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国語辞典のひみつ 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー 第4回(全4回)


第4回 辞典はハイテクのかたまり

子ども向け国語辞典は、どのようなステップでつくられているのでしょうか。前回、国語辞典のデザインが決定するまでの編集ステップを見てきました。いよいよ印刷の工程に入ります。

――オールカラーの印刷物として国語辞典ができあがるまでのプロセスを教えてください。

今井:まず、紙の選定についてお話しますね。複数の紙を検討して印刷する用紙を選定します。今回は「オールカラー印刷に使える、できるだけ軽くて薄い辞典にふさわしい紙」という基準で選定しました。


国語辞典は小さな文字がたくさん、紙の両面に印刷されますから、裏側の字や写真が表側のじゃまになっていないかを見て、裏側が透けて見えない白い紙を選びます。紙をさわった感触やめくりやすさも慎重にチェックし、選定した紙に実際に印刷して、さらに状態をチェックしていきます。オールカラーにするときは黒、赤、青、黄の4色を使うため、4回印刷機に紙を通します。ごく薄い辞典用紙では、4回の印刷に耐えられない可能性もあります。またインクの水分で紙がふくらむと、版ズレといって、印刷がズレてしまうこともあります。

そのため、写真・イラスト・コラムはもちろん、見出しに使っている色が全部入っているテスト用のページをつくり、いろいろな紙で印刷を試します。裏写りを見て、印刷強度を見て、色をかけ合わせても(緑色は、黄色と青色の2色をかけ合わせて表現)リスクの少ないものを選んで……ということを行ない、印刷上のトラブルが起こらないか、実際に印刷してみて慎重に見きわめています。

――辞典の印刷は難度がとても高いのですね。

森川:じつは印刷会社における辞典の組版(文字や図などをページに配置する作業)のプログラムには、各社の最高難度の技術が使われているんです。
たとえば、文字の横にふりがながあるのって、当たり前に見えるかもしれませんが、これも簡単にはできません。わたしたちが「文字の横にふりがなをふりたい」ということを印刷会社に言うと、印刷会社のプログラム担当の人がそのためのプログラムを一生懸命に開発するわけです。

――辞典編集とプログラム開発がセットだったとは、おどろきました。


森川:そうなんです。印刷会社がつくったプログラムでつけたふりがなの文字の空き具合がデザイナーの指定とちがっていたりしたら、印刷会社の側で調整をしていきます。複数のフォントと大きさが混在する文字、いろいろなマーク、写真やイラストの位置などについても細かく調整をして、それらをコンピュータで統合し、指令を出して印刷用のデータをつくっていきます。このへんのプログラムは印刷会社でも門外不出で、わたしたちにも詳細は絶対に教えてくれません(笑)。

――辞典のおかげで印刷技術も進歩しているのですね。


森川:本当にそうだと思います。国語辞典というもの自体がハイテクを要求する印刷物なんですよ。辞典1冊に本文のデザインの工夫、厚みがどれだけになるかという紙のテクノロジー、開きやすい製本技術、精密な印刷や裁断の技術、表紙の柔軟性や外箱の成形にいたるまで、ものすごく高度な技術が詰めこまれているのが辞典なんです。関係する全ての会社ががんばってくれることで、すごくきれいな本になるんです。

――そのようなハイテクを駆使してできあがった、オールカラー版の読者からの反応はいかがでしたか?


森川:おかげさまで大好評です。読者アンケートのはがきを見ると、オールカラーの項目が大変評価されていますし、実際に品物が売れているという事実もはげみになります。

今井:「子どもがどんどん引いてくれます」とか「子どもが喜んでずっと引いています」という声をいただくとうれしいですね。

辞書引きイベントでも、そうやって国語辞典を引いているお子さんを見た保護者の方のいい表情を見ると、わたしもうれしくなって次をつくっていくモチベーションにつながります。大変だけど、またがんばろうかって思いますね。

大変興味深いお話を聞かせていただき本当にありがとうございました。全4回にわたってお届けした「国語辞典のひみつ」ですが、好評につき、次回からは、子ども向け国語辞典を家庭で使いこなすための実践編をお送りします。

第1回 いまどきの辞典って、どうなってるの?
第2回 子ども向け国語辞典のひみつ、つぎつぎに言葉を引きたくなる工夫
第3回 子ども向け国語辞典ができるまで
第4回 辞書のひみつ

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梅本真由美(うめもとまゆみ)
サイエンスライター。
長野県出身。NTT勤務を経てNTT系列の広告代理店で編集・マーケティング・企業向けWebページの企画制作などを担当。結婚後は専業主婦となる。2002年、 「天文台マダム日記」の公開がきっかけでライターに転身、朝日新聞・天文雑誌などに執筆多数。現在、月刊星ナビにて「天文台マダムがゆく」、国立天文台の公式サイトにて「天文台マダム VERAに夢中!」を連載中。