人類はいつ滅びるの?
こたえ:2023
人類がいつ滅びるのか。----この答えは、だれにも分かりません。地球は50億年後になくなると言われていますが、そのときはすでに、人類はいなくなっているでしょう(関連記事「地球はいつ滅亡するの?」)。では、それが何年先なのかというと、原因がいくつも考えられるため、はっきりとした答えが出ないのです。
まず、何が人類を滅ぼす原因になるかを考えてみましょう。2015年にイギリスのオックスフォード大学が発表した報告書「12Risks That Threaten Human Civilization」(人類をおびやかす12のリスク)が参考になりそうです1)。科学や経済などの専門家の意見をもとに、人類の滅びにつながるかもしれない危険な原因(リスク)として、[1]極端な気候変化、[2]核戦争、[3]世界規模のパンデミック、[4]生態系の崩壊、[5]国際的なシステムの崩壊、[6]巨大隕石の衝突、[7]大規模な火山噴火、[8]合成生物学、[9]ナノテクノロジー、[10]人工知能(AI)、[11]その他の全く未知の可能性、[12]政治の失敗による国際的影響の12項目をあげています。
これらのうち[1]~[5]は、いま進行中のリスクです。[1]の気候変化は、二酸化炭素の排出量が増えていることや、それによる温暖化など。今も、世界では大勢の人が飢餓に苦しんでいます。[3]のパンデミックとは、感染症の世界的な流行。まっさきに思いうかぶのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、ほかにも危険な感染症はあります。たとえば、温暖化でマラリアやデング熱の発生地域が広がるおそれがありますし、新型のインフルエンザが生まれるかもしれません2)。[4]の生態系の崩壊も、温暖化などの環境破壊によるもの。生態系がくずれれば、生物が絶滅するスピードが速くなります。
わたしたちの力では避けられないのが、[6]と[7]。隕石が衝突した地域では人類が全滅するかもしれず、衝突によってできたちりに覆われて地球が寒くなったり、生態系が破壊されたりするおそれもあります(関連記事「恐竜はなぜいなくなったの」)。
さらに、新たなリスクも生まれています。それが[8]~[11]です。[8]の合成生物学は、細胞や遺伝子を組み合わせて新たな生命システムをつくり出す研究。[9]のナノテクノロジーは、原子や分子を並べかえて新しい材料をつくり出したり、加工したりする技術。[10]の人工知能は、人間と同じような知的な作業をコンピュータで実現する技術。どれも人類の役に立つ技術ですが、使い方をまちがえれば、リスクにもなるのです。
何年後に人類が滅びるかという質問の答えにはなりませんが、1つのめやすとして「終末時計」を紹介します。これは、人類の終わりを「0時」として残り時間を示すもので、毎年、アメリカの学術雑誌『原子力科学者会報』(Bulletin of the Atomic Scientists)が発表しています3)。核戦争の危険性を人々に警告するためにつくられましたが、2007年からは、気候変動もふくめて残り時間が決められています。
第1回の発表(1947年)で残り7分だった時計の針は、2018・2019年には残り2分、2020・2021年には残り100秒まで進み、2023年1月には残り90秒と発表されました4)。その主な理由には、2022年から続くロシアによるウクライナ侵攻があげられています。
記事更新:2023年1月
参考資料
1)安井義浩(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)「人類滅亡、12のシナリオーオックスフォード大学等の公表したレポートより」:
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=42435?site=nli
2)環境省.「地球温暖化と感染症 いま、何がわかっているのか?」.2007年3月:
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/pamph_infection/full.pdf
3)国際平和拠点ひろしま.「終末時計は何秒になるか。」:
https://hiroshimaforpeace.com/doomsday-clock/
4)2023年1月24日.『Bulletin of the Atomic Scientists』の発表「Doomsday Clock set at 90 seconds to midnight」:
https://thebulletin.org/2023/01/press-release-doomsday-clock-set-at-90-seconds-to-midnight/
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。