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Case 15 友だちのうちはどこ?/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 15 友だちのうちはどこ?/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

待ちあわせ場所があいまいなユカは、行く場所を教えるときもあいまい。心配性と言われても、親としてははっきりと教えてほしいのです。

ユカは今日どこにいるの?

娘のユカは大学生になってから、行動範囲が大きく広がりました。授業のある日はともかく、休日ユカがどこにいるのか、わたしにはわかりません。

いつでもスマホで連絡がとれる安心感で、ユカは、「買い物に行く」や「バイトに行く」というように「なにをするか」は言っても、「どこに行くか」はあいまいになっています。

もう子ども扱いする年ごろではないので、ふだんはそれで問題ありませんが、どこにいるかを知らないと心配なことも起こってきます。

友だちのうちはどこ?

ユカは大学の学祭最終日、打ち上げのあとにサークルの友だちのAちゃんの家に泊まりました。

「なにかあったら電話かLINEするね」と言ってユカは出かけて行きました。

夜中になると、ファミレスでパフェを食べている姿や、Aちゃんの家でくつろぐ画像がユカから送られてきて、楽しく過ごしていることはわかりました。

でも、Aちゃんの家はどこでしょう? ユカは最寄りの駅しか教えてくれません。住所を聞いたら、なんとユカもAちゃんの住所を知らないと言うのです。

他の仲間の家についても「使う鉄道路線」くらいしか、ユカは知りません。どこでも連絡がつくから、ユカたちは住所を知る必要を感じないのです。

中学・高校ならクラスや部活の名簿が配られますが、大学ではありません。大学に入ってからのユカの友だちについて、わたしは住所も電話番号もメールアドレスも知らないし、当然、SNSでつながってもいません。

ユカ世代ではすたれてしまった「年賀状」は、いま思えば、交友関係を家族に共有させる役目を自然と果たしていたのかもしれません。いま、交友関係はユカのスマホの中に入ってしまっています。

なにかあれば連絡するとユカは言いますが、もしそれすらできないようなことが起こったら、ユカは安否不明の行方不明ということになってしまいます。そのとき、わたしはAちゃんの家に行き着けるでしょうか?

「行き先は言わなくても大丈夫」な未来になっても

ユカは合宿に行くときも、宿泊先は着いてから連絡すると言い出したので、わたしは言いました。

「もし今日大きな地震が起こって、あなたがどこにいるかわからないままスマホも使えなくなったら、どうすればいいの?」

思い出すのは5年半前の東日本大震災のことです。

あの日、震源地から遠く離れたわたしの町も停電と交通機関のマヒで大混乱になり、わたしは出先から家に帰ろうと必死でした。ユカは帰宅しているはずでしたが、ケータイはメールも通話もできず、結局わたしが家に着くまでユカとは連絡がとれませんでした。

震災のような深刻な天災でなくても、事故やケガ、病気など、スマホでの連絡が難しい状況にならないとは限りません。ユカはそのことに思いいたったのか、前ほどいやな顔はせず行き先を知らせてくれるようになりました。

このさき、GPSで居場所を知らせてくれるサービスが進化していくと、親も子も行き先を言わなくて平気な未来がやってきたりするのでしょうか。でも、便利な機能にたよりすぎると、スマホが使えなくなったとき、子どものいる場所がまったくわからなくなってしまう可能性があります。

予想もつかないことが起こるのを、東日本でも熊本でもわたしたちは経験しています。「出かけるときは行き先を教えていく」といった「不便」な時代の習慣を残しておくのは大切ではないかと、わたしはあらためて思うのです。

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 マリ(まり)

 マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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