万博で注目!空飛ぶクルマが飛ぶワケ 自動車や航空機にない特徴は?
「空飛ぶクルマ」といえば、マンガや小説の物語に登場する夢の乗り物でした。それが実際に街を飛び回る時代が、すぐそこまで来ています。2025年4月13日(日)に開幕し、10月13日(月)まで開催される『大阪・関西万博』で、世界中の先端技術などを集めた展示の目玉のひとつが、空飛ぶクルマの飛行の実演です。どのように空飛ぶクルマの夢が現実になったのか、その特徴や仕組みを、実際に万博会場でも実演が行われる日本の開発会社SkyDriveの機体を例に紹介します。
空飛ぶクルマの3つの特徴
空飛ぶクルマと聞いて、どんなものをイメージしますか? 例えば、自動車がそのまま宙に浮くようなものでしょうか。あるいは自動車に飛行機のような翼がついたようなものかもしれません。


実際のSkyDriveの機体は、人が乗るための卵のような部分と、それを囲うフレームに12枚のプロペラがついたもの。縦幅と横幅が11mほど、高さ3mで、大きなドローンといった見た目です。
①電動:電気で動く
②垂直離着陸:その場で真上に飛びたち、真下に降りることができる
③無操縦者:パイロットがいらない自動運転ができる
という3つの特徴を持った航空機の仲間です。
プロペラで空気 を下向 きに押 す反動 で浮 き上 がる

簡単に説明すると、傾いた羽があるプロペラを回して、空気を下向きに押し、その反動で浮き上がる力をもらっています。プロペラが付いていて、見た目も似ているドローンやヘリコプターと同じ考え方です。
また、プロペラが回るとその下面に比べて上面の空気の圧力が小さくなり、圧力が小さい方へ、つまり上へと吸い寄せられる力が働きます。これは飛行機が飛ぶときに翼がうみだす力と同じです。(関連記事:飛行機は、なぜ空を飛べるの?)
プロペラが空気から受ける反動は「作用・反作用の法則」と呼ばれ、「AがBを押すとき(作用)、同じ大きさの逆向きの力でBがAを押している(反作用)」というルールです。例えば、壁の前に立って、壁を手で押すと、自分の体が後ろに動きます。壁を押したとき、同じ力で壁から押されているからです。
空飛ぶクルマのよいところ
空飛ぶクルマは、新しい移動手段として世界中で注目されています。スマートフォンに使われるセンサーや自動車の自動運転技術が進歩したことをいかして、ここ10年ほどで急速に開発が進められてきました。それは、先ほどあげた特徴などを理由として、自動車と航空機に比べてよいところがあるからです。
道路不要で渋滞しないスムーズな移動ができる!

その名前の通り、空を飛ぶので、交通渋滞にまきこまれることも信号待ちもなく、快適に移動できます。道路や線路はいらず、目的地との間に海や山、ビルがあっても飛び越えていけます。そのうえ、出発したり到着したりするスペースを整備するだけですむ点もメリットです。
二酸化炭素を出さない電力駆動で環境にもやさしい!

ガソリンなどを燃やすエンジンではなく、電気を使ってモーターを動かすので、二酸化炭素を出しません。さらに音も静かで、ヘリコプターの3分の1以下の騒音しか出しません。将来、たくさんの空飛ぶクルマが街を飛び回ることになったとき、うるさすぎないことは大切です。
垂直に動けて街のどこにでも離着陸場がつくれる!

真上に飛んで真下に降りられるので、長い滑走路も、大きな空港もいらず、公園や駐車場などの少しのスペースがあれば、どこにでも離着陸場がつくれます。上空30mに直径500mほどのスペースが必要とされるヘリコプターの離発着場と比べても、とても小さなスペースで十分です。また、機体の重さもヘリコプターの半分以下で、ビルの屋上なども離発着場として簡単に活用できます。
ヘリコプターも真上に飛んで真下に降りることはできますが、決してその動きは得意でなく、通常は斜めに動きながら離着陸します。
自動運転でより安全に、いつでも、誰でも利用できる!

SkyDriveの機体の操縦方法はまだ公表されていません。ですが、飛ぶ仕組みが同じドローンは、小さなものならば、おもちゃ売り場で手に入るように、慣れてしまえば子どもでも操縦できます。例えば、航空機の操縦免許を持っている人は珍しいですが、自動車の運転免許を持っている人は大勢います。将来的には、空飛ぶクルマも、自動車と同じくらいの簡単さで操縦できるようになると期待されます。
また自動運転が認められれば、操縦技術がなくても、より安全に、いつでも、誰でも利用できる世の中へつながります。
ほかにも機体の構造がシンプルで必要な部品が少なく、製造費や整備費も自動車くらいに安くすみます。このように航空機でありながら、自動車くらいに身近で手軽な乗り物になるため「空飛ぶクルマ」という呼び方がされています。
2026年度には空飛ぶタクシーが登場?
空飛ぶクルマの開発は、技術のことから、手続きのことへ移っていて、現在、安全性などを証明する飛行試験などを繰り返している段階です。そして2026年度には、実際に空飛ぶタクシーが登場しそうです。まずはパイロットが操縦して、お客を乗せて運ぶ方法からスタートする想定。2030年代には、パイロットなしの自動操縦でお客を運ぶ方法に進化することが目指されています。
空飛ぶタクシーのほかにも、観光地を空から眺める遊覧用、救急車に代わる救急救命用としても活用が期待されます。さらには、いつか「一家に一台」という時代もくるかもしれません。これからの関連ニュースに注目です。
取材協力:株式会社SkyDrive
2018年設立。日本で 「空飛ぶクルマ」の開発、「ドローンサービス」の提供をしています。2025年の大阪・関西万博における空飛ぶクルマの運航事業者のひとつ。
ホームページ=https://skydrive2020.com/