最近、中国に接近していたのは事実です。2月24日の戦争開始後も、中国がロシアに表面上は味方しない背景にこういった関係もあると思われます。鉄道利権は関係ないと思いますが、ロシアと中国が同盟関係と呼べるかといえば、NOです。これはプーチン大統領も認めていて、先日、ウズベキスタンのサマルカンドであった上海協力機構の会議でも、プーチン大統領は中国が「中立」を守っていることにお礼を言いましたが、逆に言えば中国がロシアを積極的に支援していないことを暗に認めた発言とも言えます。世界は我々が考えるよりかなり複雑です。
おまけ
岡部さんのファッションについてのこだわりなどが知りたいです。(ゆうこ(。・ω・。)ノ・その他・群馬)
本当は戦争についてではなく「陽気で、明るく、美味しい国」ウクライナの魅力を紹介したいのですが、残念ながらその機会がないので、ウクライナの民族衣装のヴィシヴァンカを着たり、何か一つウクライナを表すものを身に着けたりするようにしています。ネクタイがクリミア・タタール人の柄であったり、ウクライナのシンボルの花ひまわりの摘まみ細工といった具合です。