メニュー閉じる

小1の息子に過度な期待をかけ過ぎだと言われ……/教えて! 陰山先生【第9回】

小1の息子に過度な期待をかけ過ぎだと言われ……/教えて! 陰山先生【第9回】

学校の先生から「子どもに多くを望み過ぎて追い詰めているのではないか」と言われ、悩んでいます。わたしは息子に「できる子」になってもらいたいとがんばってきたのですが、距離の取り方がわからなくなってしまいました。どうすれば良いのでしょうか?

質問

学校の先生から「子どもに多くを望み過ぎて追い詰めているのではないか」と言われ、悩んでいます。小1の息子は、昨年、小学校受験に挑みましたが失敗してしまい、今は地元の公立小学校に通っています。

幼稚園のころは周りの子と比べてハキハキとしたところがない息子が残念で、夫からもわたしの教育の仕方が悪いのではないかと言われ、自分を責め続けていました。その結果、息子に厳しく当たってしまっていることがあり、あとから反省することも多くありました。

もともと息子は算数は得意なので、小学校に入れば伸びるのではないかと期待していたのですが、そうでもありませんでした。担任の先生に相談したところ、わたしが過度な期待をかけすぎているから息子が委縮しているのではないかと指摘されました。

わたしは息子に「できる子」になってもらいたいとがんばってきたのですが、距離の取り方がわからなくなってしまいました。どうすれば良いのでしょうか?

回答

小学校受験に失敗してからの学習は、とても気を遣うところですね。わたしも小学校受験に関わる身として、いつも気にすることです。

わたしは、受験する保護者の方々に、「合否は運とご縁の問題もあります。そして重要なのは、小学校受験で親子関係がより良いものになり、親子で楽しみながら取り組んでいただくことです」と言ってきました。

できる子になってほしいという願いはわかります。しかし、あるべき姿をイメージし、それをものさしとして子どもの現実を見れば、子どものできないところばかりが気になり、そこを注意するばかりの指導になってしまいがちです。

まず、小学校受験の失敗に際して、お父さんもお母さんも自分を責めるのはやめてください。百害はあっても1つの利点もありませんから。

子どもには誰しも伸びようとする力があり、また、何かしらの工夫をしているものです。それを見つけてあげてください。もしそれがないと思うのであれば、その子の現実が見えていないということであり、直すべきはその観察力なのです。

学校の宿題をしているときでも、何か課題を与えてやらせているときでも、それをまずやろうとしていることを認め、ほめてあげてください。宿題をするのは、あたり前と思われるかもしれませんが、子どもにとっては、遊びたい気持ちをがまんして取り組んでいます。子どもが、宿題や何かの課題に取り組もうとすること、それ自体がとても価値があることなのです。

大人でも目標をだれかから与えられ、さらに成果を求められれば、だれでも萎縮してしまいます。そうではなく、あたり前と思っていることが実はあたり前ではなく、その子にとっては大きな可能性をもった営みであると、きちんと見つめて欲しいのです。

ほめると言っても、無理をしておだてるのではありません。そもそも受験をしなくても行ける公立小学校があるにもかかわらず、親の願いにそって小学校受験にチャレンジしただけでも、それはとても大きな一歩を歩んでいるわけなのです。そのことの価値を、おおいに認めてあげることからはじめてはどうでしょうか。

だれかあなたの知り合いに、子どものころに小学校受験をして失敗した方がいたとします。その方は、大人になった今も、そのことでクヨクヨしているでしょうか。もしそうであれば、むしろそれは不思議なことと思わないでしょうか。

保護者にとって入試結果は、最大の関心事かもしれません。しかし、実社会に出て活躍している多くの人の体験談を聞いてみると、入試に合格することが決定的に重要であったと言う話はあまり聞くことはありません。

入試は、極めて狭い世界で優劣をつけるものですから、当事者にとっては、とても大きな意味があるように感じられます。しかし部外者から見れば、とるにたらない問題なのです。そのことを考えれば、親が受験させたことも落ちたことも一切気にする必要はありません。

親が受験のことを気にしてしまえば、自分の失敗が親を悲しませていると子どもは思ってしまい、一層、委縮することになるのです。今、子どもが立ち向かっている課題に対して精一杯の応援をしていく。それだけでいいはずです。そして、子どもの進歩や成長を1つ見つければ、大きく喜んでください。その姿を見て、子どもはまた次の一歩を踏み出せるはずです。

お子さんは、算数が得意とのことですが、とくにどこが得意なのかを親も考え、その得意なところがより一層得意になるように導いていくことを大切にしてください。

親子そろって自信を失っているのかもしれませんね。しかし、それに最も有効なのは、たとえ小さくても確実な成長です。

お子さんの学習のようすを横目で見ながら、ほんの一瞬の成長も見逃すことなく、親子で楽しみながら学習に取り組んでいってほしいと思います。

関連記事

【第1回】つい他の子と比較してしまう
【第2回】テレビとゲームを優先し、宿題を後まわしにする
【第3回】塾と学校で勉強ばかりの娘が心配
【第4回】本に夢中で、早寝早起きができない息子
【第5回】器用なのに、長く続かない
【第6回】小1で勉強につまずいてしまった
【第7回】中学受験で深夜まで勉強する娘に夫が怒り
【第8回】先生に反抗して、宿題をしない息子
【第10回】テストで0点を取ったのにケロッとしている娘
シリーズ「教えて! 陰山先生」第1回から第10回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第11回から第20回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第21回から第34回(最終回)まとめ

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

PAGETOP