メニュー閉じる

お小遣い定額制で欲望をコントロールする力を身につける/子どもが伸びる親力【第25回】

お小遣い定額制で欲望をコントロールする力を身につける/子どもが伸びる親力【第25回】

お金を扱う能力は現代人にとって極めて大切な能力です。そして、その土台は自分の欲望をコントロールする力なのです。子どもには欲望をコントロールする力をつけることが大切です。

欲望をコントロールする力をつけることが大切

お金の教育で一番大切なのは、自分の欲望をコントロールする力をつけることです。
そこでお薦めしたいのがお小遣いの定額制です。
1週間、2週間、あるいは1カ月でいくらと決めて、お小遣いを先渡しするのです。

もらったお小遣いを欲望のままに衝動的に使ってしまえば、次にもらうまで何も買えません。これで欲望をコントロールする力がつきます。

使うのをがまんしていればお金が貯まってきます。
これは子どもにとってもうれしい経験であり、一つのリトルサクセスになります。
また貯蓄という概念を身につけることにもつながります。

貯まったお金で、前々から欲しいと思っていた大きな買い物をするというのもうれしい経験です。
これもリトルサクセスになり、こういう経験を積み重ねることで賢い消費者になっていきます。

お小遣い帳で自己評価を

お小遣いの定額制をはじめると同時に、お小遣い帳をつけさせるとさらに効果的です。
項目は、日付、もらった金額、買った物とその金額、残りのお金、自己評価です。
自己評価とは、それを買ってよかったかどうか自分で評価する項目です。
買ってよかったと思ったら◎、買わなければよかったと思ったら×をつけるわけです。

この評価は買った直後ではなく、1週間あるいは1カ月くらい経ってからつけます。
これを繰り返すことで、無駄な衝動買いをしなくなります。

できたら、お小遣い帳に買った物のレシートを貼り付けるようにするとさらにいいでしょう。
そして、新しくお小遣いをもらうとき、親にこのお小遣い帳を見せるようにします。
つまり、親の会計監査を受けるわけです。
先ほど触れた自己評価を、このとき親と一緒におこなうのもいいでしょう。

お小遣いの定額制、お小遣い帳、自己評価、この三つが欲望コントロール力を身につけるための3点セットです。

お小遣い帳を叱る材料にしてはいけない

これらのことを進める上で大事なのは、ほめながらおこなうことです。
叱りながらやっていても子どもを伸ばすことにつながりません。

ただ、男の子に多いのですが、お小遣い帳をつけるなどという面倒なことは到底無理という子もいます。

そういう子に強制しても叱る材料が増えるだけなので、お小遣い帳は諦めてください。
そういう子は3点セットの内のお小遣い定額制だけにしてください。

お小遣い帳がないということは全部自分の頭で管理するわけですが、それでも定額制を実行していれば欲望をコントロールする力がつきますし、お金についてのリトルサクセスを積み重ねることもできます。

期間を長くし、範囲を広げ、金額を増やす

お小遣い定額制の期間についてですが、はじめから長い期間を設定すると難しいので、子どもの様子を見ながらスモール・ステップで進めてください。

慣れてくれば期間を長くして一度に与える金額も大きくします。
さらには、お菓子や玩具を買うための小遣いだけでなく、ノートや鉛筆などの文房具類を買うお金も含めて与えることもできます。

つまり、より大きな範囲でより大きな金額にして、子どもの裁量の範囲を広げてあげるのです。

リトルサクセスを積み重ねながら、ほめながらスモール・ステップで進めればお金を扱う子どもの能力は着実に伸びていきます。

お金を扱う能力

今の世の中で、浪費、遣い込み、買い物依存症、ギャンブル依存症、カード破産、多重債務、自己破産など、お金の問題で悩んでいる大人がたくさんいます。

お金を扱う能力は現代人にとって極めて大切な能力です。
そして、その土台は自分の欲望をコントロールする力なのです。

お金の教育はこれほどまでに大事なことなのに、学校でも家庭でもほとんどおこなわれていません。

これをお読みになった方は、ぜひ実行して欲しいと思います。

お金の教育というと、すぐに金融商品、株式、FXなどの投資の教育のことを頭に浮かべる人も大勢います。

その前にやることがあると、声を大にして言いたいです。
欲望をコントロールする力のない人に投資の教育をしてはいけないのです。

関連記事/子どもが伸びる親力

【第21回】子どものやる気スイッチはいつ入る?
【第22回】「親の願い」が子どもを苦しめる。親としての初心にかえろう
【第23回】算数・数学が苦手な子に親ができること
【第24回】子どもの存在を無条件に肯定する「一緒にいられて幸せ」という言葉を贈ろう
【第26回】「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」など。「質問形」の裏に隠れているもの
シリーズ「子どもが伸びる親力」第1回から第10回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第11回から第20回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第21回から第32回(最終回)まとめ

親野智可等(おやのちから)

親野智可等(おやのちから)

親野智可等(おやのちから)

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。
著書多数。
Webサイト http://www.oyaryoku.jp/

PAGETOP