こたえ:雲から放出された電気の通り道が高温になるからです。
「かみなり」とひとくちに言っても、光だけの「雷光」「稲妻」と、ゴロゴロという音だけの「雷鳴」、光と音が観測される「雷電」があります1)。このうち雷鳴は、電気の熱によって空気がふるえて起きる現象です(関連記事「なぜ、雷はゴロゴロ鳴るの?」)。では、雷光や雷電の光は、どのようなしくみで発生するのでしょうか。
よく知られているように、雷の正体は電気です(関連記事「雷はどのように落ちるの?」)。積乱雲の中で氷晶どうしがぶつかって静電気が発生して、雲の中にとどめておける限界まで電気がたまると、地表などへ電気をにがします。この現象を「放電」とよびます。
放電は約0.001~1秒と短時間ですが、3000~20万A(アンペア)・約1億V(ボルト)という大きなエネルギーが加わり、電気の通り道の周りでは、空気の温度が約3万℃に達します2)。これは、太陽の表面温度の約5倍というたいへんな高温です。ほとんどの物質は、500℃を超えるとくすんだ赤色に光りはじめ、温度が高くなるにつれて明るくなり、1300℃を超えると赤色から白色へ、その後は青色へと変化する性質を持ちます。このように、高温になると色や明るさが変化するのは、空気も同じ。約3万℃になった放電路の周りの空気は、青白くまぶしい光を発するのです※。
雷が光るのは一瞬なのでじっくり観察する機会はあまりないかもしれませんが、雷電を撮影した映像や写真を見ると、光が雲から地表へ、ジグザグと進んでいるのが分かります。なぜ、電気は一直線に進めないのでしょうか。
電気はふつう、空気の中を進むことができません。ですから、雷は空気をつきやぶって無理やり進んでいくことになります。このとき、電気は少しでも通りやすい所を選びながら、進んでは止まり、また進んでは止まり、をくり返しながら進むため、通り道はジグザグになるというわけです。
雷にとって通りやすいのは、空気がうすい所や湿度の高い所です3)。「空気がうすい」とは、電気が通るのにじゃまになる窒素や酸素の分子が少ない状態。湿度が高ければ、水にふくまれるカルシウムや金属物質によって電気が通りやすくなります。一見すると、ジグザグ進むのは遠回りのようですが、実は最も速く地表へたどり着ける経路なのです。
※ 雷電がオレンジ色や赤色、むらさき色に見えることもあります。これは、光が人の目に届くまでに空気中のちりや水てきなどにぶつかって散乱するからです。散乱する量が多ければ赤色っぽく、散乱が少なければ白色や青色に見えます。
記事公開:2022年4月
参考資料
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。