金(ゴールド)の価格はなぜ上がる? 経済の専門家がやさしく解説
題字デザイン・佐竹政紀
金は世界で古くから価値があるとみなされてきた金属です。この1年で60%以上、価格が上がっています。背景には、戦争などの危険の高まりや、景気への不安があります。
世界共通の「価値のものさし」 価格が上昇
は大事な言葉なので調べてみよう

Q 金は経済でどんな存在?
A 価値が安定し、物価高にも強い、投資での「最後のとりで」
金は古代から人々が価値を認めてきた金属で、6千年ほどの歴史があるとされています。人工的に作れないので、お金のように世に出回る量を増やせず、さびにくく、どこでも通じる「価値を測るものさし」となってきました。
紙幣を発行する中央銀行も、資産として金を持ちます。株などの値動きと結びつきにくいため、物価が上がるときや、戦争や貿易まさつなどの危険が高まるときに、「安全な資産」として選ばれやすいです。
それぞれの国が発行する通貨の価値がゆれ動くときでも、金を作り出すことができない現代では、投資での「最後のとりで」になりやすい特徴があります。

金の相場は10月に史上最高値をぬりかえました。一時は1オンス(約28グラム)=4100ドル(約63万円)をこえました。
金の価格が急に上がるのにはいくつかの理由があります。一つは物価が上がることへの心配です。物価は通貨の価値に大きく影響します。物価が上がるということは、その国の通貨の価値が下がることを意味します。
一方で金は価値が保たれやすく、物価の上昇に強い資産です。物価が上がって通貨の価値が下がる心配があると、金を買って資産を守りたいと考える人が増えやすくなります。
Q 金が高くなる背景は?
A 中央銀行の資産、米ドルから金に乗りかえ
さらに近年、世界の中央銀行が金を積極的に買っていることも金の価格上昇に影響しています。世界の中央銀行が2022~24年に買った金の量は年1千トンをこえていて、25年も同じ状況が続く見通しです。中央銀行は一度買った資産をめったに売らないため、金の価値を支えています。
世界の中央銀行が持つ資産の中で、最大の割合をしめるのが、世界で最も使われる通貨であるアメリカ(米国)のドルです。ただ、1999年ごろから比べると、その割合は少し下がっています。いくつかの国・地域の中央銀行は米ドルを売り、金にかえています。

中央銀行は保有する資産をめったに売らないのですが、今の米国は貿易などで多額の赤字をかかえ、関税をめぐる問題などもあって将来が心配されることなどから、多くの中央銀行が金にかえる動きをしているようです。
米国の中央銀行(FRB)が金利を引き下げるかもしれないとの情報もあり、さらに投資のお金が金に集まりやすい状況が生まれています。
メモ
基軸通貨の米ドル 人気は曲がり角?
世界の貿易や金融で中心的に使われる通貨を「基軸通貨」と呼びます。これまでスペイン→オランダ→イギリス→米国と移り変わっていて、およそ100年の周期で入れかわっています。米国のドルの人気も曲がり角に来ているのかもしれません。
とはいえ、今の時点で米ドルが果たす役割はまだまだ大きいです。米ドルの信頼が失われるわけではなく、世界で資産が多様になる中で、金の役割が増しているともいえそうです。もっとも金の人気は根強く、2026年に1オンス=5千ドルに達するとの予想もあります。
解説/崔真淑(エコノミスト・「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役)
(朝日小学生新聞2025年11月15日付)









