学校に忘れ物をする子。確実に持ち帰らせるための具体策とは?/子どもが伸びる親力【第16回】
忘れ物をただ口で叱るだけでは効果はありません。子どもが持ち帰れるように、具体的な方法を工夫することが大事です。
「体育着を持っていっても持ち帰るのを忘れる。洗濯しないまま2,3回着たりすることもある」
「今朝も『今日こそ持ってくるんだよ』と叱ったのに、また忘れてきた。頭に来て叱りつけてしまった」
このようなお悩みをよく聞きます。
でも、ただ口で叱るだけでは効果はありません。
子どもが持ち帰れるように、具体的な方法を工夫することが大事です。
10回リピート法で頭に刻み込む
一番簡単ですぐできるのは「10回リピート法」です。
つまり、「上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る。上靴を持ち帰る」と、声に出して10回言うのです。
10回言うとかなり頭に刻み込まれますので、その場になったときに思い出せる可能性が高まります。
また、目をつぶって両手で両耳を押さえながら言うようにするとより一層効果的です。
目をつぶることで集中力が上がりますし、手で耳を押さえることで自分の声が頭全体に響くようになります。
大人の仕事や生活でも使える
この方法は、大人が買い物に行くときにも使えます。
「きな粉、ゴマ、バナナ。きな粉、ゴマ、バナナ。きな粉、ゴマ、バナナ……」というように10回リピートすると、買い忘れることが減ります。
職場についてすぐやらなければならないことがあるときは、「吉田さんに書類、加藤さんに声かけ。吉田さんに書類、加藤さんに声かけ。吉田さんに書類、加藤さんに声かけ……」というように10回リピートします。
もちろん、紙などにメモすればいいのですが、いつも紙が手元にあるわけでもありませんので、この方法を知っていると何かと便利です。
イメージトレーニングで頭に刻み込むと、その場面になったとき思い出せる
2つ目の方法はイメージトレーニングです。
例えば、子どもに目をつぶらせて次のように言います。
「自分が学校で帰りの仕度をしているところを想像してみて。今、カバンはどこにある? 椅子の上? 机の上?」
「え~と、机の上」
「今、カバンの中に何を入れてる?」
「教科書、ノート…。筆箱も入れた」
「上靴は今どこにある?」
「まだ履いてる」
「じゃあ、上靴を袋に入れるところを想像してみて」
「うん、今入れてる」
「上靴は袋のどこに入れた? 下の方? 上の方?」
「え~と、下の方」
「上靴を袋の下の方に入れる場面をしっかり頭に刻み込んでね」
「うん、刻み込んだ」
このイメージトレーニングも、子どもだけでなく、大人の仕事や生活でも使えます。
この方法は、だんだん慣れて上達してくると、かなりの確率で思い出せるようになります。
付箋紙やメモの活用。どこに貼るか、どこに入れるかが大事
3つめの方法は付箋紙やメモの活用です。
これは一般的な方法でもありますが、やはり効果も高いです。
例えば、「上靴を持ち帰る」と書いた付箋紙を、1枚と言わず、2枚3枚用意します。
そして、それをどこに貼ると効果的か考えて貼ります。
筆箱、カバンの蓋の内側、帽子の内側などです。
この方法の一番の弱点は、書いた付箋紙やメモをなくしてしまったり、あるいはなくさないまでも肝心なときに見ないままになってしまったりすることです。
ですから、付箋紙をどこに貼るか、メモをどこに入れるかということを、しっかり考える必要があります。
これが成否を分けると言っていいでしょう。
なお、油性マジックやボールペンで手に書く方法もありますが、子どもによっては嫌がる子もいますので気をつけてください。
手に書かれることで罰を受けたように感じる子もいます。
人に見られるのが嫌という子もいます。
「大人は平気でも子どもは平気ではない」ということもありますので、気をつけてください。
親のすることは子どものモデルになる
以上、3つの方法を紹介しました。
この他にもいろいろな方法があり得ると思いますが、とにかく大事なのは、ただ口で叱るだけではなく具体的な方法を工夫することです。
親がそういう姿勢を見せていると、子どもも「何かうまくいかないことがあるときは、工夫して解決することが大事」ということを学びます。
これは人生を生きていく上でとても大切な認識です。
その反対に、親がただ口で叱っているだけだと、子どもは「何かうまくいかないことがあるときは、それを理由に相手を叱っていいんだ。とがめていいんだ。責めていいんだ」ということを学んでしまいます。
親はそんなことを教えたかったのではないのです。
でも、親のすることは子どもにとってはすべてモデルであり、見本でもありますから、自然に真似して身につけてしまうのです。
表の教育は失敗し、裏の教育は成功する
親が意図していたのは「忘れ物をなくしたい」ということでした。
それを私は「表の教育」と呼んでいます。
表の教育は失敗しても、親が意図しなかったものは確実に子どもに伝わります。
それを私は「裏の教育」と呼んでいます。
多くの場合、表の教育は失敗し、裏の教育は成功します。
「言うことは聞かないけど、することは真似る」のことわざの通りです。
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