思春期の子どもと良い関係を保つには/くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て【第12回】
子どもは子ども自身で、自分の人生を切り拓いていくものです。子どもは植物と同じなのではないでしょうか。水やりや日当たりなどの環境さえ整っていれば、ちゃんと、自ら成長していきます。放任するのではなく、いつでも援助する用意をし、信じて見守ることが何よりの勇気づけになると、わたしは考えています。
子どもが思春期になった途端、どう接して良いのかわからなくなる
幼いころは親の言うことをよく聞く素直だった子どもが一転。思春期に入った途端、親の言うことにはまったく耳を貸さず、屁理屈ばかり言うようになり、反抗的になったという話や、部活動や塾などでいつも疲れていて、ゆったりした会話や話し合いができず、子どもが一体何を考えているのかわからなくなってしまった、などと言う話を時おり耳にします。
先日、わたしは都内のある公立中学校の講演会に講師として招かれ、親子のコミュニケーションについてお話したのですが、事前に保護者のみなさんに書いてもらったアンケートの中にも、このような悩みが数多くありました。
子育ての悩みは子どもの年齢によって変化します。小さいころは発達のことで心配になり、小学校に入ってからは勉強や友人関係が気になり、そして、思春期になったら進路のことで悩み……親というものは、子どもが何歳になっても、悩みが尽きないものですね。
思春期の子を持つ親の悩みナンバーワン
我が子がスマートフォンやインターネット、または、ゲームに熱中してしまい、長時間使用していることが気になって仕方がないという保護者は多いことと思います。子どもに、使い方を自分でしっかり考えるよう、伝えてはみるものの、思春期の子どもはなかなか、親の思うようにはなりません。話し合って、使う時間についての約束をしてみても、楽しいことはなかなかやめられず、そこで、親子げんかになってしまう。そしてさらに、子どもとの関係が悪くなってしまうということもあるのではないでしょうか。
では、このように難しい年ごろの子どもたちとどのように関わったら良い関係を保てるのでしょうか。また、どのように話したら、子ども自身が考えるようになるのでしょうか……アドラー流思春期の子どもとの接し方の具体例を、ここでご紹介してみたいと思います。
子どもを対等な存在と考える
まず、子どもを対等な存在として接することがいちばんの秘訣です。つまり、子どもを子ども扱いしないということです。子育てというと、親が子どもを立派に育て上げなければならない。あるいは、社会に出て迷惑をかけないよう、親がしっかりと大切なことを教え込まなければならないというようなイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?
もちろん、それも一つの考え方ではありますが、しかし、アドラー流の子育てはちょっと違います。子ども自身が行きたい方向に行けるよう支援することを大切に考えます。親の理想の子どもを育てることが目的ではありません。アドラー流子育ての本を多く出版されている星一郎さんによると、子どもが10代になったら「子育て」というよりは「子つきあい」と考えれば良いとのこと。
つまり「育てる」と言う感覚ではなく、子どもと対等の関係で「つきあう」のです。子どもを諭し、言うことを聞かせるのではありません。まるで、自分の大切な友だちに話すよう話しかけてみることです。
「やめなさい。」と、命令するのではなく、「そろそろ、やめたほうが良いのでは?」と提案するのです。あるいは「お母さんは、あなたのことがとても心配なの。試験も近いようだから、そろそろ切り上げたほうがいいと思うんだけど……」と、感情を交えずに伝えてみるのです。
そして、その提案を拒否されたとしても、悲しんだり落ち込まないことです。なぜなら、それ以降は本人の課題だからです。また「成績が悪かったら取り上げる」と言うのも、罰を与えるのと同じですので、決して好ましいことではありません。
子どもは自分の力で育っていく
子どもがスマートフォンやゲーム、インターネットを長時間使っていることを心配するのは、親として当たり前のことだと思います。でも感情的になって叱ったり、取り上げたりしても、関係は悪くなるばかり。逆に、親に支配され、押し付けられていると解釈する危険性もあるので、良いことはひとつもありません。
子どもは子ども自身で、自分の人生を切り拓いていくものです。子どもは植物と同じなのではないでしょうか。水やりや日当たりなどの環境さえ整っていれば、ちゃんと、自ら成長していきます。放任するのではなく、いつでも援助する用意をし、信じて見守ることが何よりの勇気づけになると、わたしは考えています。
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