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MOOC/知っておきたい教育用語のトリセツ【第10回】

MOOC/知っておきたい教育用語のトリセツ【第10回】

インターネットで動画の配信が手軽にできるようになり、パソコンさえあればいつでもどこでも学べる時代になりました。世界の有名大学の講義が、だれでもしかも無料で受けられる! そんな夢のようなシステムが世界中に広がって、日本でも話題になりました。「知っておきたい教育用語のトリセツ」第10回目ではその内容と現状について解説します。

MOOC(ムーク)とは、Massive Open Online Courseの頭文字をとったもので、意味は、「大規模公開オンライン講座」です。その複数形MOOCs(ムークス)と表記されることもあります。日本版のJMOOCもあります。

MOOCとはなにか

MOOC=Massive Open Online Course(ムーク、大規模公開オンライン講座)は、オンラインでだれでも無償で利用できる学習講座を提供するサービスで、希望する修了者は有料で修了証を取得できます。

2012年にハーバード大学やスタンフォード大学など北米の一流大学が参加したことから一気に注目されるようになり、2013年に日本でも東大や京大も参加して、授業配信をはじめました。

同じ年に、JMOOCという日本での普及・拡大を行なう団体も設立され、2014年からさまざまな講座が配信されるようになりました。

世界中にいくつかのプラットフォームがあり、世界トップクラスの大学・機関によってさまざまな講座が提供されています。その中でも規模が大きい、コーセラ、エデックスの登録者数合計は3000万人以上に達しています。

東大は、2013年9月よりコーセラで2コース(講座)を提供。2016年12月現在で全10コース(コーセラ6コース、エデックス4コース)を提供しました。それらのコースへの登録者数は世界185か国以上から累計32万人を超える規模となっています。*1

MOOCsのプラットフォーム一覧 *2

(出典)総務省 情報通信白書(平成26年版) 図表1-3-2-1

MOOCは動画で好きなときに自学自習できるだけでなく、コースのサイトに設けられたフォーラムで世界中の「学友」と国籍や年齢、経歴など関係なくチャットで交流できるのも魅力です。

小中高校生向けの講座も

小学生から高校生向けには、カーンアカデミー*3があります。これは、米国人のサルマン・カーン氏(Salman Khan)が遠方に住むいとこの家庭教師をすることからはじまった無料の教育コンテンツサイトで、MOOCの先駆けとなりました。

数学・算数、歴史、音楽、アート、コンピューティング、科学などのほかに、起業家のインタビューなど3000本を越えるビデオ教材と多数の練習問題を無料で提供しており、一部は日本語に翻訳されたものもあります。

MOOCの課題と可能性

どこでもだれでも無料で世界の最高レベルの授業を受けられる! そんなすばらしいサービスができたことで、「テクノロジーの進化が教育の可能性を広げる」と期待が広がりました。

確かに、このようなシステムがあれば、十分な教育を受けられない発展途上国の人や、なんらかの理由で家の外に出るのが難しい人でも、学ぶことができます。
実際に、経済的理由で大学進学をあきらめていたモンゴルの15歳の少年が、MIT(マサチューセツ工科大学)のオンライン講座でトップの成績をとり、学費免除で大学進学を認められた例もあり、世界の大学が競って才能の発掘をしている面もあります。

また、学校で導入すれば、以前紹介したように、授業の動画を見て予習し、学校では演習をする反転学習も可能になります。

一方、MOOCの立ち上げから数年がたったいまでも、世界での修了率が5%と極めて低いことからもわかるように、制限を受けない分、意欲を持ち続けるのが難しいといった課題もあります。また、従来はほとんどが英語による講座なので、英語力がないと理解が難しいというハードルもありました。

しかしJMOOC が発足から2年、日本語の講座を累計140講座、50万人以上が学習している*4という結果からも、新しい学びのスタイルへの関心は高まっているのは確かで、「勉強は学校に通ってするもの」というこれまでの常識が大きく変わるかもしれません。

MOOCのポイント

  • MOOC=Massive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)は、オンラインでだれでも無償で利用できる学習講座を提供するサービス
  •  世界トップクラスの大学・機関による講座が好きなときに受講できる
  •  テクノロジーの進化が教育の可能性を広げる期待がある一方で、修了率が5%と極めて低いことから継続への課題もある
  • 勉強は学校に通ってするものという常識が変わる可能性

 

*1 東京大学 大学公開 より引用
http://www.u-tokyo.ac.jp/ext01/mooc_j.html

*2 総務省 平成26年版 情報通信白書のポイント
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc113200.html

*3カーンアカデミー
https://ja.khanacademy.org/
https://www.khanacademy.org/

*4 JMOOCより引用
https://www.jmooc.jp/#default_lectures_area

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中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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