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1人1台のタブレットで学校はどう変わるのか 品川区の公立小学校で、ICTを活用した学習にとりくむ/シリーズ「専門家に聞く!」【第4回・その1(全5回)】

1人1台のタブレットで学校はどう変わるのか 品川区の公立小学校で、ICTを活用した学習にとりくむ/シリーズ「専門家に聞く!」【第4回・その1(全5回)】

学校選択制や小中一貫教育など、独自の教育施策で知られる東京は品川区。平成26年9月からは、区内の公立小中学校10校の子ども1人につき1台ずつタブレットを配布し、授業だけでなく、家庭に持ち帰って学習する「品川区トータル学習システム」というプロジェクトを展開しています。

学校選択制や小中一貫教育など、独自の教育施策で知られる東京は品川区。平成26年9月からは、区内の公立小中学校10校の子ども1人につき1台ずつタブレットを配布し、授業だけでなく、家庭に持ち帰って学習する「品川区トータル学習システム」というプロジェクトを展開しています。

プロジェクトのスタートから2年たったいま、1人1台のタブレットで、学校は、子どもたちの学びは、どう変わったのでしょうか。

品川区教育委員会で教育施策を担当する部署の山本修史統括指導主事、ICT推進校としてICTを活用した教育を行なっている品川区立第四日野小学校の島崎一江校長先生、高木圭一副校長先生にお話をうかがいます。

品川区教育委員会事務局指導課 統括指導主事 山本修史さん

品川区立第四日野小学校 島崎一江校長先生、高木圭一副校長先生

品川区教育委員会にきく、品川区が1人1台のタブレットを配ったわけ

——品川区が公立の小中学校で行なっている、ICTを活用した教育の取り組みについて教えてください。

品川区教育委員会 山本修史さん:
実は品川区は、教育のICT機器の導入にはわりと慎重でした。テレビ放送のデジタル化に対応して、教室に大型テレビを導入する流れがあったときにも品川区はその流れには乗りませんでした。

しかし、電子黒板機能のついた超短焦点プロジェクター※1という非常に使い勝手のよいものが普及したこともあり、それを教室に配備して、パソコンを置いて学校のICT環境を整備してみよう。そして、数校の小・中学校を指定し、1人1台タブレットを配布して、ICTを活用した教育の実証をしていこうということになりました。

平成26年の9月に区内の10校に約1800台のタブレットを配布したのですが、そのときに構築したのが、タブレットを利用して学校で学習するだけでなく、家庭にも持ち帰る品川区独自の「トータル学習システム」です。

※1 超短焦点プロジェクター
壁際に設置するだけで、映像コンテンツを投写することができる小型のプロジェクター。

——子どもたちにどのように成長してほしいと思って「トータル学習システム」をつくったのか、そのねらいを教えてください。

山本さん:
トータル学習システムについては、家庭と連携して学習習慣を身につけるということが一番大きなねらいでした。

書画カメラ※2と超短焦点プロジェクターの配備は、授業の改善がねらいです。

※2書画カメラ
紙など平らなものだけでなく、立体物もスクリーンに映すことができる投影機。実物投影機。

——家庭の学習時間が足りないという危機感があったのでしょうか?

山本さん:
足りないというよりも、二極化していることに問題意識がありました。家庭学習の習慣化には、家庭の力はやはり大きいです。

「トータル学習システム」では、学校で統一して実施状況や進ちょく管理ができるので、状況を見て先生が子どもに声かけができるシステムになっています。

第四日野小学校 高木副校長:
家で使うときにはタブレットはネットにつながりません。子どもたちが学校に来ると自動的に学校のLANに接続されて、家で学習した得点や時間が先生の端末にとんで来ます。そうやってそれぞれの子どもの学習状況を把握しています。——家庭学習では、どんな宿題が出されているのでしょう。

宿題の内容は本当にさまざまです。

従来からあるドリル形式のものもありますが、それだけではありません。学校で課題を出して、家でそれを見つけて撮影してくるなど、先生独自のアイディアで行なっています。

教室のICT化で、タイムラグのない知恵の共有が可能に

——若い先生はICTを使った学習になじむのが早いでしょうが、ベテランの先生はどうなのでしょうか。

山本さん:
授業のICT化で大きく変わったのは、子どもたちの考えをとりあげたり作品を拡大して、クラスで共有するという部分です。

ICTが整備される前は、前の時間に子どもたちからノートを集めて、それを確認して、拡大コピーして、次の時間に黒板にはって……というやり方だったんですね。

それが書画カメラを使うと、子どもたちのつくったものをその場で確認して、そのまま映し出すことができます。

——ものすごく時間が短縮できますね。

山本さん:
はい。さらに、タブレットでの学習だったら先生用のパソコンで一覧を見て、いいものをその場で映すことができます。

その使い方さえ覚えてしまえばいいので、ベテランの先生のほうが使いどころは心得ていますよ。

この書画カメラと超短焦点プロジェクターは、本当に先生たちの評価が高くて、品川区から異動していく先生はこれなしではやっていけないと言うほどです。

——タブレットだけでなく、教室のICT環境整備もとても大切だということがわかりました。

第四日野小学校に設置されている超短焦点プロジェクター

山本さん:
今後は、先ほどお話しした書画カメラと超短焦点プロジェクターを区内の全校に展開することになっています。平成29年度には、品川区のすべての公立小中学校の全クラスに配置する予定で進めています。

——それは素晴らしい取り組みですね。
 
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渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)

株式会社コドモット代表取締役社長。
NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。

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