メニュー閉じる

中学受験に失敗し、スマホばかりする息子/教えて! 陰山先生【第15回】

中学受験に失敗し、スマホばかりする息子/教えて! 陰山先生【第15回】

息子は、小6のときに中学受験に失敗し、地元の公立中学へ進学しました。入学当初は張り切っていたのですが、なかなか成績が思うように上がらず、だんだん勉強よりもスマホに時間を割くようなりました。どうしたら息子はスマホの時間を減らし、早寝早起きの生活に戻ることができるでしょうか?

質問

現在中2の息子は、小6のときに中学受験に失敗し、地元の公立中学へ進学しました。
入学当初は「トップクラスの高校に入ってリベンジする!」と張り切っていたのですが、なかなか成績が思うように上がらず、だんだん勉強よりもスマホに時間を割くようなりました。

中1の秋のことです。深夜、こっそりベッドの中で、スマホをいじっていたのを見つけた夫が激怒し、お説教をしたところ、反省しているようだったので「スマホはその日の勉強を終わらせてから、夜10時まで」という約束をし、息子にスマホを返しました。

しかし、今年の1月に夫が単身赴任になると、息子は約束を破るようになりました。最近は、深夜に友だちとSNSで連絡を取ったりしているようで寝るのが遅く、朝は遅刻ギリギリの時間に起きてくるので、朝食を食べずに学校へ行く日もあります。

わたしが注意をしても、生返事しか返ってきません。「夫に叱ってもらおうか」「スマホを取り上げようか」など考えましたが、今の息子にはどれも逆効果という気がします。

このままでは高校受験でリベンジどころか、体調を崩すのではないかと心配です。
どうしたら息子はスマホの時間を減らし、早寝早起きの生活に戻ることができるでしょうか?

回答

全国学力テストの集計では、生活習慣との関連の中で、スマホを使っているほど成績が低下するというデータがあります。これは、どの学年でも例外なく、使う時間が増えるほど成績が落ちてくるというものです。まずそのことをお子さんにも伝えてあげてください。

しかし、このお子さんの場合には、スマホを自粛すれば済むことではないと思います。スマホを使う時間が長くなっているということは、最終的な結果であり、その背景には、大きな問題がいくつもあるように思います。個々の問題に応じた改善をしていく中で、スマホ漬けの問題は改善に向かうと感じています。

まず1つ目、中学校に行って成績が上がらないという事実です。

中学入試の勉強をしていれば、確かに高度な問題が解けたかもしれません。しかしそうした子が、きちんと基礎基本的な学力が定着しているわけではないのです。これは多くの人が誤解している問題です。事実、中高一貫の名門私学で調査をしてみると、基礎的な分数や少数の計算などでもミスが多いようです。

まず、百ます計算(10個の数字がます目の縦横に並び、その数字が交差するところに計算の答えを書きこんでいく学習法)をしてみて、足し算、引き算、かけ算が1分30秒を切り、できれば、1分10秒前後になっているかを確かめてみてください。数学での学習には、それぐらいの基礎的な計算力が必要なのです。もしこうした計算力が整っていないまま中学校の学習をしたとしても、思うように正解を出すことができず、学習に対して苦手意識を強めている危険性があります。

漢字では、小学校レベルの漢字が定着しているかを確かめましょう。ほぼ完ぺきに小学校時代の漢字が読み書きできるようになっていなければ、社会や国語での成績に、大きなマイナス影響を与えているはずです。

2つ目に考えることは、中学入試に失敗したという精神的なケアです。

中学入試に失敗したことに対して、保護者自身がマイナスに評価していないでしょうか。子どもにとって入試の結果がどうであったのかは、実はそれ自体では、それほど大きなマイナスにはなってきません。子どもたちにとって中学入試というものの価値は、子どもたちの生活にとってそれほど大きなものではないからです。

しかし、家族や周囲の人間関係の中でそれを気にする人がいると、そのことによって、本人には重圧に感じることが出てくるのです。そこから生まれる劣等感は、子どもたちの学習に対する積極性をそいでしまい、その結果、成績にもマイナスに働くことがあります。ですから、スマホをとりあげるために父親から叱ってもらうのは、むしろ逆効果になる危険性すらあります。

重要なのは、中学に入学したときのように、トップクラスの高校に入ってリベンジするという前向きな構えをもう一度確かめ、具体的に何をどうしていくのかを明確に計画していかなければいけないということです。

ところが往々にしてこうした場合、どう学習するのかという具体的な計画ではなく、一生懸命がんばるという精神的な目標になってしまいがちです。そうした場合、具体的に成績があがることが難しく、リベンジするという目標がかえって重荷となり、意識としてそこから逃れたいという気持ちが出てきてしまいます。

では、どうすれば成績はまた伸びるのか。そこのところを冷静に考えれば、もっとも学習効果の出やすい朝学習をし、それを効果的にするために夜は早く就寝するとか、そうしたことを自覚的に進める必要が出てきます。こうしたいくつかの課題や知識を、まず保護者自身が学習し、子どもに伝え、子どもの成長が家族の具体的計画に反映していくことが重要です。

今一度、リベンジするという目標と、そのための具体的な手立てについて家族で話し合い、1つ1つ具体的に進めていくことが大切でしょう。

関連記事

【第11回】約束を守らずゲームをし続ける息子
【第12回】小学校5年生の息子の成績を上げたい
【第13回】家で勉強に集中できない
【第14回】小5娘の反抗期
【第16回】「頭が痛い」と学校を休もうとする小1女子
シリーズ「教えて! 陰山先生」第1回から第10回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第11回から第20回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第21回から第34回(最終回)まとめ

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

PAGETOP