メニュー閉じる

【授業事例】小学2年生がプログラミングに熱中! まるでロボット掃除機!?なロボットでプログラミング教育

【授業事例】小学2年生がプログラミングに熱中! まるでロボット掃除機!?なロボットでプログラミング教育

2020年に小学校でのプログラミング教育が必修化となり、「プログラミング的思考」を養うために各教科にプログラミングを交えた教育法が導入されています。
今回はそんなプログラミング教育の事例の1つとして、ロボット掃除機「ルンバ」で知られるアイロボット社が開発したプログラミングロボットを使ったユニークなプログラミング授業の様子を紹介します。

アイロボットがなぜプログラミング教育?

ロボット掃除機「ルンバ」や床拭きロボット「ブラーバ」など、画期的なテクノロジーを搭載したロボットを次々と世に送り出してきたアイロボット社。家電メーカーのイメージが強い同社ですが、じつは宇宙探査用に設計された「ジンギス」や地雷除去、遠隔操作多目的ロボットなどの産業用ロボットの開発も行っていたロボットカンパニーで、2009年からはSTEMプログラムを社内に導入するなど、次世代のプログラミング教育に力を入れています。

その情熱を形にしたのが、プログラミングロボット「Root」。現在Rootは全国43都道府県の約300の小中学校でのプログラミング授業に導入されているそうです。

「プログラミングロボットRoot rt1」
無料でダウンロードできる専用アプリでのプログラミングにより、走る・光る・描く・音を奏でることが可能。実践的なプログラミングを可視化して体験し、計算的思考スキルを身につけることができます。

今回はプログラミング教育の活性化をサポートする支援施策として「Root」100台を世田谷区へ寄贈することになり、寄贈式には3年ぶりに来日したアイロボット創設者のコリン・アングルCEOが登場。プログラミング教育に力を入れる理由をこう話しました。

「今後プログラミングは読み書きと同じ基本技能になるでしょう。ですから、世界中の子どもにプログラミングを学ぶ環境をつくるべきだと考えています。ロボットは子どもに科学への興味をもたせ、その情熱を手助けして後押しする存在だと思っています。プログラミングは世界共通の言語であり、自らの手で将来をつくることができる言語であると考えています。そのスキルを学ぶ手助けをするためにRootを開発しました」(コリン・アングルCEO)

アイロボット創設者、コリン・アングルCEO

また、同じく寄贈式に登壇した保坂展人世田谷区長は、「Rootはプログラミングであるとともに、友だちと話しながら夢を形にしたり、さまざまな学びのツールとして活かせるのではないかと思っています。実際に触れて組み上げていく中で、子どもたちの原体験になるとすれば将来が非常に楽しみです。このご厚意を世田谷区の教育に活かせてもらえたら」と語りました。

寄贈されたRootは世田谷区立下北沢小学校を中心に、世田谷区の希望する小学校で活用されるそうです。

写真左から:アイロボットジャパン 挽野 元社長、アイロボット・コーポレーション コリン・アングルCEO、世田谷区長 保坂展人氏、世田谷区立下北沢小学校 大字 弘一郎校長

Rootを使ったSTEMプログラミング授業とは?

アイロボット社では、2022年にプログラミングロボット「Root(ルート)」を教材としたSTEM教育の出張授業を開始。小学校校長からリクエストのあった学校に、アイロボットの社員がボランティアとして学校を訪問し、プログラミングの知識を教えるというもので、2022年のスタート以来、岩手県・佐賀県・島根県・香川県で実施されてきました。

今回の世田谷区へのRoot寄贈にあわせ、世田谷区立下北沢小学校の2年生を対象にした特別授業が行われました。ここからは、Rootを教材にした授業がいったいどのようなものなのか、その様子を紹介します。

 

コリン・アングルCEOがサプライズで登場

授業の冒頭では、コリン・アングルCEOのムービーが流れ、ものをつくるのが大好きだっという幼少期のエピソードを紹介。

「困っている人を君のロボットが解決したらワクワクするよね? そんなふうに僕たちはロボットをつくっているんだよ!」

というメッセージのあとに、本人がサプライズで登場。児童たちはコリン氏の登場に大喜びし、会場は一気に湧き立ちます。

身の回りにあるロボットやアニメや映画に出てくるロボット、コリン氏がこれまでに開発したロボットを紹介し、児童たちはロボットへの興味を深めていきます。

コリン氏は、「ロボットとは人の代わりに作業や仕事を自動でやってくれる機械のことだよ」と語ります。人は目で見て頭で考え、手を使って掃除をするけれど、ロボットは自分で考えることができないので命令が必要。つまり、ロボットを動かすためにはプログラミングが必要であると説明し、プログラミング授業へと移ります。

ミッションに挑戦! 専用アプリでプログラミング

児童は3~4名のグループに分かれ、アイロボットのスタッフが研究員としてグループに加わります。それぞれのチームにタブレット端末とRootが配られ、いざプログラミングに挑戦。

専用のアプリ上で、前に進む、回転するなどの動きが描かれたブロックをドラッグ&ドロップしながらコードを組み、それをBluetoothで接続してRootを動かします。

各チームにミッションカードが配られます。最初の課題であるレベル1は、カードに描かれたルート通りにゴールを目指すというもの。

下北沢小学校ではICT教育を導入し、1年生の頃からiPadを使用していることもあり、児童たちは臆することなく操作を進めていきます。カードの通りに進まなければ互いに相談し、ブロックを入れ替えたり選び直したりてコードを修正。チームワークを発揮し、見事全チームクリア!

次に与えられた課題は「ゴールを目指し、ゴールからスタートに戻る」「旗と旗を通ってゴールをめざし、途中で色を光らせる」といったように内容がレベルアップ。

コリン氏も各チームを周り、児童にアドバイス。ミッションを達成した児童とハイタッチして喜びを分かち合います。

よりルンバに近いプログラミングロボットも登場

授業の後半には、ルンバをモチーフにした「Create 3」のプログラミングに挑戦。Rootよりサイズも動くマスも大きくなったロボットを前に、児童たちも大興奮。障害物を避けながらゴールを目指すというミッションでは、移動距離を変更したり、回転する角度を計算したりと、試行錯誤しながらも無事にミッションを達成していました。

ルンバエンジニアに認定!

最後にルンバエンジニアとしての修了カードが配られると、児童たちは大喜び。コリン氏は一人一人のカードにサインをし、全員で写真撮影。

「みなさんはアイロボットのエンジニアです。プログラミングを勉強し続けて、アイロボットに入ってください。世界にはまだまだロボットが必要です。将来、みなさんがつくったロボットに出会えるのを楽しみにしています」とメッセージを送り、授業は終了しました。

小学校低学年からのプログラミング授業、決して早すぎることはない

コリン・アングルCEOのコメント

「アイロボットチームと子どもたち、ロボットが一緒になってどんなことができるのかというのが、この授業で再現されたように思います。子どもたちの学び、思考、自分たちで新しいものをつくっていくイノベーションが早くて驚きました。言語を学ぶのと同じように、プログラミングを始めるのは早ければ早いほど上達して上手くなります。今回は小学2年生を対象にした授業でしたが、もっと早くてもよいくらいです。教育現場にイノベーションを起こすのは、時間がかかるもの。日本のアイロボットチームが地道に出張授業を繰り返しながら成長していければと思います。今後は児童だけでなく、先生方に教える機会を設けるのもよいかもしれないですね」

下北沢小学校 大字 弘一郎校長のコメント

「アイロボットジャパンの挽野社長から、Rootを使ったプログラミング教育を日本全国で広めたい、日本の子どもたちにプログラミングの楽しさを伝えたいという熱い思いをいただき、これは是非協力して子どもたちの力を向上させていきたいと思ったのが5年以上前。今回、子どもたちの将来につながるような貴重な体験をさせていただき、こんなにうれしいことはありません。

Rootは子どもの発達段階に合わせてトライアンドエラーがしっかりできるつくりになっていると思います。本物のルンバをつくった人たちが学校で教えてくれるという経験は、子どもたちにとって非常に大きなもの。教員がやると勉強になってしまいますが、外部の講師を招くと学習と実生活が結びつく、そういう良さがありますね」

子どもたちの声

・頭を使ってロボットを動かすのがすごく楽しかった

・障害物にぶつからないようにチェックポイントに行くところが難しかった

・プログラミング授業を通して将来の夢が増えたし、いろいろなことが学べてよかった

・プログラミングを組み合わせて実際にロボットが動くのを見られるのが楽しかった

・家でプログラミングのおもちゃやゲームをすることはあるけど、学校で友だちと一緒にやるといろいろなことを思いつくし、一人ではできないこともみんなと一緒なら達成できる。それがすごくいいなと思った

今回の授業では、どの児童も楽しみながらプログラミングに取り組んでいたのが印象的でした。チーム内で相談してアイデアを出し合い、想像力を巡らせて難しいミッションを次々にクリアしていく様は、見ていて感心するばかり。低学年のうちからプログラミングを学ぶのは、決して早すぎることはないと実感した1日でした。

取材・文/末永陽子

PAGETOP