わが家のおうち英語① ― きっかけは夫の英語嫌い|ゆるい取り組みからのスタート
名古屋市立大学非常勤講師で、子どもの英語学習情報を発信するウェブサイト「はむ先生のおうち英語教室」を運営する村上さとみさんが、自身の「おうち英語」の取り組みを4回の連載で振り返る新シリーズがスタート。小学生スタートの英語学習にも生かせる英語力アップのヒントをお届けします。
現在、小学3年生の息子がいるわが家の「おうち英語」は、0歳からスタートし、今年で8年目となりました。英語で年齢相応の日常会話ができ、簡単な読み書きもできるようになっています。
息子が赤ちゃんだった8年ほど前は、まだ「おうち英語」という言葉は一般的ではありませんでした。当時、私が知っていたのは、英語教育の分野で使われていた「早期英語教育」という言葉です。「早期英語教育」とは、中学生より前に始める英語教育を指します。
一方で、家庭の中で子どもに英語に触れさせている保護者が一定数いることも知っていました。大学院時代に所属していたゼミの教授も、そのひとりです。娘さんの子育ての中で、赤ちゃんの頃から英語に触れさせた結果、自然に英語が身についたというエピソードを耳にしたことがありました。
スマートフォンが一般に広く普及し始めたのは、2010年代半ばごろです。そのため、家庭での取り組みを参考にできる情報が広く共有されるようになったのも、ここ最近のことだと言えるでしょう。そうした中で、手探りの状態で始めたのが、わが家の「おうち英語」でした。
周りの後押しで始めた「おうち英語」
私は大学院で、人間がどのように言語(特に外国語)を身につけていくのかという「第二言語習得論」を中心に学びました。
これまでの研究では、言葉はテレビなどの媒体からは身につきにくく、生身の人間とのやりとりの中で習得されると考えられていました。また、研究者によって考え方に違いはあるものの、母語をしっかりと身につける重要性も指摘されていました。
そのため私自身、動画や音声といったメディアを主に活用して英語を身につける「おうち英語」は、必ずしも成功するとは限らないのではないかと感じていました。
一方で、英語に苦手意識のある夫は「子どもに小さい頃から英語に触れさせてほしい」という思いを持っていました。また、幼い頃から英語に触れていたことで、自然に英語力を身につけられたという事例も耳にしたことがありました。
そうした周囲の声に背中を押される形で、わが家では息子が生後5か月の頃から、自宅で英語に触れられる環境を整え始めました。いわゆる「おうち英語」のスタートです。
理論と実践のつなげ方に迷う数年間
大学で第二言語習得の専門領域を学んできたはずの私ですが、いざわが子を前にすると、「何を」「どのように」「どのくらい」取り組めば英語が身につくのか、見当がつきませんでした。
先にお伝えしたように、「おうち英語」ということば自体が広く使われるようになったのは比較的最近のことです。そのため、実践を分析したり、効果を検証したりする研究も、当時はまだ十分に蓄積されていませんでした。
特に、目の前にいるわが子は、日本語すら身につけていない赤ちゃんです。大切な子どもにとって、マイナスになる可能性のあることは避けたいという思いも強くありました。
そこで、0歳の時期に取り入れたのは、次のようなごくシンプルな内容です。
● 英語の歌を1日3曲聞かせること
● 読み聞かせる絵本に英語も混ぜること
はじめての子育ては分からないことだらけで、日本語ですら年齢相応に育っていくのか不安がありました。そのため、英語への接触はあえて最小限にとどめました。あくまで私自身の判断です。
《わが家の詳しい取り組みについて、もっと知りたい方はこちら》
一方で、ことばを身につけるには「量」が必要であることは、前提として理解していました。だからこそ、無理に増やすのではなく、「長く続けること」を重視し、毎日休まないことをひとつのルールにしました。半ば「これは仕事だ」と思いながら、英語に触れる時間を確保していたのを覚えています。
0~3歳で大切にしたのは、日本語の習得
言葉を身につけるには、母語・外国語にかかわらず、音声のインプットが欠かせません。この点は理論でも示されています。そのうえで、わが家では、子どもが日本語を軸にしながら英語も同時に身につけていけるよう、環境づくりにおいて4つのことを意識しました。
ひとつめは、【インプット環境】です。日本語は自然に身につくと思われがちですが、赤ちゃんの生活は家庭が中心です。だからこそ、日本語についても意識的にインプットを増やした方がよいと考えました。明確な根拠があったわけではありませんが、わが家では、日本語9割、英語1割を目安に取り組みました。
2つめは【習慣化】です。生後2か月頃から、お昼寝前に絵本の読み聞かせをする習慣をつくり、毎回3冊のうち1冊を英語の絵本にしました。0歳のうちは、1日3回ほど読み聞かせの時間を取っていたため、日本語の絵本を6冊、英語を3冊読むことが日課になっていました。
3つめは【楽しい時間にする】ことです。1日3曲、英語の歌を楽しむ時間を設け、ひざに乗せて遊んだり、身体を動かしたりしながら、子どもにとって心地よい時間になるよう心がけました。このときはBGMのように音声をかけ流すといった取り組みは行いませんでした。
4つめは、子どもに話しかける言葉を【日本語に統一した】ことです。いずれ英会話レッスンなどを利用して英語を話す場は作れると考え、親である私が英語で話しかけながら子育てをすることはしませんでした。
子どもが1歳になってからは、キャラクターと一緒に学ぶオールイングリッシュ教材のDVDを1日30分、2歳では1日1時間に増やしましたが、この時点では目に見える大きな成果は感じられませんでした。
おうち英語教材があふれる今日
「おうち英語」というと、一日の多くの時間を英語で過ごすようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、わが家のおうち英語は、0歳から始めたとはいえ、比較的「ゆるい」取り組みだったと思います。
0歳から数年間は、「親が英語に触れる環境づくりに慣れるための期間」であり、同時に「子どもが英語を聞き取る耳を育てるための準備期間」だったように感じています。
子どもが英語を口にするわけでもなく、ただ淡々と英語に触れる時間を重ねていく日々は、親にとって忍耐が必要だと感じることもありました。それでも振り返ってみると、日本語をある日ふと話し始めたように、英語を話すためにもインプットの積み重ねは欠かせないものだったと実感しています。
それを強く感じたのが、4歳から始めたオンライン英会話での上達のスピードでした。
音声インプットは、何歳から英語学習を始める場合でも欠かせない取り組みです。そして、成果を感じられるまでには、やはり一定の時間と忍耐が必要です。
乳幼児期から始める「おうち英語」にメリットがあるとすれば、こうした過程を保護者が支え、子どもと一緒に取り組める点にあったと考えています。
次回は、コロナ渦の時代に行った自宅でのオンライン学習について振り返ります。










