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家庭・学校以外の第3の場所が子どもの生きる力を育てる

家庭・学校以外の第3の場所が子どもの生きる力を育てる

家庭→学校・習い事 子どもたちの世界はせまい

子どもたちにとって、家庭と学校(幼稚園や保育園)は1日の大半を過ごす場所。

あとは、塾や習い事などが加わったとしても、家庭→学校→課外活動のループをぐるぐる回っている限り、そのなかで出会う家族以外の人といえば、同年代の友だちと先生くらい。
大学生でもこのループにアルバイトが加わるぐらいで、それほど世界が広がるわけでもないのが実態ではないでしょうか。
考えてみれば、子どもたちは限られたせまい人間関係のなかで生きているんですね。

しかし、大人になれば、当然いろいろな人との関わりのなかで生きていかなくてはなりません。さらに、これからはグローバル化もますます進み、変化のスピードも早くなります。子どもたちはわたしたち親が経験してきた以上に、いろいろな価値観や背景をもつ人たちといっしょに仕事をする機会が増えていくでしょう。

そうなると、前回お話ししたように、自分の考えを筋道立てて、分かりやすく言葉にして伝える力とともに、多様な価値観への理解とコミュニケーション力がますます重要になっていきます。

世代をこえた多様な関係が子どもの生きる力を強くする

多様な価値観への理解やコミュニケーション力って、教えてできるようになるものではなく、経験から学んでいくことです。社会にでるまでに、少しでも多くの多様な人と触れ合う機会があるといいのですが、そういう機会って案外少ないですよね。
そこで今回は、家庭や学校・日ごろの課外活動以外の第3の場所を親子でもつことを提案します。

なぜ第3の場所をもつといいのでしょう。それは、家や学校ではなかなか触れ合えない、年齢や立場もさまざまな人と出会える可能性があるからです。

子どもにとって家庭は、自分の素が出せる第1の場所。だから安心できる環境であることが大事なのですが、そこで経験する関係は、基本的に上下がはっきりしています。子どもにとっては、親のいうことを聞くか、反発するかの二者択一になりがち。しかも全てを言わなくてもあうんの呼吸で伝わってしまうので、会話も「早く」「わかんなーい」というようにワンワードになりがち。それでは、なかなか自分の考えを筋道立てて、分かりやすく言葉にして伝える力は身につきませんね。そこで、ワンワード禁止週間をつくリましょうと提案したのが前回です。

学校や習い事などの課外活動は、家庭以外で多くの時間を過ごす第2の場所。そこで子どもたちが出会うのは、先生か同年代の友だちです。家庭以外の世界を広げてくれる場所ではあるのですが、決まった場所で出会う同じ人たちですから、多様性や違う価値観に触れる機会にはなりづらいでしょう。

コミュニケーションの点でも、興味が同じことについて話が盛り上がることはあっても、相手を傷つけるのが怖くて、あたりさわりのない会話で終わってしまうこともあるかもしれません。

では、第3の場所ってどんなところがあるでしょうか。たとえば地域で開催される自然観察会やスポーツ、音楽・アートのイベント、子ども食堂などが第3の場所です。このような場所は年齢も背景もさまざまな人が集まりやすく、子どもたちは自分の知らない世界を見聞きすることで視野を広げることができます。

また、コミュニケーションの点でも、ちょっと心理的な距離があるので、理解し合うためにはどんな切り口で話をしたらいいか、自然と相手のことを考えながら話をするようになります。ときには、年上の人から、敬語の使い方がなっていないと叱られることもあるかもしれませんが、それも経験です。年齢のちがう先輩後輩、おじいちゃんやおばあちゃん、近所のおじさんおばさんなど多世代の人との関わりのなかで、子どもたちの生きる力が自然と育っていくのです。

学校が地域に開かれていく時代。親も地域に出ていこう

いま、子どもたちの生きる力を育てるために、学校を地域に開いていこうという取り組みが進んでいます。コミュニティスクール地域学校協働本部という名前を聞いたことがあるでしょうか?

子どもの生きる力を育てるために「教育を学校の先生だけに任せるのではなく、地域の力を活用しましょう」という流れのなかで、授業や放課後の活動に、できるだけ先生以外の大人が関わる機会を増やそうとしています。

子どもだけでなく、わたしたち親も、実は家庭と職場の往復になりがちです。まずは親が、ちょっと目を開いて情報を収集し、このような地域の活動に参加してみることで第3の場をもってはどうでしょうか? アンテナを少し立てるだけで、はじめてでも気軽に参加できる開かれた場所は身近なところにもいろいろあることがわかります。

子ども主体の活動だけでなく、大人向けの活動に子どもといっしょに参加するのもおすすめ。親の世界が広がれば、自然に子どももいろいろな体験をすることができます。

親だけでできることには限りがあります。まず親自身がいろいろな場所で人とつながり、それを家庭にもち帰ることで、子どもの世界を広げることもできます。

いまは一人っ子の家庭も多いので、かかわる人の数も少なくなりがち。子どもの生きる力を育てるために、家庭以外の力も借りて、子育てをしていきましょう


多様性のなかで子どもは成長する
中曽根陽子
中曽根陽子
教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/