メニュー閉じる

「頭が痛い」と学校を休もうとする小1女子/教えて! 陰山先生【第16回】

「頭が痛い」と学校を休もうとする小1女子/教えて! 陰山先生【第16回】

「頭が痛い」と学校を休もうとする娘はどうしたら学校生活を楽しく過ごすことができるでしょうか。親として何をすべきなのか教えてください。

質問

小1の娘が、5月ごろから「頭が痛い」ということが多くなり、困っています。

小学校にこの春入学し、4月までは問題なく通っていたのですが、5月のゴールデンウィーク明けごろから、「頭が痛いから休みたい」と言うことが何度かありました。
学校に行ってからも「頭が痛い」と、保健室で休ませてもらうこともあるようです。

先日も朝「頭が痛い」というので、学校に電話を入れると、担任の先生から
「3時間目は図工で、4時間目は体育なので、もし元気になったら来てください」と言われ、それを娘に伝えました。

するとしばらくしてから「学校に行く」と言って、3時間目から学校へ行きました。
娘は病気ではなく、どうも心因性の頭痛なのではないかと思うのです。

娘に話を聞くと
「担任の〇〇先生(50代・女性)が、(一方的に)ガミガミと怒るのがイヤ」
「勉強がつまらない」
「同じクラスの△△ちゃんがじっと座っていなくて、授業に集中できない」
「わたしもずっとイスに座っているのがイヤだけど、がまんしている」
「体育や図工は好き」
「友だちと遊ぶ時間は好き」
ということでした。

担任の先生は娘の頭痛の原因は「勉強がイヤだから」だと思っているようですが、「ガミガミ一方的に怒る」先生に、娘が心を開けないのも一因なのではないかと思っています。

でも娘が勉強をイヤだと思っているのも本当で、家での宿題にも四苦八苦しています。字も汚いので、注意するのですが、きれいに書こうという意思がありません。授業は、保育園のときと同じように過ごせる「体育」や「図工」の時間だけ好きなようです。

娘はどうしたら学校生活を楽しく過ごすことができるでしょうか。親として何をすべきなのか教えてください。

回答

文部科学省の統計では、ここ23年は安定していた子どもたちの不登校が増えているようです。また、従来の傾向と違うのは、小学校の低学年からの不登校が1つの特色になってきています。娘さんの場合も、そうした兆候が出てきているのかもしれません。

しかし、ゴールデンウィーク明けごろから学校がおっくうになるのは、決して一部の子どもだけではなく、多くの子どもが経験するものです。

春休みをゆっくりと過ごし、4月から新学年がスタートし、すぐにゴールデンウィークになります。うまくいきかけた学校生活が、ゴールデンウィークによって崩れ、勉強も本格的に始まるゴールデンウィーク明けが重く感じられるのでしょう。

 

考えなければいけないことは、どこにその子の課題があるのかということです。

まず1つは、担任の先生への思いです。
一方的に怒っている先生だと、学校そのものが面白くなくなりますし、勉強もつまらなくなるのもわかります。

また、クラスの子がじっと座っていないことと、先生が怒ることにはおそらく関係があり、落ち着いた授業になっていないのでしょう。それらが長く続くと耐えられなくなるのもわかるような気がします。

まずは、担任の先生に相談するのがいいでしょう。小学校のスタート時点なので、先生も一生懸命に取り組んでいるはずです。話し合いの中からよくなる方向が見えてくるのではないかと思います。

そして、子どものようすを率直に伝えることで、担任の先生が配慮してくれることもあるでしょう。それで改善されないのであれば、校長先生に相談することも考えなくてはなりません。

 

もう1つは、勉強が負担になっているということです。
以前に比べ、小学校1年生でも課題が増え、十分に定着しないまま次の学習に入りがちです。教科書を見ながら、どこが難しいのかをいっしょに話し合ってみましょう。子どものつまずきが見えてきます。

学習のつまずきがわかれば、そこを家庭でおぎなってあげください。まだ1年生ですので、それほど難しい学習があるわけではありません。基本的なことをくり返し学習する中で、重要なことが定着し、「わかった!」という瞬間が増えてくれば、学習意欲も芽生えてくるでしょう。

学校の課題が定着しているか、小学校の中学年ぐらいまでは、家庭でもたまに見てあげることが大切です。そうした中から基礎的な力が蓄積されれば、やがて自主的に学ぶ力もついてくるのです。

小学校1年生というのは、2学期を終えるころまでは、一度「わかった」と思ってもすぐに忘れるものです。昨日理解したものでも、今日やらせるとさっぱりわからないということは、ごく普通にあります。ですから、何度も同じことをくり返しながら定着させてあげてください。

あとひと月ほどで夏休みです。それまではがんばってもらい、夏休みの間に一学期の復習をきちんとしておきましょう。さらにある程度でいいので、2学期以降の学習にも少し目をとおし、問題を解いてみるのもいいでしょう。

その中で、自分自身が授業の中でもやれるという感覚を持ち、先生にも評価されれば、局面は変わってくるのではないでしょうか。

 

ただ、お子さんが「頭が痛い」と言うから休ませる――という判断には、慎重であるべきだと思います。

というのも、1年生の学習は、1つひとつが重要な学習であり、少しでも休むとそれを翌日になって取り返すことはより負担に感じるからです。

体育や図工は好きで、友だちとの交流は楽しいと思っているのですから、学校そのものが嫌いにならないよう、今ある課題を絞り込んで、克服するように導いていってください。

学校の先生の考えもしっかり聞きながら、学校と家庭でしっかりとお子さんを支え、安心感を与えて欲しいと思います。

関連記事

【第11回】約束を守らずゲームをし続ける息子
【第12回】小学校5年生の息子の成績を上げたい
【第13回】家で勉強に集中できない
【第14回】小5娘の反抗期
【第15回】中学受験に失敗し、スマホばかりする息子
【第17回】夏休み特別編 その1 自主的に自由研究に取り組んでほしい
シリーズ「教えて! 陰山先生」第1回から第10回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第11回から第20回まとめ
シリーズ「教えて! 陰山先生」第21回から第34回(最終回)まとめ

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

陰山英男(かげやまひでお)

1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。百ます計算や漢字練習の反復学習を続け基礎学力の向上に取り組む一方、そろばん指導やICT機器の活用など新旧を問わず積極的に導入する教育法によって子どもたちの学力向上を実現している。近年は、ネットなどを使った個別の小学生英語など、グローバル人材の育成に向けて提案や実践などに取り組んでいる。
2006年4月から立命館大学 教授(立命館小学校副校長 兼任)に就任。現在は、立命館大学 教育開発推進機構 教授(立命館小学校校長顧問 兼任) 。全国各地で学力向上アドバイザーなどにも就任し、学力向上で成果をあげている。また、北は北海道,南は沖縄まで、全国各地で講演会を実施している。
過去には、文部科学省 中央教育審議会教育課程部会委員,内閣官房 教育再生会議委員,大阪府教育委員会委員長などを歴任。
著書多数。
Webサイト http://kageyamahideo.com/

PAGETOP