アートは、子どもの可能性を広げる 城戸真亜子さん(「学研・城戸真亜子アートスクール」主宰)【後編】
画家でタレントの城戸真亜子さんが主宰する「学研・城戸真亜子アートスクール」。子どもが創作することで身につけるのは、根気、判断力、寛容の精神など、生きて行く上で大切なことばかりです。また、子どもがのびのびと絵を描くようになる、とっておきの方法を後編では教えていただきました。
作品の工夫したところや、がんばったところを褒める
城戸真亜子さん(画家・タレント)
―――子どもは創作することで何を学ぶのでしょうか?
まず、絵や工作をはじめたら、最後まで自分で仕上げるしかないので、根気が養われます。それに、手と頭を使います。頭だけで考えることには限界があるけれど、手を使って考える習慣が身に付けば、判断力や表現力の幅が広がっていくと思います。
それに、教室ではほかの子どもといっしょに絵を描くので、友だちの作品を見る機会が増えます。思いもよらない絵を描く子どもがいたり、自分より下手だと思っていたのに、先生に褒められている友だちがいたりします。子どもは先生が友だちを褒める言葉を聞いて、世の中にはいろいろな価値観があることを知ります。人はそれぞれ感じ方が違う、違っていいのだということを、教室を通じて自然に理解してくことは、他人に対する「寛容な精神」に繋がるのではないでしょうか。
―――子どもにのびのびと絵を描かせるには、どういうことを心がければいいですか?
子どもが絵を描きはじめる前に、五感を刺激していろいろなことに気付かせてみるといいですね。苦手なテーマの場合も興味が持てるように、イマジネーションを広げてあげるといいと思います。もし、宇宙がテーマの空想画だったら、いっしょに夜空の星を見るとか、プラネタリウムに行くとか、インターネットで星の画像を見せるなど、子どもの興味が広がるようなことをしてみてください。「ママが宇宙人だったらどうする?」とか(笑)、ちょっとおもしろいことを言ってもいいかもしれません。
色づかいについても、たとえば「このテーブルは茶色に見えるけれど、よく見たら他の色がたくさん混ざっているね」とか、「テーブルの上に置いてあるお皿の色が反射しているね」など、子どもが色に注目するようなことを言ってみてください。絵を描き始めてからアドバイスするよりも、描き始める前に興味を持たせたほうが、子どもの描きたい気持ちが高まってくるはずです。
―――講師の先生は、どのような点を注意して指導しているのですか?
基本的には子どもを褒めるようにしています。褒められたら、その子もまた描こうという気持ちになりますよね。でも、今日はやる気がイマイチなのに褒められたりすると「先生はちゃんと見てくれていない」ということになりますから、そこは気をつけて対応しています。講師の先生には「子どもの絵を評価するというより、鑑賞するような気持ちで見てください。とくにその子ががんばったところや工夫したポイントを見逃さず、先生がその子の絵を見て感じたことを、素直に本人に伝えてほしい」とお願いしています。
―――創作するうえで、大切なことは何でしょうか?
わたしは「正解はひとつではない」ということを、子どもたちに伝えていきたいと思っています。アートと同様に、子どもたちがこれから生きていく世の中でも正解はひとつではなく、何通りもの答えから本人がチョイスしなければなりません。絵を習い始めたばかりの大人の方に、「描いたことがないので描き方を教えてください」と言われることがありますが、子どもはたとえ初めてだろうと、自分が描きたい部分から果敢に描き始めます。まるで「自分に限界はない」と言っているようで、頼もしさすら感じますね。アートを通して、子どもたちには、たくましい人間に育ってほしいと願っています。
親は、つい絵が上手いとか下手だという目線で見てしまいがちですが、そうではなく、五感をフルに活用して、のびのびと描かせること。「正解はひとつではない」というのは、考えさせられる言葉ですね。
夏休みの時間を利用して、アートイベントに参加したり、自宅でのびのびと自由に絵や工作にチャレンジさせてみたりするのもいいかもしれません。
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