メニュー閉じる

テストで0点を取ったのにケロッとしている娘/教えて! 陰山先生【第10回】

テストで0点を取ったのにケロッとしている娘/教えて! 陰山先生【第10回】

小2の娘が0点を取ってきたときの対処の仕方が、しかるのはどうかと思っていたのですが、「わかっているけど間違っちゃったんだよね」と失敗を受け入れるのではなく、「できていない!」としかり、反省させるべきだったのでしょうか?

質問

小2の娘が0点を取ってきたときの対処の仕方が、これでよかったのかを教えてください。

娘はとくに塾にも通っていないし通信教育もやっていませんが、テストでは国語も算数も80点から100点を取っているし、通知表の評価も悪くないので安心していました。

ところが先日、算数のテストではじめて0点を取ってきたのでびっくりしてしまいました。娘といっしょに答案を見直したところ、問題の解き方はわかっているけれども、問題文を読み飛ばして「前のテストの時と同じような問題だろう」と思って勢いで解いてしまっていたことが判明しました。

そのときは「きちんと問題を読んで解かないとだめだよ」と言って、いっしょに問題を読んで解きなおしをさせたのですが、そもそも0点を取ったことにまるでショックを受けていない娘の姿に不安を感じています。

実際、その後も明らかに「答えがわからないのではなく、問題を読めていないから不正解」ということが頻繁に起こるようになりました。

最初はテストで0点を取ったことをしかるのはどうかと思っていたのですが、「わかっているけど間違っちゃったんだよね」と失敗を受け入れるのではなく、「できていない!」としかり、反省させるべきだったのでしょうか?

回答

テストで0点をとっているのに、それほど気にしていないということに少し驚いています。

しかし、大きく落ち込み、勉強に対してひどいコンプレックスを持つよりは、まだ良いのかもしれません。

子どもたちは、学習の基礎ができていなくても、テストで80点、時には100点がとれることもあります。とくに小学1年生や2年生では問題が簡単で、時間も十分に与えられているため、ある程度の理解があれば得点はとれてしまうのです。

しかし、同じ100点をとったとしても、問題を20分で解いたのか、10分で解いたのかで理解力は決定的に違います。

基礎力が十分に身についていないと、問題が簡単なうちはいいのですが、やがて問題が高度になってくると、単に解く時間がかかるというだけではなく、できないということになっていき、やがては、「答えがわからない」につながってくるのです。

その傾向がわかりやすいのは計算です。

百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)のような基礎的な計算で、たとえば、8+6の答えが14だとわかっていても、答えを出すのに2秒や3秒かかるのでは、中学年になってから、計算問題を正しく解くことは難しくなってきます。

3ケタ×3ケタの計算をしようと思えば、何十回も足し算や九九をくりかえさなければいけないわけで、基礎的な計算に時間がかかってしまうと、そのうち何をやっているのかわからなくなってしまうのです。

この「問題の解き方はわかっているけれど、読み飛ばしてしまい、間違えてしまう」のは、問題文をきちんと読めば解けるということでは決してありません。

娘さんの場合、小学2年生という学年を考えると、くり上がりやくり下がりという計算が十分に身についていないのではないかと思われます。

小学2年生であれば、百ます計算の足し算や引き算、かけ算は、どんなに遅くとも3分以内にできなければ、3年生以降の筆算ではいろいろなつまずきが起きてきてしまうのです。

文章題の場合も、問題文を読んだ瞬間に数と数の組み合わせがイメージできなければ解くことは難しいでしょう。

計算とは、数の世界の言葉のようなものであり、そこに書かれている数字の関わりが、足し算なのか引き算なのかイメージできなければ、当然解くことはできません。

求められている計算が、足すのか引くのかということが瞬間的にわかるためには、足し算や引き算がさっと解ける能力を身につけなければいけないのです。

ただ、小学2年生の段階では、足し算と引き算、九九ができれば、基本的なものはできるようになるはずです。ですから、百ます計算を、どんなに遅くても2分30秒以内、できれば2分以内にできるようにトレーニングしてみてください。

そのうえで、短時間で取り組める文章題に特化したドリルなどを一定期間、毎日集中してやることによって、文章題を解いていくコツもつかめてくると思います。

0点をとったことをしかる必要はありません。しかし、なぜ0点を取ってしまったのかを考えたとき、大きな課題を抱えていると思っても間違いありません。

重要なのはしかるることではなく、問題点を明らかにし、その問題点をきちんと修正していく構えを身につけさせることです。

百ます計算の習得は、小学2年生でも2~3カ月あれば十分ですが、小学2年生にとって2~3カ月はかなり長い期間とも言えます。少しずつ、しかしひるむことなく、毎日基礎計算をすることによって、その問題点は解決していくことができるでしょう。

関連記事

【第1回】つい他の子と比較してしまう
【第2回】テレビとゲームを優先し、宿題を後まわしにする
【第3回】塾と学校で勉強ばかりの娘が心配
【第4回】本に夢中で、早寝早起きができない息子
【第5回】器用なのに、長く続かない
【第6回】小1で勉強につまずいてしまった
【第7回】中学受験で深夜まで勉強する娘に夫が怒り
【第8回】先生に反抗して、宿題をしない息子
【第9回】小1の息子に過度な期待をかけ過ぎだと言われ……
【第11回】約束を守らずゲームをし続ける息子
シリーズ「教えて! 陰山先生」第1回から第10回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第11回から第20回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第21回から第34回(最終回)まとめ

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

PAGETOP