家で勉強に集中できない/教えて! 陰山先生【第13回】
この春から中学生になる息子が、勉強に集中できなくて困っています。家で集中できないのなら、やはり中学からは塾へ行かせるべきなのでしょうか。わが家は、まだ下の子が幼稚園なのでわたしが働くことも難しく、塾へ行かせるとなると、家計的に苦しい状態になるので悩んでいます。
質問
この春から中学生になる息子が、勉強に集中できなくて困っています。
わが家には、現在小6の長男のほかに、小2の次男と幼稚園の年中の長女がいます。
子ども部屋はひと部屋しかなく、長男と次男でいっしょに使っています。
長男は勉強するとき、子ども部屋よりもリビングのほうが好きなのですが、落ち着きのない次男と、お兄ちゃんのことが大好きな長女が勉強のじゃまをします。
仕方なく子ども部屋へ移動するのですが、リビングで下の子たちがテレビを観たり、ゲームをしたりする音や声が聞こえて、集中できないようで、結局リビングで、3人で遊んでしまうという日が多いです。
今の長男の成績は中くらいですが、中学生になると勉強も難しくなり、今よりも勉強しないと成績がもっと下がるのではないか、このままで高校受験は大丈夫なのかと心配です。
どうしたら、長男の勉強時間を増やし、集中力を高めることができるでしょうか。
家で集中できないのなら、やはり中学からは塾へ行かせるべきなのでしょうか。
わが家は、まだ下の子が幼稚園なのでわたしが働くことも難しく、塾へ行かせるとなると、家計的に苦しい状態になるので悩んでいます。
回答
今回の質問も、多くの家庭が抱えている悩みです。これを改善していくためにはどうすればいいのでしょうか。
もっともいいのは、兄弟そろって学習する時間を確保することです。
まず、3人のお子さんがそろって勉強する時間はあるでしょうか?
たとえば、夕食時は、子どもがそろうことも多いと思います。ですので、その前後の時間、約30分程度を目安にして、兄弟みんなで勉強する時間にあてればいいと思います。
幼稚園の年中の子どもは、なかなか親の言うとおりにはいかないと思いますが、絵本を読んだり、パズルなどのアナログ的なゲームに取り組むように仕向けるといいでしょう。
中学校へ行けば、今より学習量は増えてきますが、その際もっとも重要なのは、集中することです。集中してやれば、家庭学習が1時間程度でも相当の量をこなすことが可能になります。
集中して取り組むためには、家族も協力してテレビを消し、大きな音を出さないなど、環境に気をつかうことも大切です。
そして、その学習時間帯には、親も何かを学習したり読書をするなどし、家族全体で学習する環境にすることもいいことです。少しの時間でもこういった時間を設けることで、家庭の雰囲気は一気に変わっていくと思います。
こうしたことを提起すると、「わたしの家庭では難しいです」と言う方がいます。その言葉には、親自身が変わろうとせず、子どもだけを変えようとする背景があります。
昔から、子は親の鏡と言います。親自身が学び続ける構えを持つことなくして、勉強の重要性を理解させることは難しいものです。とくに読書は、年齢を問わず大切な学習の一部です。この読書習慣を生活に根付かせることが効果的だと思います。
しかし、本は安いものではありませんし、多くの本を買おうとすれば大変なお金がかかります。ですから、図書館を利用しましょう。週末ごとに家族で図書館に出かけ、なるべくたくさん本を借りてくる習慣をつけましょう。
しかし、借りた本を全部読まなければならないと思うと、気が重くなります。ですから、借りた本の中から1冊でも読み切ることができればいいというくらいに、気楽に本に触れられるよう、身近に置いておきましょう。読書が習慣づいてくると、どんどん本を読みたくなるものです。
同様に、テレビやゲームにばかり接していると中毒化していき、なかなかその習慣を断ち切ることが難しくなってきます。最近は、小学校低学年の女の子でも、ゲームをやっている姿を目にするようになってきました。ゲームの時間については、家族で話し合い、時間を守って使わせるようにしましょう。ゲームの時間が増えてくると、読書の時間が減ってきます。テレビ漬けやゲーム漬けになる前に、読書好きの家族になっていくといいと思います。
中学校の学習に取り組むその土台には、小学校での基礎的な学習が重要となってきます。百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)の足し算・引き算・かけ算が、2分から1分30秒以内でできるようにしておくことや、小学校で習った漢字のほとんどを書けるようにしておくことは、中学校での学習をスムーズに進めていく絶対条件となります。
こうした条件が整わないまま塾に行ったとしても、その効果はあまり望めないでしょう。基礎的な学習をしっかりやり、身につけることが、塾に通わずに学力を高めていく大きな土台となります。
さらに、わからないことがあれば、すぐ先生にたずねに行く習慣をつけることも大切です。
絶対数は少ないように見えても、塾に通わず、高度に学力をあげた子どもたちは必ずいます。そうした子どもたちは、今わたしが述べたような学習習慣や生活習慣が身についているのです。そういう良い習慣を取り入れながら、塾に頼らない中学校生活を作り上げるように、親子でいっしょに努力すると良いでしょう。
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