子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫/シリーズ 専門家にきく! 国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー【第2回】(全4回)
小学生が一度は手にする子ども向け国語辞典。大人用の国語辞典とちがってどのような特長があるのでしょう。子どもが言葉を引きやすくするための工夫とは? また、そもそも国語辞典とはどうやってつくられているのでしょうか。これまであまり明かされることのなかった、子ども向け国語辞典づくりのひみつについて、『学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第5版(オールカラー)』の改訂を担当した、株式会社学研プラス 小中学生事業部 辞典編集室の森川聡顕副室長と今井優子編集長にお話をうかがったインタビューの第2回(全4回)です。
第2回 子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫
今回は子どもが国語辞典を使いやすくするための編集上の工夫について、具体的にうかがっていきます。
――子ども向け国語辞典の特長はどんなところにあるのでしょう。
今井:大人向けと子ども向けの国語辞典では、収録語の基準自体がちがっています。小学生向けの辞典では、小学校の国語の教科書にのっている言葉をできるだけのせるようにしています。
また大人向けの国語辞典には、豊臣秀吉とかグリム兄弟といった人名の見出し語は基本的にありませんが、小学生向けの辞典には、歴史人物や有名な作家名をのせています。本の名前、都道府県名などがのっているのも小学生向け辞典の特長ですね。
――イラストがたくさんありますね。イラストを入れる基準はどんなものですか?
今井:言葉で説明しただけでは理解がむずかしいものを中心にイラストを入れています。たとえば、「糸車」「縁台」「しょいこ」など昔の道具。「いろりばた」と言われても、実際にいろりを見たことがないと、言葉の説明だけではわかりにくいですよね。身近な場所では見かけなくなりましたが、昔話や読み物にはよく登場しますので、子ども向け辞典ではおさえておきたいんです。
森川:語源にかかわる言葉も、意識してイラストや写真を使うようにしています。「のろしをあげる」を調べて「のろし」ってなんだろう? と思ったときに、イラストがあればおもしろいと思って調べてもらえるかな、というような考えで入れています。
――イラストのほかに写真も使っているのですね。
今井:こちらを見てください。「いすかのはしの食いちがい」という、ことわざの項です。ものごとが食いちがって思うようにならないことのたとえを説明していますが、写真を見てわかるように、「いすか」という鳥は上下のくちばしの先が曲がって交差していて、ぴったり合っていないんですよ。
――わかりやすいです! 写真を見れば一目りょう然ですね。
今井:日本語には、もともとの意味がある言葉から派生している語が多いんです。そうした語源的なものにも興味を持ってもらいたいので、写真なども使ってわかりやすくする工夫をしています。
――小学生用の辞典ならではという編集の工夫があったら教えてください。
今井:一覧にすることによってわかりやすくできるものは、一覧でのせています。たとえば「内臓」を引くと人間の内臓のイラストがでてきます。内臓という言葉だけでなく、内臓のなかにいろいろな臓器があることを知って、そのなかの「肺」に興味があったら、「は」のところで肺の説明を引いてみる。そういうふうに、勉強を発展させられるように工夫しています。
そうやってつぎつぎに調べるときのために、ページ上部に付せんがはれるスペースをあけて、付せんをはったときに言葉がかくれないようにしました。
――付せんのスペースがあると子どもはとても使いやすそうですね。子ども向けに説明するためにとくに工夫した語があれば教えてください。
②については、さらに、「お風呂がぬるい」「お茶がぬるい」とでは、温度がだいぶちがうものを用例で示しています。ぬるいお茶の温度でもお風呂だったら入れないくらい熱いですもんね。
きめ細かな工夫がされていたことに、あらためて感動しました。次回の第3回は、子ども向け国語辞典ができるまでのステップについてうかがいます。
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