日本には雨の季節、梅雨がありますが、雨による災害がおきるのは梅雨時期だけではありません。夏はゲリラ豪雨と呼ばれるような急な大雨がたびたび発生しますし、夏から初秋にかけては台風もやってきます。大雨になると、川が増水して水位は上がり、ときには川があふれることもあります。そして街が水につかってしまうと、みなさんの家や車などの財産や、命だって危険にさらされてしまいます。ここでは、川の増水・氾濫が起きる仕組みと、大雨のときに注意してほしいことをまとめました。
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川があふれる「氾濫」は2種類ある
川から水があふれ出ることを「氾濫」といいます。氾濫は、水のあふれ出る仕組みの違いによって大きく2種類に分けることができます。
ひとつは「外水氾濫」と呼ばれるものです。川の水が増え続けて、水位が堤防の高さを越えてしまう「越水」や、川の水の圧力で堤防が壊れてしまって水があふれ出る「決壊」などで起こるものです。外水氾濫が起きると、川の周辺の住宅や田畑が広い範囲で浸水してしまいます。たとえば、2015年の関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫や、2020年の令和2年7月豪雨での球磨川の氾濫などが典型的な例です。
もうひとつは「内水氾濫」と呼ばれる氾濫です。雨水は日頃、下水道や排水路を通じて川へ流されていますが、大雨になると排水しきれなくなることがあります。たとえば、川への排水口の位置よりも川の水位が高ければ、街に降った雨はうまく川に流れていきません。また、短時間に激しい大雨が降れば、下水道や排水路などからの水の排出スピードが追いつきません。このように川自体から水があふれるのではなく、街中の排水溝やマンホールなどから水があふれでることを内水氾濫と言います。特に都市部では内水氾濫による浸水が発生しやすいです。2019年の台風19号の多摩川下流の浸水、そして2023年7月の秋田市の浸水は内水氾濫の典型的な例です。
大雨が降ったときに命を守るには
まずは大雨に降られたときに、危険を避ける行動ができますか。間違った答えを選ばないでゴールにたどり着けるよう、サバイバルクイズに挑戦してみて。クイズに続いて、大雨のときに注意したいことをまとめているので、しっかり危ないポイントを確認しましょう。
大雨による浸水リスクが高い場所は、各自治体などがつくっているハザードマップに示されています。ハザードマップの浸水想定区域に住んでいる場合、大雨が降ったら、実際に氾濫が起きるなど危険な状況になる前に避難所へ避難することが、いちばんよいです。ただし、すでに街が水につかっていて外に出たり移動したりすること自体が危ない状況では、自宅といった建物の2階以上の場所へ避難する「垂直避難」をしましょう。
意外と落とし穴なのが、地下街です。雨が降っていても地下にいると気づきにくい上に、路面にたまった水は地下にも流れてきて水浸しになってしまいます。急な大雨が降ってきた場合は、すみやかに地上に出るようにしましょう。
もうひとつ、大雨で注意してほしい場所が「アンダーパス」と呼ばれる場所です。これは、鉄道の線路や道路などと交差するために、道路が下に潜り込んでいる場所のことなのですが、大雨ですぐに水が溜まります。車でうっかり水のたまったアンダーパスに突っ込んでしまうと、車が動かなくなり、たまった水の水圧でドアや窓ガラスも開かずに車内から脱出できなくなってしまいます。最悪の場合、車の中でおぼれてしまう事故も起きます。アンダーパスの場所もハザードマップに示してあるので、家族といっしょに近所のアンダーパスを確認して、大雨のときは通らないようにしましょう。
いざ道路などが水につかってしまったら、もしかしたら「道路が川みたいで、水遊びできないかな」とワクワクしてしまうお友だちもいるかもしれません。ですが、とても危ないので、決して外に出てはいけません。たとえば、用水路と道路の見分けがつかなくなっていて、うっかり用水路に落ちると流されてしまいます。用水路がないところでも、マンホールの穴に落ちてしまうかもしれません。大雨が降ると、下水道の中に急にたくさんの水が流れ込むことで下水管の中の空気が押しつぶされて圧力が高まり、マンホールのフタが開いてしまうのです。また、下水管などからあふれ出した水は汚いので、けがをしたら傷口から細菌が入りこみ、感染症にかかってしまう恐れもあります。
いつもは小さな川でも油断大敵
大きな川は水の量が多いので、大雨が降れば危なくなりそうだとイメージしやすいです。一方で、街中を流れる小さな川は、なんとなく大丈夫だろうと思ってしまいがちです。しかし、いつもは小川であっても大雨が降ると急に増水してしまうことがあります。たとえば、神戸市内を流れる都賀川では2008年に10分間で水位が1.34m上がり、5人が流されてしまいました。もし、自分のいる場所で雨が降っていなくても、上流で大雨が降れば急に水位が上昇することがあります。天気予報をチェックし、川のそばに氾濫の危険を知らせてくれる回転灯が鳴ったらすぐに川から離れてください。回転灯がなくても、水が濁ってくるなど増水のサインに敏感になり、危なそうならすぐに川から離れるようにしましょう。もし、川のそばにいて雨が降ってきた場合は、決して橋の下で雨宿りをしないでください。増水した川で流されやすくなります。
暖かい時期には、川のそばでキャンプやバーベキューをしたり、ついでに川の中に入って遊んだりすることも多いでしょう。しかし、上流でのゲリラ豪雨などで急に増水して危険な状況になることもあります。川に入る場合は必ずライフジャケットを着用するようにしましょう。安全対策を万全にして、川遊びを楽しんでください。