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小5娘の反抗期/教えて! 陰山先生【第14回】

小5娘の反抗期/教えて! 陰山先生【第14回】

この春、小5になった娘。厳しく叱ってもその倍言い返してくるので、どう対処していいのかわかりません

質問

この春、小5になった娘のことで悩んでいます。

ひとりっ子なので甘やかしてはいけないと、娘が小さいころから厳しくしつけてきました。あいさつなどの礼儀はもちろん、お手伝いも家事全般をさせ、とくに料理は簡単な食事なら、ひとりで作れるようになっています。

成績も運動神経も良く、ハキハキと受け答えをするので、先生からもかわいがられ、いつも友だちと仲良く遊んでいるので、多少の欠点があるものの正直言って「いい子に育っている」と、安心していました。

ところが小4の秋ぐらいから、娘はわたしに口答えをするようになってきました。

たとえば、今までテレビの時間は1日最大2時間と決めていたのですが、外で遊べない日は、学校から帰って来てから寝る直前の夜9時ごろまで見続けていることもあります。注意をすると「なんで? ●●ちゃんの家も、▲▲ちゃんの家も、テレビたくさん観てるよ!」と言い返してきます。それに、お手伝いもほとんどしなくなってしまいました。

わたしが「宿題や勉強をやってからテレビでしょ?」などと小言を言っても「テレビ観てから宿題をやっちゃいけないの? わたし宿題忘れたことないのに!」と、言い返してきます。また最近では、テレビを観ながら宿題をすることが多くなってきました。勉強の時間が以前より減り、通信教育のテキストも最近はほとんどやっていません。

天気のいい日は外へ遊びに行くことが多いのですが、門限の17時半を守らず、18時過ぎに帰ってきます。その都度叱るのですが、ヘリクツを言ってまったく言うことをききません。

小学校の先生に学校でのようすを聞いたところ、とくに問題はなく、真面目にやっているようです。

反抗期なのだとは思うのですが、厳しく叱ってもその倍言い返してくる娘に、どう対処していいのかわかりません。夫は「ほっとけばいい」と言うのですが、わたしはこのままでは成績も落ち、生活面でも悪いほうに流れていってしまうのではないかと心配です。

回答

相談内容を読み終えたとき、「今、お母さんも娘さんもしんどい状態だな」と感じました。

「ひとりっ子なので甘やかしてはいけない」。それは、人間の行動を規制することになります。自我が芽生える4年生ぐらいになってくれば、反発するのはむしろ自然なことだと思います。叱っても言い返してくるのは、健全に成長している証拠です。

娘さんの生活や学習のことを理解しながら、今までのやり方を変え、より望ましい生活とは何なのかを考え、共につくり上げるという気持ちで進めることを基本にすると良いでしょう。

4年生ぐらいまでは、とくに問題もなく学校の評価も高いとのこと。まずはそれを認め、今までのことを、お子さんと振り返ってみると良いと思います。そのあとで、今後どのようにするか考えていきましょう。

たとえば、テレビの視聴時間はなぜ2時間なのか。親がルールを決め、それを子どもが守るのであれば、親の決めたルールは守らなくてはいけないものと指導していることにしかなりません。

子どもが自立するということは、望ましい生き方とは何かを子ども自身が考え、自分で判断をしていくことです。たとえ、テレビの視聴時間は2時間が正しいとしても、それが親の指示によってなされるのであれば、それは子どもの自立にとっては適切とは言えないのです。

仮に1日2時間テレビを観ると、365日×2時間で、1年間で730時間の視聴になります。これは、学校の実学習時間とそれほど違わない時間です。

つまりテレビの視聴時間が2時間を超えるということは、学校で学ぶ時間と同じだけ、テレビの価値観を学習しているとも言えます。果たしてそれで良いのでしょうか。友だちはたくさん観ていると言っても、それは周囲に悪い事例がたくさんあることを意味するとも考えらます。

また、テレビを観ながら学習に取り組むことは、集中力も落ち、学習に対してはマイナスです。学校の学習のようすを確かめながら、どの程度学習していけば良いのかを、いっしょになって考えてあげてください。とにかく重要なのは、望ましい生活をすることの大切さを伝えることです。

得てして、ご質問のようなことが起きるときには、子どもが親に対して、「こうあってほしい」というような願いが言えず、自分を抑えてしまっていることも考えられます。時間をかけ、いろいろな場面を作りながら、その本音の部分をゆっくり聞きだすことが大切だと思います。

また文面から察するに、学級での友だち関係が難しくなっているのではないかと不安に思いました。5年生ぐらいの女の子同士の付き合いはグループ化しやすく、共通の行動パターンをグループ内に求めてくることがよくあります。グループ内で同じテレビ番組を観たり、同じものを集めるようになる。あるいは放課後、グループの友だち同士で遊ぶ。そのことが本人にとって、ひじょうに重要になってきているのではないかと感じました。

学校では、女の子がグループ化していること自体は問題にされません。しかし、この状況が放置されていると、ときとして、いじめ問題に発展する場合もあります。そうした危険性も感じながら、友だち付き合いを一生懸命模索しているのではないかとも思えました。

いずれにしても、今この子にとって大切なのは、生活のあり方や友だちとの関わり方ではないかと思います。

たしかに成績のことは気にはなりますが、子ども同士の人間関係や生活態度があらたまってくれば、成績も落ち着いてきます。

もう一度、子どもの今の生活の実態を、本人やお母さん仲間から聞き出し、本当の問題点がどこにあるかを把握したうえで、十分に子どもの話をきいてあげてください。子どもが思っていること、思いの丈をすべて話してくれれば、そのときから、いろいろなことが良い方向に向かっていくのではないかと思います。

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陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

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