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Case 55 ユカ、最後のあいさつ/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 55 ユカ、最後のあいさつ/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

大学を卒業して社会に出たユカを待っていたカルチャーショックとは? そして最終回のごあいさつです。

社会人1年生のユカのびっくり

4回にわたって、娘のユカの大学入学から卒業まで、SNSとどうつきあってきたのかを紹介してきました。今回はついに社会に出て「子ども」ではなくなったユカの後日談です。

いまは会社や職種によってネットの利用に大きなバラつきがあって、業務に不可欠なところも、あまり使われていないところもあります。ユカはまだまだ旧式のコミュニケーションが主流の職場に入りました。お客さん相手の仕事です。

「電話がいっぱい来るの」
とユカは嘆きますが、電話をとるのは新人の役目。ちゃんと応対できるようになろうと必死です。さまざまな立場や年齢の人とふれあうなかで、メールどころか電話も手ぬきだと考え、直接顔を合わせるのが一番という信念の人にも出会い、カルチャーショックを受けていました。

ユカは、世間にはLINEもメールもしない人がたくさんいる、ということを日々実感しているところです。そしてその人たちとコミュニケーションするため、自分も歩み寄らないといけないことがわかってきたようです。

お客さんだけでなく、職場内でもいままでのユカの常識は通用しません。
災害時の電話連絡網が配られたユカは、
「紙の名簿なんてなくしそう……。スマホに送ればいいのに」
と言って、しまい場所に悩んでいます。

遅刻や欠勤の連絡にはメールは使えず、必ず電話です。学生時代のバイトでさんざん「メールのほうが、電話より確実だと思う」とグチっていたユカでしたが、
「電話が確実! メールでは会社の人はすぐに見ないからね」
とあきらめ顔です。

とはいえ、職場でもグループLINEが使われはじめました。会議の日時の念押しなど部内の連絡用で、未経験の人への説明役はユカです。若い人ほど使っているのかと思いきや、ある年齢以上(LINEをする年ごろの子どもがいる人)のほうが、すでに活用している人が多いそうです。

ユカたちケータイ・スマホ世代が社会人になると、会社は、働き方はどんなふうに変わっていくのでしょうか。わたしは不安半分、楽しみ半分でこれからも見守っていきたいと思います。

最後に SNS時代に親として過ごして

ユカの学生時代は、ちょうど、子どもたちがネットやケータイを使いだし、スマホ所持があたりまえになるまでの時期でした。

親であるわたしにとっては、ネットやケータイに関する情報がめまぐるしく更新され、マナーや常識がゆらぎ、自分の経験が通用しないトラブルに直面するたび、ユカといっしょに新しい正解を考えなければならない日々でもありました。

いま振りかえれば、ユカはトラブルのたびにネットの世界で自分を守る知恵や他者を思いやる方法を学び、これからのネット社会で生きていくためのよい練習をしていたように思えます。

また、子どもの交友関係がスマホ経由になり、親の目が届きにくくなっていくのも感じました。家電(いえでん)の時代はいやおうなしに家族の目に触れていた交友関係が、いまや子どもの手のなかで完結してしまうのです。深刻なトラブルでも子どもがひとりで抱えこんでしまう怖さは常にありました。

一方で、反抗期や親子ゲンカの最中でもLINEでなら会話できたりと、スマホでつながるのは親にとって悪いことばかりではありませんでした。いまユカは帰宅するとSNSで学生時代の友だちと近況報告しあい、はげましあって一日を終えています。このさきユカが遠くに住んでも、わたしも思いついたときに「どうしてる?」と話しかけることができるのです。

いままでの時代にはなかった新しいつながりかた、新しい人間関係のなかを子どもたちは生きていきます。それが子どもに幸せをもたらすものであるよう、わたしは願っています。

わたしは、ユカが中学生のときに同級生がSNSで炎上し、保護者や友だちまで名前や写真が全国にさらされてしまうという事件を経験しました。ユカや友だちのトラブルを共有することで、いまの保護者の方々の参考になればと『わが家のSNSトラブル』を書いてきました。ユカの失敗や奮闘がすこしでもお役に立てば、ユカもわたしも大変うれしく思います。そして、たくさんのネタを提供してくれた娘のユカや友人に心からの感謝を贈ります。

今回でこのコーナーは最終回です。長いあいだおつき合いいただきありがとうございました。いつかネットのどこかでお目にかかりましょう。

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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