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つい他の子と比較してしまう/教えて! 陰山先生【第1回】

つい他の子と比較してしまう/教えて! 陰山先生【第1回】

息子の成績はすごく良いわけではありませんが、クラスの平均よりは上だと思います。でも息子よりも成績が良く、ハキハキしている子と比較してしまい、自分の教育の仕方が悪かったのではないかと思ってしまい、いけないと思いながらつい比較してしまい、今のままでいいのかと悩んでいます。

質問

――4月から小学6年生になる息子を持つ母です。
4年生くらいから学習塾に通う子が増える中、6年生になっても「勉強が好きじゃないし、塾に通いたくない」と言い、学校から帰ると遊びに行ってしまいます。

中学受験をするわけではないので、「まあ、それでもいいか」と思っていたのですが、先日保育園から仲良くしているママ友から「○○くん(息子の名前)は塾に行かなくても大丈夫なの?」と言われ、不安になってきました。

それに、中学受験する子は面接の練習もしているせいか、ハキハキしています。ウチの息子は人見知りで、初対面の人に挨拶するのが苦手です。何か質問されてもモジモジしています。そういうことも含めてママ友は心配だと言うのです。

そういわれると、だんだん不安になってきてしまいました。
息子の成績はすごく良いわけではありませんが、クラスの平均よりは上だと思います。でも息子よりも成績が良く、ハキハキしている子と比較してしまい、自分の教育の仕方が悪かったのではないかと思ってしまいます。いけないと思いながら、つい比較してしまい、今のままでいいのかと悩んでいます。

回答

教育は、その子にとって重要な未来を決めていくことにつながっていきます。それぞれの子どもがそれぞれの人生を送っていくわけで、皆が同じ人生を歩むということはありません。ですので、そもそも友だちと比べてどうかということには意味がありません。(他の人の生き方を参考にしながら自分自身の生き方を考えるというのであれば、話は違ってきますが。)

どちらにしても大切なのは、自分自身がどうなっていきたいのか。どうなっていこうとしているのか。そういった意識をはっきりと持つことだと思います。とくに小学校の6年生にもなってきたら、そうしたことについてある一定の方向性を持っておくといいと思います。

例えば、医者になろうと思えば、相当高度な学力が必要とされます。当然、それに見合った中学や高校を選択する必要も出てくるでしょう。このように、自分の目標に合わせて学校を選ぶことも、教育にとって重要な作業のひとつになってきます。

成績が良い悪いというのは、本来そうした自分の目標に照らして高い低いということが問われなければいけないわけで、友だちと比べること自体にはあまり大きな意味はありません。
より高度な学力を身につけるためにはやるべきことが決まっており、それを着実にこなしていくということが大切です。しかし、本当に大切なのは、それをどのような方向に向けていくのかということなのです。
周囲に中学受験をする子どもがいることで、お母さんの考え方が揺らいでしまうとするならば、そこが一番の問題なのではないでしょうか。(有名中学に行くこと自体、将来の目的を意識するものでないとすれば、それはそれで問題が大きいとは思いますが)

これを機会に、将来お子さん自身がどのような人生を送るべきなのかを親子で話し合うことをお勧めします。
6年生であれば、いろいろな社会の出来事も理解することができ、世の中に数多くの職業があることも理解できるでしょう。そうした中で自分自身がどのように生きたいのか、これまでの自分自身の歩みや、憧れる大人たちの姿を参考にしながら決めていく作業をしていければいいと思います。

わたしの経験では、子どもたちは5年生ぐらいから自然に自分たちの未来について考え始め、それなりに迷いながらこういう職業に就いてみたいと自然に思うものです。
また、この時期にこのようになりたいと思った願い事が強ければ強いほど、実現する可能性も高くなってきます。

例えば、わたしの教え子の中に、小学校5年生でロケットを飛ばしたいと思った子がいます。その子は大学では希望の学科には行けなかったけれど、その後大学院に進学し、さらにそこから、大学時代に行けなかった希望する学科に講師として赴任することを決めました。

このように、自分自身の方向性がはっきりしていれば、ときに紆余曲折があったとしても、子どもはその夢の実現に向かって力強く歩むことができます。
ロケットを飛ばしたいと思ったその子にとっては、他の友だちがどのような選択をしているのかは興味があったとしても、それほど大きな影響を与えるものではありません。
そうした自分自身の強い思いをどの段階でどのように決めることができるのか。これが小学校の高学年から中学・高校にかけての重要な教育課題といえるでしょう。

こうした流れの中で、必要な学力とは何なのか。どういう学校を選択するのかということは、おのずと導き出されることです。

まず、お子さん自身の夢や希望がどのような方向性を持つものかを、しっかりと親子で考えてみましょう。そして、それが叶えられるよう、親としてできる限りのサポートをしてあげるというように考えればいいのではないでしょうか。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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