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1人1台のタブレットで学校はどう変わるのか 品川区の公立小学校で、ICTを活用した学習にとりくむ/シリーズ「専門家に聞く!」【第4回・その2(全5回)】

1人1台のタブレットで学校はどう変わるのか 品川区の公立小学校で、ICTを活用した学習にとりくむ/シリーズ「専門家に聞く!」【第4回・その2(全5回)】

1人1台のタブレットで、第四日野小学校の子どもたちの学びは、どう変わったのでしょうか。

子どもたちが15分間、しーんとして自習にとりくんでいるわけ

——第四日野小では、タブレットを使ってどんな学習をしているのですか?

品川区立第四日野小学校 高木圭一副校長先生

高木副校長:
わたしたちの学校では、毎日15分間算数の計算練習をする時間があるのですが、そこでタブレットの「トータル学習システム」のドリルを使っています。子どもの学習の習熟度に応じて学習できるので、どんどん難しい問題にチャレンジする子もいれば、少し基礎的な問題をやる子もいます。

先生は丸つけの行列をつくらなくてすみますから、教えることに集中できるので、密度の濃い15分間になります。紙のプリントだったらあっという間に終わらせてしまう子どもも、やることがなくなってしまうということはありません。

島崎校長:
すごいですよ。本当にしーんとしていて、だれもいないの? と思うくらいです。

——そのほかには、どんな教科でタブレットを使って学習しているのですか?

高木副校長:
理科、生活科ではタブレットの撮影機能の活用頻度が高いですね。ドリル的な使い方としては、国語と算数で使っています。

品川区立第四日野小学校 島崎一江校長先生

島崎校長:
たとえば国語で漢字を勉強するときには、筆順はタブレットで見て、紙に自分の字で書いて練習するというように使い分けています。字を書くのが苦手な子どもにとっては、タブレットで筆順を見ることが、主体的に学ぶきっかけの一つになるんですね。興味を持ち、こうすれば書けるんだなと学ぶ意欲につながっていきます。そういう配慮が必要な子どもにも役に立っていることを実感しています。

タブレットでなければできない、プラスαの経験を提供する

——タブレットではどのように宿題を出すのですか?

高木副校長:
タブレットが使える状況のときに先生側の端末から宿題を送信すると、子ども側のタブレットにやるべき課題が表示されます。

このタブレットでは、家庭で使うオフラインの状態でも即時に応答して自動的に丸つけをしてくれるので、子どもの記憶が新しいうちにフィードバックがあるんです。この点は子どもにとってとてもいいことです。タブレットでなければできないことですね。

また、タブレットを学校に持ってくると、点数やとりくんだ回数が自動で先生の端末に送られます。ですから、60点でやめてしまった子の場合、先生がそのことを把握できるので、100点になるまでやろうねという指導ができます。いままでになかった学習のスタイルや、タブレットでなければできない、プラスαの経験を子どもにさせることを目標にしています。

10年後20年後に必要な力のために

——保護者の反応はどうですか?

高木副校長:
保護者から入学前によく質問されるのが、人間として手を使うことが大事なのに、タブレットのような電子機器ばかり使うのはどうなのか、ということです。

その点については、従来のように手を動かす経験はしたうえで、プラスαとして、10年後20年後を見すえたときに必要な力のために、タブレットでなければ経験できないことをやっているということを必ずお答えしています。

——実際に入学されてからの保護者の方の感想はどうですか?

高木副校長:
入学後は、安心した、心配していたほどではないと言われます。

授業では、話し合いを活発にさせるために、子どもが書いたものを共有するためのツールとしてタブレットを使うことがよくあります。

ですから保護者のかたによく言うんです。タブレットはクイズ番組のパネルといっしょですよ、と。みんなの答えがパネル型式で黒板に映し出されるので、言葉で説明しづらい1年生でも、自分の考えや発見を表すことができるんですよ、と。そういう使い方を見せたり説明したりすることを通じて、保護者には納得してもらえていると思います。

タブレットを持ち帰り、家庭と連携して学んでいく

——学校で、家庭で、タブレットを使った学習をすることで、子どもたちはどのように変化していますか?

島崎校長:
基礎基本の定着ははかられていると感じています。文科省の全国学力・学習状況調査や、東京都の学力調査でも、基礎的な必ず身につけなければならないところが定着しているように思います。

高木副校長:
家庭との関係も変わってきています。たとえば算数の三角形の単元では、家の中で三角形のものをさがして撮影してみようという宿題が出ます。そういう宿題には保護者も協力してくれますし、いまこういう学習をしているのだなということが伝わります。

そして、家でがんばったら学校で認められた、学校で学習したことがわかったから家で三角形を見つけられた、といういい循環ができてきました。

——保護者を巻きこんで、いっしょに学んでいくということにタブレットの家庭学習が役立っているのですね。

 
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 渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

 渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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