図解でわかる! 発達障害の理解と支援
#第4回「受験時の合理的配慮」
放課後等デイサービスTEENSの『図表でわかる!発達障害』シリーズをもとに、「発達障害」にまつわる情報を、図表と一緒に紹介する本連載。
第4回は、発達障害の「受験時の合理的配慮」をテーマにお届けしたい。
※特別支援情報誌『月刊 実践 みんなの特別支援教育』(Gakken)のバックナンバーより抜粋して掲載しています
発達障害に理解のある学校の探し方は?
最近は、特に私立では、発達障害のある生徒のサポート体制が整っている高校が増えている。そのことをホームページや説明会で発信している学校も多いため、探すのはそれほど難しくないだろう。
一方で、発達に凹凸がある生徒に個別的に対応していても、そのことを公にはしていない学校もある。その理由として多いのが、以下の2つである。
➀熱意のある先生が個人的にできる範囲で対応している状態で、学校全体としての体制は整っていない。
➁ある程度、組織的に対応していたとしても、それを公にすると発達障害のある生徒が集まりすぎて、結果的に十分なサポート体制がとれなくなってしまうリスクがあると考えている。
従って、実際に志望校へ足を運び、その学校の教師に特別支援教育に対する考え方を聞いたり、親の会などを利用したりして情報を集めていけるとよい。
受験する前に学校に伝えたほうがよい?
発達障害について学校へ伝える義務はないため、特別な配慮を希望しない場合には、伝える必要はない。しかし、学校へ配慮やサポートを求める可能性があるのであれば、入学前に相談をしておくのが望ましい。
「障害を告知することで不利になるのではないか?」という不安が出てくるかもしれない。障害を理由に不合格にすることは法律で禁止されている。また、仮に障害を理由に不合格とするような学校であれば、受験をクリアしたとしても、その後の学校生活のどこかで苦しい状況に陥る可能性が高い。
「入試さえクリアできれば、学校生活において合理的な配慮は行う」というフェアな姿勢の学校であるかどうかを見極めるためにも、ナチュラルサポート以上の対応が必要な場合は、事前の相談をお勧めする。
受験のときに受けられる「配慮」とは?
受験の際の障害特性に合わせた合理的配慮を申請できる可能性がある。
平成28年4月1日に施行された「障害者差別解消法」により、障害のある生徒が受験する際には、負担が重すぎない範囲で配慮することが国公立の学校には法的に義務づけられた。私立学校の場合は「努力義務」となっており、強制力は国公立の学校よりも低い。
受験時の合理的配慮の対応例には、次のようなものがあげられる。
ASD(自閉スペクトラム症)
不安感の軽減ができるよう、前日の試験会場の下見を許可したり、集団面接を個別面接に変更したりする。
ADHD(注意欠如・多動症)
集中しやすくなるように別室受験を行ったり、座席位置を配慮したり、保護者の別室待機を許可したりする。
SLD(限局性学習症・ディスレクシア)
試験時間の延長や問題用紙の拡大、問題文の読み上げ、漢字のルビ振りなどの対応をして、読み書きの苦手さから理解度の測定の妨げにならないようにする。
下図のような、「高等学校の入学試験における発達障害のある生徒への配慮の事例」(文部科学省)も参考にしたい。
合理的配慮を求めるには?
受験時に合理的配慮を求めるには、医師の診断書や個別の教育支援計画、これまで学校で行われてきた支援の実績などの「配慮の必要性」を示したうえで、事前に申請をする必要がある。対応できる範囲は自治体や学校によって異なるため、本人・保護者・在籍校・志望校の四者ですり合わせをしていきたい。
また、申請には保護者や教員のサポートが不可欠ではあるが、配慮を受ける本人が自己理解を深めながら進めていくことも重要である。将来に向けたセルフアドボカシーの成長機会としてほしい。
監修:宮尾 益知(どんぐり発達クリニック)
作成:TEENS
イラスト:BONNOUM
掲載雑誌:『月刊 実践 みんなの特別支援教育』