子どものやる気をどうやって引き出す?/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第6回】
シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載6回目です。
うちの子、まったくやる気がないんです。
子育てで困っていることのひとつとして、よく耳にするのが、「子どものやる気問題」です。
そうですよね。子どもが自分からやる気を出して、いろいろなことに取り組んでくれたら、親としてこんなにうれしく、安心なことはありません。
たとえば、将棋の藤井聡太さんのように、子ども自身が熱中できることを見つけて、しかも結果もだしてくれたら、いいですよね。まあ、藤井さんとまではいかなくても、子どものやる気を引き出したいというのは多くの親が持つ願いではないでしょうか。でも、それがなかなか難しいのが現実かもしれません。では、どうしたら、子どものやる気を引き出せるのでしょうか?
親は子どものナビゲータに!
その答えになりそうなのが、「子どもの好奇心伸び放題、出る杭を伸ばす探究型の学校」をうたうラーンネットグローバルスクール(神戸市)で実践されているナビゲータという取り組みです。
この学校では、先生から一方的に教わる受け身的な学習ではなく、子どもが興味あるテーマを自ら見つけ出して、調べ、行動し、判断し、表現するなど、物事に積極的にかかわって学ぶ姿勢を身につけさせることを大事にしていて、子どもの学習を側面支援するという意味で先生と呼ばず、ナビゲータと呼んでいます。その役割は「これをやりなさい」と押し付けるのではなく、子どもの興味や好奇心を大事にして、自分から学ぼうという意欲を引き出すことです。
実際に見学に行ったときにも、上から強制したり、命令をしたり、これやっちゃダメと禁止したり、罰を与えたりといった手段はできるだけ使わず、子どもを一人の人間として尊重しながら、子ども自身に考えさせ、行動させるような提案や質問を行なっているという印象でした。
子どもをよく知る・感じる。そして、子どもに選ばせる。
わたしたち親は、生まれてすぐのなにもできない赤ちゃんを育ててきた経験からか、子どもが意思を持つようになってからも、どちらかというと「なにも知らない・できない存在」として扱い、正しいことを教えて導かなくてはという思い込みに縛られているところがあるような気がします。
でも、果たしてそうでしょうか? どんな子どもにも潜在的な能力があり、その能力を引き出すのが親の役割だとしたら、わたしたち親は、どのようなかかわり方をすればいいでしょうか。
ラーンネットグローバルスクールの代表の炭谷俊樹氏は、長年の経験から、まずは、子どもの好奇心を大事にすること。そして、やる気を引き出すためには、子どもが自由に選択できる機会を増やすことが大切だと言います。なぜなら、自分で選んだことには「やるぞ!」という気持ちが生まれるからです。
そして、子どもが集中しているときにはとことん取り組ませること。たとえ大人から見たら同じことの繰り返しに見えることでも、子どもが熱中している間はそれをさまたげずに見守ることが大事だと言います。とことんやり尽くして達成感が得られると、子どもは満足して、さらにほかのことにも、自分から取り組むようになります。そうなればしめたもの。大人があれこれ言わなくても、子どもは自分で考えて行動するようになるそうです。
わたしが卒業生に話を聞いたときにも、「子どものときにとことん取り組んだ経験によって、実現したいと思うことを持ち、困難があっても考えて乗り越えられる問題解決力と自信がついた」と話してくれました。
この自由選択→集中→達成感の好奇心爆発サイクルが回るために、ナビゲータとしてなによりも大切なことは、「子どもを信頼する」ということ。そのうえで、「この子はどんなことが好きなのか。なにが得意なのか。どんな言い方をするとやる気を出すのか、反対にやる気をなくすのか……などなど、よく観察して知る・感じること」が大事だそうです。そのためのひとつの方法が、前回紹介した「子どもの話を聴く」ということですね。
AIが発達すればするほど、人間に求められるのは、自分で考える力や発想力です。お子さんのやる気を育てるためにも、まずは親のみなさんがお子さんのナビゲータになってみませんか?
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