ネット時代に必要なのは、自制心/AI時代を生き抜くために「失敗力」を育てる6つの栄養素【第14回】
シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載14回目です。
3時間スマホを使うと、2時間の勉強がムダになる!?
お子さんにスマホ(スマートフォン)を持たせていますか?
2018年の内閣府の調査結果※1によると、子どものスマホの利用率は年々上昇し、2017年度時点で小学生のスマホ利用率は29.9%、中学生は58.1%に達しています。
スマホはとても便利な機器ですが、その一方で低年齢から長時間使用することの弊害が心配されています。
その一つが学力への影響です。
さまざまな調査で、ケータイやスマホの使用時間と学力の間には相関があることがわかっています。
その一つ、文部科学省が行なっている全国学力調査*1 でも、ケータイやスマホの使用時間が短い子どもほど正答率が高いという結果がでています。この結果からは、ケータイやスマホに時間を取られている子は、勉強時間が短くなっているからかなと想像できます。
ところが、新たな研究で、勉強時間が長くても、ケータイやスマホを長時間使うと、勉強時間が短い生徒より成績が悪くなってしまうということがわかったのです。いったいどういうことでしょうか?
グラフをみると、まず自宅学習時間が長いほど成績は良く、ケータイやスマホの使用時間が長くなるほど、成績は低下しています。
さらに、ケータイやスマホを3時間以上使うと、たとえ2時間以上自宅学習をしても、ほとんど自宅学習をしないけれどケータイやスマホを使わない生徒より、成績が悪くなってしまうことがわかったのです。
さらにこの調査では数年間にわたる経年変化も追っていて、ケータイやスマホの使用をやめると学力が戻り、使用していなかった生徒が使用し始めると学力が低下することから、スマホの使用と成績の因果関係があるとしています。
使い方のルールを決めよう
では、親はケータイ・スマホの使用時間について、どのくらい制限をしているのでしょうか。
同じく内閣府の調査によると、「利用する時間等のルールを決めている」という家庭は、28.4%。しかも、親は「ルールを決めている」と思っていても子どもは「そう思っていない」という認識のズレがあることも明らかになっています。
みなさんは、ケータイやスマホの使用時間に関するルールを決めていますか?
親も、ケータイやスマホの長時間利用は、学力低下だけでなく、健康被害の可能性など、さまざまな問題が起こりうるということを理解しましょう。そして、「みんなが持っているからかわいそう」と簡単に買い与えるのではなく、なんのために必要なのか、いつから与えるのかをきちんと考え、与えるときには、使い方のルールを子どもといっしょに話し合って決めて、きちんと守らせることが大切です。
そうはいっても、一筋縄ではいかないのが、この問題の悩ましいところ。
たとえば、子どもたちに人気のYouTubeは、いつでも何回でも見ることができるので、放っておくと長時間くぎづけになってしまいがちです。
ある小学生は、お母さんからネット依存の危険性を教えられ、1日の利用時間を30分と決めました。それでもうっかり時間が過ぎてしまうことがたびたびあったので、改めて話し合い、タイマーをかけて利用するようにしたそうです。
このように、依存しやすいスマホやケータイですが、一度でうまくいかなくても粘り強く向き合うことで、自制心を身につける絶好の機会とすることができます。
上記の調査でも、ケータイ・スマホの利用時間を1時間以内でコントロールしている子どもたちは、ほかと比べて成績が良いという結果が出たそうですが、文部科学省の全国学力・学習状況調査でも同様の結果が出ています。
これらの結果は、ケータイやスマホを持っていても使用時間を1時間以内に抑えられる自制心があることの一つの成果といえるでしょう。
ネット時代の子どもに求められるのは、情報活用能力、情報を見きわめる力、そして誘惑にまどわされない自制心です。
ネットやスマホと無縁の生活はありえないなか、使い方のルールを決めるのはもちろんですが、粘り強く向き合って、子どもの自制心を育てていくことが大切です。この問題とどう付き合っていくのか、親の失敗力も試されているともいえるでしょう。
参考
*1 平成29年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果
*2 『スマホが学力を破壊する』 川島隆太著(集英社新書)
PRESIDENT Online ”スマホが学力を破壊する”これだけの根拠
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