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中学受験で深夜まで勉強する娘に夫が怒り/教えて! 陰山先生【第7回】

中学受験で深夜まで勉強する娘に夫が怒り/教えて! 陰山先生【第7回】

小6の娘の進学について、夫と娘の意見が割れて困っています。夫は、受験してもいいが、夜中まで勉強しなければいけないのなら受験する必要はない、という意見。娘は、どうしても志望している中学へ行きたい。そのためには塾へ通い、学校と塾の宿題をこなさなければいけないと思っています。夫の意見も娘の気持ちもわかるだけに、どうしたらいいのかわかりません。

質問

小6の娘の進学について、夫と娘の意見が割れて困っています。

娘は小4から塾に通っています。最初は中学受験を考えていたわけではないのですが、塾に通ううちに、受験したいと娘が言い出しました。
夫もそれに対して何も意見を言わなかったので、それでいいのだと思っていました。

先日、娘が塾の宿題を夜の12時過ぎまでかかってやっていたら、残業で遅く帰ってきた夫がそれを見て「なんでこんな時間まで勉強しているんだ!」と怒り出したのです。

6年生になってから、塾の時間を増やしたこともあり、12時頃まで勉強をするようになりました。それに対して夫は、ずっと不満だったようで、「小学生がこんな時間まで勉強しているなんておかしい。そこまでしないといけないなら、中学受験なんてしなくていい」というのです。

でも、娘は今までがんばってきて、難関といわれている中学を受けようとしています。
ここまでがんばってきたのに、あきらめてしまうことはできません。
夫に怒られて娘は泣きだしてしまい、それ以来、ふたりは険悪なムードになっています。

夫は、受験してもいいが、夜中まで勉強しなければいけないのなら受験する必要はない、という意見。
娘は、どうしても志望している中学へ行きたい。そのためには塾へ通い、学校と塾の宿題をこなさなければいけないと思っています。
ただ、塾から帰ってくるのが9時頃で、それからお風呂に入って宿題をすると、どうしても12時くらいまでかかってしまいます。

夫の意見も娘の気持ちもわかるだけに、どうしたらいいのかわかりません。

回答

おそらく、塾に通い始めたときに目標をはっきりさせず、途中から中学受験を考えたため、家族の中で意見がわかれてきた、というのが事の発端だろうと思います。

娘さんの考えていること、お父さんが考えていること、どちらの考え方も正しいと思います。
しかし、わたし個人としては、お父さんの考え方に近いです。

というのも、子どもにとっては生活習慣を身につけることがもっとも重要なことであり、とりわけ睡眠の習慣は、小学校時代においてなにより重要だと考えているからです。

ですから、生活習慣を崩さなければ合格できないような中学受験になってしまうようでは、本末転倒だと言わざるをえません。
ひょっとすると、もっと早くから中学受験の準備をスタートしていれば、まだよかったのかもしれません。

しかし、早く受験の準備をしたからといって、そう理想的に事が進むわけではありません。
また、今は6年生の秋です。入試本番までのほんの数カ月の間、どうするかということを考えるのが現実的でしょう。

まずはお父さんの意見を十分尊重して、睡眠の重要性を家族で確認してほしいと思います。宿題に翻弄され、際限なく遅くまで起きていることはやめ、どんなに遅くとも12時を超えて勉強しないこと。またその結果、中学受験で成功しなくても、睡眠習慣を大きく崩すことがなかったということの大切さを確認しておいてほしいのです。

夜中の12時過ぎまで起きて勉強をして目標を達成したという事例は、わたしの周りでもあまり聞きません。むしろしっかり眠り、勉強時間の集中度を上げるという方法をとった人の方が伸びています。

なぜ睡眠が重要かと言うと、その日に勉強したことは、成長ホルモンによって、まず短期記憶に蓄えられ、そして夜眠りにつくと、何回か断続的にやってくる眠りの浅い状態のとき、長期記憶として脳に定着されていくからです。

つまり、いくら勉強しても、寝ている時間の量や、時間帯が適切でなければ、前日に勉強したことの意味がなくなってしまうのです。

それ以上にわたしが恐れるのは、12時過ぎまで勉強をしてがんばったのに、志望校に落ちてしまった場合の後々の影響です。努力不足で失敗したのなら、次にがんばればいいと思えますが、一生懸命努力したのに結果が悪かったのでは、自分の能力に対する信頼や自信がなくなってしまいます。これは、その後の学習に大きなマイナス効果を与えることにもなります。

確かに、塾から指示されたことをやるのは大切かもしれませんが、それが本当に合格に結びつくかは、勉強のやり方によっても大きく違ってきます。勉強時間を増やすことが、必ずしも学力向上につながるものではありません。

わたし自身、子どもたちの指導をしていて感じたのは、3時間を超えて勉強をしていた子どもの場合、成績が下がってくるということがよくありました。また逆に、睡眠をたくさんとり過ぎた場合も成績がよいということはありません。よって、適切な学習時間と睡眠時間が大切なのです。

たとえ多くの宿題が塾から出されていたとしても、それを11時まで、どんなに遅くとも12時までにはやり終える集中力をつけることが大切であり、その量をこなすために睡眠時間を削ることは、マイナスにしかなりません。

同じ宿題をするにしても、勉強の仕方や時間の使い方、またその習慣で勉強の意味は大きく異なってくることを理解してほしいと思います。

とにかく、ご家族で生活習慣と学習習慣の割り振りをしっかり考え、その時々でお子さんにあったやり方を、家族で作り上げていくことが大切なのではないでしょうか。

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 陰山英男(かげやまひでお)

 陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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