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小学校5年生の息子の成績を上げたい/教えて!陰山先生【第12回】

小学校5年生の息子の成績を上げたい/教えて!陰山先生【第12回】

息子は、低学年まではどの教科も80点は取っていました。でも、小4の秋くらいから、少しずつ成績が下がりはじめました……。低学年のころは成績が良くても、高学年になって落ちてしまうというのは勉強の方法が間違っているからなのでしょうか。

質問

小5の息子の成績が落ちているのが悩みです。

息子は、低学年まではどの教科も80点は取っていました。
ところが、小4の秋くらいから、少しずつ成績が下がりはじめ、とくに算数が苦手になってしまったようです。
先日、割合のテストが20 点だった時には、本人も落ち込んでいました。

息子は、毎日必ず1時間は自分の部屋で勉強しています。
それでも成績が下がっているので、塾に通わせようかと思いましたが、本人は行きたくないと言ってききません。

わたしは勉強が苦手だったので、息子に良いアドバスができず悩んでいます。

低学年のころは成績が良くても、高学年になって落ちてしまうというのは勉強の方法が間違っているからなのでしょうか。

また、塾に行かずに学校と家庭だけの勉強で成績を上げることはできるのでしょうか。

回答

小学校5年生の学習は、小学校1年生を除けば、2年生から6年生の中では最も注意が必要な学年です。

5年生になれば、算数では、約分や通分、割合などを学習します。漢字については、抽象的な漢字が増えてきます。こういったことから5年生は、学習が非常に難しくなってくる学年とも言えます。
子どもの成績が下がってくる要因のひとつは、学習に対して大きな不安を抱えていたり、劣等感を持ち始めることです。ですから、心の面を配慮しながら、対策をとっていかなければなりません。

低学年の成績は良かったとのことですが、80点という点数は、実は、決して十分な状態ではありません。低学年の学習はすべての学習の土台である以上、本当は90点以上必要なのです。

それを考えると、4年生の秋から成績が落ち始めたというのは、くり上がりやくり下がりなど、そうしたところは一応できるのだけれども十分ではないという状態に陥っていると考えられます。

まずは、百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)の足し算、引き算、かけ算にかかる時間を計ってみてください。3分以上かかってはいませんか? それでは、5年生の基礎力としては十分ではありません。
足し算、かけ算、引き算の順番に取り組み、それぞれ2分以内に解けるように努力してください。この百ます計算を早くするだけでも、相当に効果があるはずです。

次に、約分や通分、割合などの問題をどのようにこなしていくかですが、基本的な問題を何度もくり返すことで、問題とその答えを丸ごと覚えてしまうぐらいの気持ちで学習すると効果的です。

子どもたちの日常生活の中に、通分などが必要な場面はありません。ですから、子どもたちが約分や通分、割合を学習する意味は、そういうものがあることを知ることなのです。ですから、それらが一体どういうものなのかを知るという点では、文章題などをしっかり読み込み、その解き方も覚えるぐらいに学習してしまうことで、本当の理解に至ってくるわけです。

割合や通分や約分が難しいからこそ、5年生の学習が難しいのであり、そこさえおさえてしまえば、苦手なことが解消され、自信や達成感を持つことができるでしょう。

高学年になってから学習が苦手になるのは、基礎的な学習不足が原因であり、塾に行ったからといって克服されるものでもありません。何か理解ができなくてつまずいているわけではなく、それまでの学習の弱かったところが、今の学習の伸びないところにつながっているのです。

本人が塾に行くことを望んでいないこともあり、通塾してもあまり効果はないでしょう。むしろ、生活習慣や学習習慣を整え、百ます計算や漢字学習などをもう一度きちんと、低学年や中学年に戻って、サッとできるようになるまで基礎を固める学習をすることが最も有効と思われます。

塾などに頼ることなく、自分自身の基礎的な力を高めることは、後々の学習にとっても、もっとも有効な力となってきます。

また、自分の部屋で勉強しているとのことですが、自分1人でやっていると、集中しているつもりでも、実は「ぼーっと」していることはよくあります。学力がある程度向上し、安定するまでは、リビングなどで学習するのもいいでしょう。短時間集中して学習できているかを見てあげてください。

勉強というのは、時間で計るものではなく、どれだけ集中して取り組めているかです。子どもの勉強のようすを見ながら、より短時間でより多くの問題が解けるように配慮しながら考えてあげてください。

毎日必ず1時間、勉強する時間を設けるなど、評価する点もありますが、改善すべき点はいくつかあると思います。どう改善すべきか親子で話し合い、がんばってください。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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