約束を守らずゲームをし続ける息子/教えて!陰山先生【第11回】
小学1年の息子が、約束を破ってゲームばかりしているのことに悩んでいます。
質問
小学1年の息子が、約束を破ってゲームばかりしているのことに悩んでいます。
息子が誕生日にゲームが欲しいというので「ゲームをする前に宿題を終わらせること」「1日のゲーム時間は30分まで」と約束してゲームを買いました。遊んでいるのはポータブルタイプではなく、テレビで見るタイプのものです。
ゲームをやりたい一心で毎日宿題はきちんとやるようになったのですが、ゲームで遊んで良いと約束した時間を守ることができません。わたしが夕食を作ったりして息子といっしょに遊んであげられない時間帯などは、いくら「もうやめようね」と声をかけても聞いてくれません。
わたしが、買い物や妹の幼稚園の行事で外出するときに留守番をさせている間なども、ずっとゲームをやっているようです。
約束が守れないならと、夫から話をしてゲームを取り上げると、そのときは反省するのですが、ゲームを取りつけたら最後、元に戻ってしまいます。
友だちといっしょにゲームで遊んだりすることもあるので、全然使えない状態にしてしまうのはかわいそうな気もします。どうしたらいいでしょうか?
回答
人間は、何かに集中しているとき、それを心地よいと感じるようにできているようです。
しかし、子どもたちがゲームに集中するのは、集中というより夢中になると言った方がいいかもしれません。
わたしには、大手ゲームメーカーのクリエイターの知り合いがいます。わたしが「1日2時間以上ゲームをしていると、子どもの学力は大きく下がるので、1時間程度でゲームを終えるように指導しています」とその人に言うと、「2時間で終えるようなゲームはつくっていない」という答えが返ってきました。ゲームは、もともとそれにのめり込むようにつくられているのです。
そういう中毒性のあるゲームに、小学校の低学年からのめり込んでしまうのは、大きな問題です。こうした状況から脱却するためには、まずはゲームが必要ない家庭環境や生活習慣をつくり上げていくことが大事です。
では、どのようにすれば良いのでしょうか。
その答えを教えてくれたのも、そのゲームクリエイターでした。その人は、自分の子どもにはゲームを一切させていないそうです。勉強ができなくなる、ということも理由なのですが、もっと大きな理由は、将来ゲームのクリエイターになろうとするなら、人のつくったゲームをやっていては、素晴らしいゲームはつくれないと考えているからだそうです。
ゲームは、野や山を走りまわったり、空や宇宙を飛び回ったり、普通にはできないことを疑似体験することでおもしろく感じるものです。リアルな森や山の中で遊び回るという体験のなかに、そのおもしろさや楽しさの本質が潜んでいます。このゲームクリエイターは自分自身も、ふだんは自転車に乗って会社に通い、休みの日は親子でアウトドアを楽しんでいるそうです。
そうすることで、本当に楽しいことは何なのかを、心やからだが学んでいってくれるのです。このクリエイターは、そうした教育を家庭で行っています。
ゲームを買い与えるときは、必ず時間内に終える約束をすることは、中毒症状にさせないために最も大切なことです。しかし、約束を守らず中毒症状になった場合には、一度ゲームをやめさせる必要があると思います。
まずは一度、ゲームをさせない状態にしましょう。そして、夜の時間帯であれば、トランプなどのカードゲームをしたり、親子の会話や読書をしたり、別の夢中になるものを身につけさせていくことが大切です。
そうしたことが十分身についてからでないと、ゲームを返すことにはしないほうが良いと思いますし、ゲームを一切やらないままでも問題はないと思います。
問題は、友だちといっしょにゲームで遊んだりすることがあるために、親がゲームを取り上げることをかわいそうだと思ってしまうことです。これは「みんないっしょにゲーム中毒になりましょう」と言っているようなものです。
家でゲームをしなくなっても、友だちの家に行ってゲームばかりしてしまうことがあるかもしれません。望ましいことではありませんが、さすがに友だちの家でゲームばかりしていたとしても、3時間も4時間もしないでしょう。自分の家庭でなければ、長時間するような状態にならないものです。
仮にゲームをしない状況にしても、いずれ子どもが自分の小遣いを持つようになれば、勝手にゲームを買うことがあるかもしれません。しかし、ある一定の年齢になれば、自分の生活をコントロールする能力も身につけていくことができます。
まずは一度、中毒症状を断ち切ってはいかがしょうか。そして、その間に何をやることが大切なのか、家族みんなで考え、ゲームのない楽しい生活をつくっていけば良いと思います。
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