「夕焼けは晴れ、朝焼けは雨」など、世の中には天気にまつわるさまざまな言い伝えがあります。昔から人々は空を見ながら天気予報をおこなってきました。なかには「〇〇山にこんな形の雲がかかったら天気が荒れる」など、その地方ならではの言い伝えもあり、農業や漁業など自然を相手に仕事をする人々の間では今でも参考にされています。こういった言い伝えは、決してデタラメなものではなく、実はきちんと科学的な根拠をもって説明できるのです。では、よくある言い伝えについて、なぜそうなるのかの仕組みを解説していきます。
空の雲や風向き、あるいは虫や鳥といった生き物の行動を見て、これから天気がどう変化するか予想することを「観天望気」といいます。科学知識が現代ほど発展していない時代から、経験や言い伝えをもとに判断していました。
太陽や月に「かさ」がかかると天気は下り坂
太陽や月の周りを丸い光の輪が取り囲んでいることがあります。この輪のことを「かさ」や「ハロ」といいます。これが出るのは、空に薄い雲が広がっているとき。そしてこの薄い雲は、低気圧が近づいているときに出現します。低気圧が近づくにつれてこの薄い雲は次第に分厚くなって、最後には雨が降るのです。かさが出てからだいたい1~2日後に雨が降ることが多いです。
注意:太陽は直接見ないようにしましょう
飛行機雲がなかなか消えないと天気は下り坂
飛行機が飛んでいるとき、たまに飛行機のお尻から飛行機雲が出ていることがあります。この飛行機雲がすぐに消えるのではなく、太くにじんでいつまでも空に残っているのであれば、天気は下り坂です。飛行機雲は、飛行機の排気ガスの水蒸気が水や氷に変わるとできるものです。空気中の水蒸気の量が多ければ飛行機雲ができやすくなり、なかなか消えません。つまり、このような消えにくい飛行機雲が出たときは、数日後に雨が降ることがあります。
山頂に笠のような雲が現れると次の日は雨
富士山を代表として、独立した山の頂上に笠のような形の雲がかかることがあります。湿った空気が山にぶつかり、強制的に上昇するときに雲ができ、その空気が山を越えて下降すると雲が消えるので、笠のような形になるのです。山に低気圧が近づいていて、そこから絶え間なく湿った風が山に吹きつけると雲ができるというわけです。ですので、山頂に笠のような雲を見たら、雨が近づいているといえるのです。
夕焼けは晴れ、朝焼けは雨(春と秋)
これはよく耳にする言い伝えですが、「時と場合による」と覚えておきましょう。まず、この言い伝えが当たるのは、春や秋が多いです。春や秋は、西から東へと低気圧が移動していきます。朝焼けが見られるということは、東の空が晴れているということで、それは西のほうから次の低気圧が近づいてきて、これから天気が下り坂になりそうということでもあります。逆に、夕焼けが見られるときは、西のほうが晴れているので、次の日は晴れる可能性が高くなります。
ただ、夕焼けや朝焼けの空の色には注意が必要です。夕焼けとひとくちにいっても、オレンジ色や黄色、紫色やピンク色などさまざまです。オレンジ色っぽい夕焼けであれば、翌日は晴れることが多いのですが、もし夕焼け空が毒々しいほど真っ赤だった場合は、もしかしたら翌日は天気が荒れるかもしれません。なぜかというと、空気中に水蒸気が多いと、太陽の赤い光が強く散乱されて、鮮やかな赤色に染まるからです。こういうときは、台風や低気圧が近づいているサインなのです。