1人1台のタブレットで学校はどう変わるのか 品川区の公立小学校で、ICTを活用した学習にとりくむ/シリーズ「専門家に聞く!」【第4回・その5(最終回)】
4年生の教室では、品川区独自の科目である「市民科」の授業を見学しました。
4年生の市民科 「目ざせ発表名人~効果的な表現方法を学ぶ」
この授業では、学年で世話をしている飼育動物(ニワトリ)のことを全校児童に向けて紹介する準備をしていました。子どもたちはタブレットを使ってニワトリの生態や飼育方法を調べ、写真を撮影し、それらをまとめて発表資料をつくります。
授業の冒頭で担任の先生から、この授業の進行についての説明がありました。
どんなことに気をつけて資料をつくればいいでしょうか? という先生からの質問に対して、子どもたちからは「ニワトリの全身が見えるように写真を撮る」「字がニワトリにかからないようにする」「文字を大きく、見やすくする」といった、的を射た発言がありました。しっかりと完成形をイメージしています。
資料は紙に書いてもパワーポイントでつくってもいいということでしたが、ほとんどの子どもがパワーポイントでつくっていました。
撮影、台本、プレゼンテーション、寸劇まで子どもたちが行なう
さて、各班は順番に校庭に出て、写真撮影を行ないます。
ニワトリの飼育小屋では、縦位置と横位置を工夫してとったり、余白を多くとるために少し離れて撮影したりと、工夫をこらして撮影しています。なかには、えさのキャベツを持った友だちを写真におさめている子も。
タブレットが導入されてからは、子どもたち自身が考えて撮影をし、台本を書き、プレゼンテーションも行なうようになったので、発表は以前とはまったく別もの。本当に大きな変化があったのだそうです。
授業の終盤、授業の成果であるパワーポイントの資料を子どもたちが共用のサーバにアップロードします。先生が保存するフォルダを指定すると、子どもたちはその指示内容を理解して、いっせいに資料と写真を保存していました。
4年生は保管庫にタブレットを片付けず、机のなかに入れたまま授業は終了です。
4年生の授業でもっとも印象的だったのは、写真撮影にあたって、写真をどこでどう使うのかを自分で考え、カット割などを工夫していたことです。発表を見る人のことを考え、発表する場所も考慮に入れたうえで、わかりやすく、楽しくニワトリの紹介をする方法を自分たちで考えています。タブレットはその「やりたい発表」を実現するための、便利な道具ととらえているようでした。
授業が終わってから、子どもたちに感想を聞きました。
- タブレットは苦手だけど、友だちといっしょに勉強できてよかったです。わからないところは得意な子に聞いたりしています。はじめて発表を見る1年生が楽しく思ってくれるような発表がしたいです。
- タブレットを使って、みんなで協力していっしょになにかやるのが楽しいです。発表ではみんなでいっしょに劇をしたり、クイズを入れるんだけど、(小道具の代わりに)タブレットを使うんです。食べるものはなに? と聞いたら、タブレットでえさの写真を出したりします。シナリオも自分でつくるから、テレビ番組も参考になります。
授業見学を終えて感じたこと
第四日野小の子どもたちは、タブレットを身近なものとして鉛筆とノートのように使いこなしていました。自分の考えや創意工夫を実現していく道具として扱うことが身についているようです。また、タブレットで勉強することが楽しい、という言葉を多くの子どもが口にしていました。タブレットが子どものやる気スイッチをオンにしているようです。
活発な発表の態度や、授業への集中の具合、ゴールをみすえて積極的に動き、自分で考えて工夫しつつ作品を作りあげているようすを見ると、「楽しい」がベースになるとこんなにも子どもは生き生きとするのかと驚くほどでした。
一方で、本当に心身の発達に影響はないのか、また、便利な環境に慣れきってしまうと、その環境から外れてしまったら対応できないのではないか、という疑念もわたしにはどうしても残ります。
しかし、子どもが自分から学ぼうとすれば、その吸収力は無限大です。子どもたちが意欲を持ってワクワクと学習にとりくむことができる環境作りに、タブレットなどのICT機器が持つ力が役立つ実例を第四日野小で見ることができました。
10年後、20年後の未来に向けて、子どもたちが活躍できるよう、学校も変わりつつあるのだなと感じさせられた授業見学でした。
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