図解でわかる! 発達障害の理解と支援
#第6回「発達障害誤解あるある」
放課後等デイサービスTEENSの『図表でわかる!発達障害』シリーズをもとに、「発達障害」にまつわる情報を、図表と一緒に紹介する本連載。
第6回は、発達障害の「発達障害誤解あるある」をテーマにお届けしたい。
※特別支援情報誌『月刊 実践 みんなの特別支援教育』(Gakken)のバックナンバーより抜粋して掲載しています
今回は、周囲から誤解を受けがちな発達障害のある子どもの背景に、思いを馳せてみたい。
誤解あるある➀ 「板書を写す気がない?」
板書を全く写さない子どもは、「やる気がない」と誤解されてしまうことがあるが、その背景を考えてみよう。
書字の苦手さが原因?
ディスレクシア(読み書き困難)などのある子どもは、会話でのやりとりは問題なくできたとしても、文字の読み書きに困難さがある。誤字脱字が多い、書いた文字が乱雑で読みにくい、枠からはみ出してしまうなどによって、書くことに対しての苦手意識が強くなっている可能性がある。
眼球運動が苦手?
視機能に関わる眼球の運動能力が弱いタイプの人は、視線をジャンプさせることが得意ではない。この特性がある子どもは、黒板を見たあとに、ノートに視線を移して文字を書くという作業にとても苦労する。
ワーキングメモリが弱い?
発達障害のある子どもの中には、情報を一時的に保持し、処理する力「ワーキングメモリ」が弱いタイプが多く、眼球運動と同様、板書で苦労をする可能性がある。
ノートテイクをしない子がいたら、大人は叱るのではなく、その背景を必ず探りながら、ICTを活用するなど支援を工夫して、その子に合った学び方を模索したい。
誤解あるある➁ 「ウソばかりつく?」
曖昧なことの理解が苦手なタイプが多い発達障害(ASD)の子どもの中には、コミュニケーションの絶妙なあんばいが求められる「ウソ」が苦手な子が少なくない。背景となる原因の例をあげる。
客観的事実と違うだけ?
ものごとの感じ方、考え方、表現のしかたがほかの人と違う場合もある。子どもの言うことをウソと決めつけるのではなく、どのように捉えているのかお互いにすり合わせをしよう。
不安が原因?
「普通」を求められた結果、失敗体験をたくさん重ねてしまい、話をごまかすことでなんとかその場をのりきろうとする習慣がついている子も少なくない。ウソやごまかしが多いと感じたら、まずは、できていることをほめる・喜び合うことから始めたい。
ウソをつくのが下手なだけ?
状況に応じてその場を円滑に乗り切るために上手にウソをつくことは、立派な処世術の1つである。一方で、発達障害の子の中には、つじつまを合わせ、表情をつくり、上手にウソをつくことが苦手な素直なタイプの子も多い。「ウソばっかり」なのではなく「上手にウソをつけない」のだと理解してほしい。
誤解あるある➂ 「態度が悪く見える?」
「態度が悪く見える」背景としては次のような例が考えられる。
姿勢が悪い➡発達性協調運動障害かも?
発達性協調運動障害(DCD)のある子は、スムーズに体を動かしたり、姿勢を保ったり、物を丁寧に扱うことが難しいことが考えられる。ADHD、SLD/LD、ASDと併存することが多いといわれている。気合いの問題ではないので、怒っても改善できない。
そわそわしている➡多動性が理由かも?
ADHDの子どもの中には、無意識に手足がそわそわ動くなど、エネルギーがあふれて活動のコントロールが利きにくいタイプの子がいる。心や体を安定させるために必要な動きだと理解したい。
TPOに合っていない➡暗黙の了解を知らないだけかも?
ASDの子の中には、明言されていないルールを理解することが苦手なタイプがいる。「言われなくてもわかるだろう」と決めつけず、TPOに合わせたルールとその意味を共有してほしい。
「みんなが当たり前にできること」ができないことを「不真面目だ!」と決めつけないでほしい。発達障害の子の感じ方・考え方・表現のしかたを理解していくことは、多様性を尊重する、みんなにとって過ごしやすい社会につながっていくだろう。
監修:宮尾 益知(どんぐり発達クリニック)
作成:TEENS
イラスト:BONNOUM
掲載雑誌:『月刊 実践 みんなの特別支援教育』