やりたいことが見つかってスイッチが入ると人は変わる/子どもが伸びる親力【第2回】
待てない親は子どもができないことに目を瞑ることができずに、毎日ガミガミ叱り続けます。それによって、子どもは自己肯定感が持てなくなり「ぼくはダメな子だ」と思い込むようになります。
隣のクラスにいた子との再会
あるコンビニでのことです。
買いたい物を選んでレジに持っていったところ、そこに立っていた店員さんに見覚えがありました。
彼は私が以前教えた4年生のクラスの隣のクラスにいた子でした。
私はそのクラスの体育を受け持っていたので、週に3回ほど顔を合わせていました。
彼も私のことを覚えてくれていて、「先生、お久しぶりです。○○です」と言ってくれました。
そして、ちょうど仕事の終わりの時間だというので、外で立ち話をしました。
とても手のかかる子だった
立ち話の冒頭で、彼自ら「先生にもご迷惑をおかけしました」と話し始めました。
彼が言うには、「自分はだらしがなくて、時間を守らなくて、けじめがつかなくて、忘れ物が多くて、勉強が嫌いで、宿題はやらなくて、おしゃべりが多くて、先生の話を聞いていなくて……」とのことでした。
まったくその通りだったので、私も笑いながらうなずくばかりでした。
彼は、友達ともめたり先生に注意されたりすると、いじけて机の下にもぐりこんだり、あるいは壁に向かって座り込んだりして、そこで固まるという習性もありました。
担任の先生もこれには困っていました。
私も体育の授業中によく困らせられたもので、それもあってよく覚えていたのです。
彼の親も「この子はこんな調子で将来どうなるのか?」と心配していました。
それで、専門家の教育相談を受けてアドバイスをしてもらっていました。
今はやる気満々の毎日
昔話でひとしきり盛り上がった後で、今現在の話に移りました。
彼は、コンビニでアルバイトをしながら、プログラマーを目指して専門学校で勉強しているそうです。
今は勉強が楽しくてたまらないそうです。
授業で新しいことを学んで、自分でも本で勉強して、できなかったことができるようになっていくのが本当に楽しいと言っていました。
それを語る彼の表情はきらきらしていて、やる気満々といった感じでした。
聞いている私の方もエネルギーをもらいました。
お試しする中でやりたいことが見つかった
プログラマーになりたいと思ったきっかけは、高校生のとき親に勧められて参加したパソコン講座だそうです。
講座では簡単なhtmlを学んで、パソコン上に自分のサイトをつくりました。
自分の打ち込んだhtmlによって、だんだんサイトができあがっていくのが、わくわくするほどうれしかったそうです。
それで、ウェブデザイナーかプログラマーになりたいと思うようになったとのことです。
彼は、その頃、○○講座や□□教室と名のつくところにお試しでいろいろ行ったそうです。
その中でパソコン講座に出会って人生が変わったというわけです。
時間にルーズだった子が…
アルバイトと専門学校の両立はかなり大変とのことで、とにかく毎日時間を大切にしながら生活しているそうです。
小学4年生の時には超がつくほど時間にルーズだった彼が、この変わりようです。
私は、やりたいこと・目的・夢が見つかってやる気スイッチが入ると、人はこれほどまでにかわるのだとあらためて思いました。
というわけで、今の目の前の子どもがかつての彼のような子だとしても、大丈夫です!
やがて、やりたいことを見つけて、自らやる気スイッチを押すときが必ず来ます。
待てる親と待てない親
ですから、待てる親であってください。
待てない親は子どもができないことに目を瞑ることができずに、毎日ガミガミ叱り続けます。
それによって、子どもは自己肯定感が持てなくなり「ぼくはダメな子だ」と思い込むようになります。
すると、やる気スイッチが入りそうなときにも、「これをがんばってみたい。でも、どうせぼくはダメだろうな」となって、今ひとつスイッチが入らないままになってしまいます。
関連記事/子どもが伸びる親力
【第1回】親は「何、どこ、いつ、なんで、誰」の5Wで子どもを困らせる
【第3回】あなたは、子どもたちにどんな人生を生きて欲しいですか?
シリーズ「子どもが伸びる親力」第1回から第10回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第11回から第20回まとめ
シリーズ「子どもが伸びる親力」第21回から第32回(最終回)まとめ