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お手伝いで生きる力が育つ!?/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第8回】

お手伝いで生きる力が育つ!?/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第8回】

シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載8回目です。

お手伝いするほど、コミュニケーションスキル・課題解決スキルが育つ

みなさんのお子さんは、なにかお手伝いをしていますか?

たとえば、食器を テーブルに運んだり、片付けたり、洗濯物をたたんだり、おうちのなかで子どもに任せられることはいろいろあると思います。
なかには「子どもに頼むと、かえって時間がかかってめんどうだからやらせない」という人がいます。しかし、お手伝いは子どものさまざまな能力を伸ばすうえで、大きな役割があるようです。

国立青少年教育振興機構が行なっている「子供の生活力に関する実態調査」※1によると、保護者が、勉強以外のさまざまなことをできるだけ体験させているほど、その子どもの生活スキルが高い傾向が見られるという結果が出ています。

(この調査では、具体的な生活に関する行為・技術を「生活スキル」とし、自立した生活に必要な資質・能力の要素として位置付けて、コミュニケーションスキル、礼儀・マナースキル、家事・暮らしスキル、健康管理スキル、課題解決スキルに分類して分析しています。)

とくに注目したいのが、お手伝いをたくさんしている子ほど、コミュニケーションスキルや課題解決スキルが高くなるという結果です。

「子供の生活力に関する実態調査」報告書〔概要〕結果③【生活スキルのある子供、ない子供の特徴等】(国立青少年教育振興機構)より

「子供の生活力に関する実態調査」報告書〔概要〕結果③【生活スキルのある子供、ない子供の特徴等】(国立青少年教育振興機構)より

この調査では、コミュニケーションスキルとして、「人の話を聞く時に相づちを打つこと」「自分と違う意見や考えを、受け入れること」などを、課題解決スキルとして、「一つの方法がうまくいかなかったとき、別の方法でやってみること」「目標達成に向けて努力すること」などをあげています。

確かに、お手伝いをすることで、どうしたらうまくできるかを考えて段取りよく動くことや、気配りや人と協力する力も育まれそうです。これって、そのまま社会人として必要な力ですよね。

21世紀型能力は、お手伝いでも身につけられる

しかも、これらは、教育改革の目標となっている21世紀型能力にも通じるものです。

21世紀型能力については「知っておきたい教育用語のトリセツ」※2にもくわしく書きましたが、これからの社会で求められる資質や能力のことで、読み書きや計算などの「基礎力」をもとにしながら、「思考力」を駆使して問題を発見し、自分なりに解決策を見いだし、みんなで協力しながら課題を解決できる力のことです。

すでに、小学校・中学校でも取り組みが始まっている最先端の教育ですが、これって、お手伝いの作業のなかにも当てはまることがあるのではないでしょうか?

たとえば、料理を一品作るとして、予算を決めて、家にある食材をチェックして足りないものを買うことから子どもに任せるというのはどうでしょうか。お金が余ったら、好きなものを買っていいということにしたら、子どもは少しでも安いものを買おうと工夫するかもしれません。そして、料理をおうちの人といっしょに作れば、協力しながらなにかを作り上げる体験になります。

21世紀型能力というと、なにか難しいことのように感じますが、ようは生きる力。おうちでできることがたくさんありそうですね。

子どもがやってみたいお手伝いをお願いしよう

ここまで読んで、お手伝いにはすごい効用があるということがわかってもらえたでしょうか? しかし、「お手伝いを頼んでも、めんどうがってなかなかやってくれない」という人もいます。

そうですよね。わかります。

お手伝いって、なにか楽しくないことを押し付けられるというイメージがありますからね。

でも思い出してください。

お子さんが小さいときに、親のまねをしていろいろなことをやりたがりませんでしたか? それが実はお手伝いの始まりでした。

「もう子どもは大きくなっちゃった」という人でも大丈夫! 逆に、「大きくなったのだから、家の仕事を任せたい」ときちんと伝えましょう。子どもには本来、できるようになりたいという気持ちや、人の役にたちたいという気持ちがあります。ぜひ家族の一員として、子どもにもなにか仕事を任せてみましょう。

そのときに大切なのは、子ども自身がやってみたいという気持ちになることです。

そのためには、子どもができそうなことで、やってみたいと思うことを、子どもと話しあいながら決めて任せることが大切です。たとえば、お仕事のリストを作って、どれならできそうか、子ども自身に選んでもらうのもいいですね。成長に応じて、できることも変わっていくので、いろいろ経験してもらうのもいいと思います。

同じ調査で、保護者が「もっとがんばりなさい」とか、小言をいう「叱咤(しった)激励」的な関わりをしても、子どもの生活スキルは上がらないという結果も出ています。

子どものやる気を引き出すには、自由選択を与えることからということを以前「第6回 子どものやる気をどうやって引き出す?」で書きましたが※3、やりようによっては、お手伝いも子どものやる気を引き出すいいチャンスです。

親のやってほしいことを押し付けるのではなく、子どものやってみたいという気持ちを大切にして、ぜひお手伝いを習慣にしてみましょう。

お手伝いは、生きる力を育てる一歩

中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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