「2国家解決」を議題にした国際会議で、映像で演説をするパレスチナ自治政府のアッバス議長=9月22日、米ニューヨークの国連本部(写真:©朝日新聞社)
国連加盟国の8割 停戦への実効性は不明
中東のパレスチナを国際法上の国家として認める国が相次いでいる。米ニューヨークの国際連合本部で9月22日、イスラエルと将来のパレスチナ国家が共存する「2国家解決」に関する国際会議が開かれ、フランスのマクロン大統領がパレスチナを国家として承認すると宣言した。日本を含む主要7か国(G7)では前日に発表した英国、カナダに次いで3か国目。これで国連193加盟国の約8割にのぼる150か国以上が、パレスチナを国家として認めることになった。
各国の発表などによると、条件付きも含めて今回、国家承認を表明したのはフランス、英国、カナダ、オーストラリア、ルクセンブルク、ポルトガル、ベルギーなど計11か国にのぼる。
ある国が別の国を国際法上の国家として認めると、2国間で条約を結んだり、お互いに大使を送り合い、大使館を設置できたりするようになる。国王や大統領といった国家元首、外務大臣や特使などがはっきりと承認を表明するやり方が一般的で、国際機関など第三者に届け出る必要はない。
イスラエルとパレスチナをめぐっては2023年10月、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したことが発端となり、戦闘が今も続く。相次ぐ国家承認の動きはパレスチナへの連帯を示し、約2年にわたるガザ侵攻を止めるよう、イスラエルに迫る意味合いがある。ただ実効性には疑問が残り、停戦や国家樹立の道筋は見えない。
米国は不満表明、日本も承認見送り
イスラエルの後ろ盾の米国政府は、各国による国家承認に強い不満を示している。トランプ大統領は23日、国連総会の一般討論演説で「一部の国は一方的に国家承認している。ハマスのテロリストにとって、残虐行為に対するあまりにも大きい褒美だ」と主張した。
石破茂首相も23日、一般討論演説で、日本のパレスチナの国家承認は「するか否か」ではなく「いつするか」の問題と述べ、現時点での国家承認を見送る方針を示した。2国家解決にも言及し、「ゴールに一歩でも近づくような現実的かつ積極的な役割を果たし続けていく」とした。
日本政府が国家承認をしないのは、現時点での承認がパレスチナ情勢の好転につながらないというのが表向きの理由だ。国家と認めれば、唯一の同盟国である米国のトランプ政権との関係を悪化させかねないとの配慮もある。G7ではドイツとイタリアも2国家解決を支持しつつ、承認に慎重な姿勢を崩していない。
キーワード:2国家解決
2国家解決イスラエルと、独立したパレスチナ国家が平和的に共存するという考え方。両者は長い間、互いの存在すら認めてこなかったが1993年、「和平」を目指す交渉相手として認め合う「オスロ合意」に署名。共存の方向性が示された。ところが双方による軍事衝突が後を絶たず、交渉は破綻。イスラエルのネタニヤフ首相は「パレスチナ国家が存在することはない」と、この解決方法に反対している。
(朝日中高生新聞2025年9月14日号)
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