「子育てが楽しくなる小さなヒント」④ 子どもたちから学んだこと
学研キッズネット編集部と、元保育園園長で現在「花まる子育てカレッジ」のディレクターである井坂敦子さんがタッグを組んで、月・水・金の朝6時に配信している、音声プラットフォーム『Voicy』の番組「コソダテ・ラジオ」。月曜日配信のトークテーマ「子育てが楽しくなる小さなヒント」の内容を、いつでもお読みいただけるように記事化しています。さて、今回は「子どもたちと接してきて感じたこと」に関するお話です。
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好奇心のままに“まっすぐ動く”
いろいろなお子さんを見ていて思うことは、とにかく心が柔らかくて、瞬発力があるということ。
「これ見つけた!」「これやりたい!」「いいこと見つけた!」
こんなふうに好奇心に駆られて、遊びたいものや見たいもの、やってみたいこと、遊びのルールなどを「ひらめいた!」「見つけた!」「やりたい!」と、思いついたらすぐ動くというのが、子どものすごいところだと思います。
保育園の仕事をしていたとき、そうした子どものエネルギーあふれる動きや、身体からパワーが湧いて出てくるような姿をたくさん見て、焚火にあたっているかのような暖かさを感じていました。
「お花が咲いている!」や「この石なんだろう?」、「アリがいる!」など、好奇心で心が動く様子を、すぐに体や行動で表してくれます。ニコニコしながら先生に教えてくれたり、「一緒に見て見て」と言ってきたり、すべての言動において自分の心にまっすぐで迷いがなく、自分の気持ちを素直に表すんです。
これは、大人になるとなかなか難しくなってきますよね。経験を積んで、知恵がついてくると、色々な事への処し方が変わってくる。子ども達の瑞々しいストレートさに、「自分はこんなふうに物事を見たり、まっすぐに行動できるかな」と振り返させられることが何度もありました。
何があっても「お母さん大好き!」
それから、もうひとつ。とにかく子どもというのはお父さんお母さんが大好きということ。何があっても大好きなんですね。それを痛いくらいに感じることが、保育園の仕事をする中でありました。
ある日、上にお姉ちゃん、下に弟くんというご兄弟のいるお母さんから相談を受けたんですね。
お姉ちゃんはしっかりしていて頼りになり、色々なことがとても上手にできるタイプ。下の弟くんは甘えん坊で、なんでもお姉ちゃんやママを頼る、甘え上手なタイプ
お母さんとしては、「お姉ちゃんが3歳でできたことを、同じように弟にも3歳でやらせなくては」と思いつつ、あとでもいいかなと、ついつい基準が甘くなってしまうそうで、それがお姉ちゃんからすると、「なんで弟はできなくてもいいの?」という不満になってしまい、どうしたらいいでしょう、という相談でした。
さらに、親としてよくないと思いつつ、お姉ちゃんがしっかりしているばかりに、つい弟のほうをかわいがってしまい、お姉ちゃんにはつらくあたってしまう、というお話も。
お母さんが自覚されているように、弟さんのほうに甘くなっているのは私から見ても明らかでした。ほかの先生方からも、「あれではちょっとお姉ちゃんがかわいそうなのでは」という話まで出るような状況でした。
それでもお姉ちゃんは、お母さんのことを恨んだりすることなく、お母さんのことが本当に大好きで、私と話すときは、「うちのママはすごいんだよ」「こういうお料理が上手に作れるんだよ」「ケーキもとっても上手に焼いてくれるの」というように、お母さん自慢をいつもしてくれました。
色々あっても、やっぱりお母さんが大好きなんですね。
そういう切ないまでの子どもの想い、お父さんやお母さんに対する気持ちの強さや真っすぐさには、ハッとさせられることがありました。
揺るぎない親への信頼感
小学校受験のお手伝いをしていたので、受験に向けて少し厳しい指導をされているなと感じるご家庭もありましたが、その場合でも、子どもは決して「お母さんからプリント学習を沢山やらされるのが嫌だ」とか、「できないことを注意されるのが嫌だ」とは言わないんですね。
小学校受験の問題というのは、ふるい落とす目的で、年齢よりも少し難しい問題が出ます。なので、できなくても仕方のないところもあるのですが、子どもたちは、「僕が頑張れていないから」、「私ができないから申し訳ない」というふうに心から思っています。
子どもは何の疑問も持たずに、「自分のためにやってくれている」と、親を100%信じています。多少大変なことがあっても、「お母さんやお父さんが自分のためにやってくれていることなんだ」と信じている様子がよく見られました。
お父さんやお母さんへの信頼、大好きな気持ち。それが本当にまっすぐで強くて美しいというのが、そばで見ていて感じたことです。
子どもを見つめて
いくつか具体的な例を挙げましたが、子どもたちを見ていると、どこをとっても学ぶことが多く、本当に素晴らしいなと感じます。
子ども自身が持つパワーもそうですし、まっすぐな気持ち、相手を信じきる姿……。さまざまな邪念があってまっすぐになれていない自分を反省させられるような気がします。
どんなお子さんも、生きている姿、それだけで立派だなと思います。「よりよく育てたい」とか「賢く育てたい」と欲が出てくると、つい足りないところを探すような見方になってしまうと思います。
そういう気持ちから一旦離れていただいて、お子さんがどれだけ一生懸命、目の前のことに向かっていっているかというのを観察してみてください。大人のほうが、かえって背すじが伸びるような気持ちになるのではないでしょうか。
話し手/井坂敦子 構成/清野 直
↓こちらでは、もうひとつ感動させられる子どもの姿について話しています
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▼井坂敦子 プロフィール
慶應義塾大学→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営 英国留学中高校生女子とボーダーコリー3頭の母
中学校高等学校教諭一種免許状(国語) 保育士 食育カウンセラー 表千家師範
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