メニュー閉じる

何気なく言っている「早くしなさい!」の口癖。弊害がたくさんあります/子どもが伸びる親力【第13回】

何気なく言っている「早くしなさい!」の口癖。弊害がたくさんあります/子どもが伸びる親力【第13回】

親が何気ない気持ちで言っている「早くしなさい!」「早く、早く」「遅い!」「急いで急いで」などの言葉には、弊害がたくさんあります。まずは、弊害に気づくことが大切だと思います。

人類の歴史の中で、子どもがこれほど急かされる時代は初めて

「早くしなさい!」「早く、早く」「遅い!」「急いで急いで」。
こういった子どもを急かす言葉を、親はつい言ってしまいます。

あなたは毎日何回くらい言っていますか?
一度意識して数えてみるといいと思います。
多い人は一日に百回くらい言っているかも知れません。

もっと社会全体がのんびりしていた頃は、こんなことはなかったはずです。
人類数万年の歴史の中で、子どもたちがこれほど急かされる時代というのは、初めてと言っていいのではないでしょうか。

子どもはみんな一生懸命。「早くしなさい」は親の勝手な都合

それに、ほとんどの場合、子どもは子どもなりのペースで一生懸命生きているわけで、特にサボっているわけでもないのです。

また、生まれつきのんびりしているマイペースな子もいます。

これほど急かされるのは大人の勝手な都合によるところが大きいのであり、子どもにとっては迷惑な話です。

そして、迷惑なだけでなく、毎日「早くしなさい」と言われ続けると、子どもたちにはいろいろな弊害が出てきます。

「入学までに直そう」と急かし続けた結果

私の知っているあるお母さんは、小学校入学を控えた年長の男の子に、毎日「早くしなさい!」「早く、早く」「遅い!」「急いで急いで」と言っていました。

というのも、その子はマイペースな子なので、お母さんは「こんなことでは小学校でみんなについていけない。入学までにもっとテキパキ早く行動できるようにしなければ」と思ったからです。

そして、入学までの3か月間、毎日子どもを急かし続けました。
その結果、どうなったかというと結局テキパキ早く行動できるようにはなりませんでした。

お母さんが見ているところでは一応急ぐ様子を見せるのですが、見ていないところでは全然です。

そして、後でわかったのですが、親の見ていないところで、妹やペットを叩いたりけったりしていじめていたのです。

朝から急かされ叱られると交通安全面のリスクが

朝から急かされたり叱られたりして、落ち着かない気持ちのまま家を出る子どももいます。
そういう子は、交通安全面でのリスクを負うことになります。

落ち着きのない精神状態で道を歩いていると、注意散漫になって大変危険です。
普段なら飛び出しなどしない子でも、こういうときはうっかりやってしまう可能性もあります。

また、暗い気持ちのときはうつむき加減で下を向いて歩くようになります。
すると、視野が狭くなって危険に気づくのも遅くなります。

とにかく、子どもが登校する時間帯は大人たちの通勤ラッシュの時間でもあり、道路には先を急ぐ自動車や自転車が溢れていて危険です。

友達とケンカ。授業にも集中できない

学校に着いてからも落ち着かない気持ちを引きずっている場合は、友達とのケンカも起こりやすくなります。

また、授業にも集中できなくなる可能性があります。

自己肯定感が持てなくなり「自分はダメな子だ」と思い込む

子どもは、親が求めるように早く行動できない自分に対しても、イライラするようになります。

そして、「自分はダメな子なんだ。何度言われても早くできない」「どうせぼくなんかダメだよ。何をやっても遅いんだもん」と思うようになります。

自分に自信が持てない状態であり、言い換えると自己肯定感が持てなくなるということです。

「愛されてないかも」という親に対する愛情不足感

常に「遅い」「何やってるの!」「早くしなきゃダメでしょ」と叱ってくる親に対しても、よい感情を持てなくなります。

そして、「お母さん・お父さんはボクのことをダメな子だと思ってる。ボクのことなんか嫌いなんだ」と感じるようになります。

これが「自分は親から大切にされていない。愛されていない」という気持ちにつながり、親に対する愛情不足感を持つようになります。

指示待ち人間になる

自分で考えてやろうとしているところに「早くしなさい」と言われると、取り敢えずやり終わることを優先するようになります。

下手に自分で考えたり工夫したりしていると、かえって「遅い!」と叱られます。

ですから、自分で考えるより、親の指示を待って言われたようにやろうと思うようになります。
つまり、主体的に考えない指示待ち人間に育ちます。

何ごとも雑になる

とにかく早く終わることが最優先になるので、何ごとも雑になります。
物の扱いも乱暴になり、歯磨きもいい加減になり、お手伝いの仕事もいい加減になります。

食事もじっくり味わうことはしなくなり、口の中にかきこんで終わりです。

親の口癖が伝染。相手を待てない子になる

親の口癖は子どもに伝染することが多いので、子どもも兄弟や友達に「早く、早く」「遅い!」「急いで、急いで」と言うようになる可能性があります。

口癖だけでなく気持ちの面でも親に似てくる可能性もあります。
たとえば、自分より遅い子を許せない、相手を待てない、待たされるとイライラする、などという点です。

「早くしなさい」の弊害に気づくことが大切

以上のように、親が何気ない気持ちで言っている「早くしなさい!」「早く、早く」「遅い!」「急いで急いで」などの言葉には、弊害がたくさんあります。

でも、ほとんどの人は、こういった弊害があるということに気づいていすらいないようです。

まずは、弊害に気づくことが大切だと思います。

関連記事/子どもが伸びる親力

【第11回】子どもには自分の人生を生きさせてあげよう
【第12回】テレビの見過ぎを防ぐには? 子どもが納得するルールをつくるには?
【第14回】伝記が人生を考えるきっかけになる
シリーズ「子どもが伸びる親力」第1回から第10回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第11回から第20回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第21回から第32回(最終回)まとめ

 親野智可等(おやのちから)

 親野智可等(おやのちから)

親野智可等(おやのちから)

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。
著書多数。

Webサイト
http://www.oyaryoku.jp/

PAGETOP