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塾と学校で勉強ばかりの娘が心配/教えて! 陰山先生【第3回】

塾と学校で勉強ばかりの娘が心配/教えて! 陰山先生【第3回】

小学校のころには読書が大好きだった娘ですが、忙しい生活に追われて最近では本を読んでいる姿も見かけなくなりました。この時期には、読書やさまざまな体験を通して、知見を広め、人間性を磨くことこそ大事なのではないかと思いながらも、かといって勉強をしなくなると高校受験が心配で、親として矛盾を解決することができずにいます。どうすればいいでしょうか。

質問

こんにちは。中学2年の娘を持つ母です。
娘は中1から塾に通っています。火、木、土曜日の午後7:20~9:50です。
塾の日は家に帰ってくるのが午後10時を回ります。

これに、定期的な模試や春期、夏期などの特別講習が組まれます。また、塾からも宿題が出るのですが、これが少ないとはいえない量です。
普段の学校の宿題、部活、定期試験、学校行事などをこなしながらなので、空いている時間は四六時中勉強をしている感じです。そのこと自体は悪いことではないのかもしれませんが、どことなく追い詰められて息苦しいように見えてしまいます。

小学校のころには読書が大好きだった娘ですが、忙しい生活に追われて最近では本を読んでいる姿も見かけなくなりました。
この時期には、読書やさまざまな体験を通して、知見を広め、人間性を磨くことこそ大事なのではないかと思いながらも、かといって勉強をしなくなると高校受験が心配で、親として矛盾を解決することができずにいます。
どうすればいいでしょうか。

回答

最近の中学生の状況では、このようなことはわりと多い気はします。しかし、子どもたちの理想からすれば、相当な負担になっていることでしょう。最近は、進学実績を上げようと、学校も塾も必死になっていますので、このように膨大な学習を課すことが当たり前になってきているように思います。このことは、わたしも大変心配しており、適切な助言をする必要性を感じました。

まず、今の状況が厳しいと思っているのなら、他の人が同じ量の勉強をしていたとしても、自分の判断で変えるべきです。

「みんながやっているから」という理由で続けていると、みんなが悪くなっているのに、それに気づかないことがあります。それは、みんなが悪い状況なのでそのことがよく見えないからです。それでは、子どもたちの閉塞感が募り、やがてそれが個人や集団のマイナスにつながることを感じざるをえません。自分にとって一体何が必要なのか。そのことをしっかり考える必要があると思います。

高校入試は避けて通れません。まずは志望校の選択と、それに至る勉強等の道筋。これをはっきりさせることが必要でしょう。内申書等において学校での学習や生活面が評価されるのであれば、それを軽視することはできません。そうなってくると調整するのは、塾と本番の試験での対策になってきます。わたしが一番言いたいのは、多くの勉強をさせれば子どもたちの成績が伸びるものではないということです。

子どもたちにはある一定の傾向が見られても、それぞれの長所や弱点、学力のレベルなどは、一人ひとり違います。大切なのは、もっとも効果的な学習をしなければいけないということです。決してたくさん勉強すればいいということはなく、むしろ量が多いために子どもたちが集中して学習できず、学習効果を下げてしまうというのは、よくあることです。たとえたくさんの問題を解いていても、その中で子どもの学力をつける有効な問題は、実はそれほど多くはありません。

わたしの教材が世の中で評価されているのは、もっとも効果的なところに、効果的な教材を提供しているからだろうと思います。ですから、塾や学校の宿題の内容についても、自分自身にとって何がプラスになるのかをしっかり考えてください。

わたしの次女は、東京大学に進学しました。彼女もいろいろな活動があり、勉強も大変でしたが、その中で自分の苦手分野にだけに絞って塾通いをするようにしていました。自分の学力の何が足りないのかを、はっきり自覚していたからこそできることです。そのように、入試の傾向と対策を探りながら、何をどのように高めていけばいいのかを見極めましょう。それはなかなか大変なことかもしれませんが、これからの世の中を生きていくとき、自分自身をどのように活かしていくかは、今後絶えず考えていくべき課題です。

自分の自由に使える時間をより効果的に使う方法は何なのか――これを考えてみてください。それから、スケジュールの中に休みを必ず入れてください。

質問者さんのお子さんのスケジュールであれば、疲労が相当に蓄積されることが心配されます。心身の疲れは、学校に行けなくなるなどの問題を引き起こす場合があります。注意しなければいけないのは、真面目な子ほど休むということに、ためらいや罪悪感を持ち、がんばりすぎてしまうこと。むしろ自分を活かすために、積極的に休みをとるという考えも身につけさせた方がいいと思います。そして、読書や生活体験という時間も、しっかり確保できるように、1年間を見通した計画を作ってあげてください。

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陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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