算数・数学が苦手な子に親ができること/子どもが伸びる親力【第23回】
算数・数学が苦手な子はつらい。日本の学校では、わからない子への個別指導ができないので、親が家庭で教える場合は子どもの躓きを見つけて、教えて、反復練習させましょう。「これもマル、これもマル。すごい。算数得意じゃん」など、プラス思考でほめてあげることが大切です。
算数・数学が苦手な子はつらい
算数・数学ができない子は、授業中つらい思いをしていることが少なくないです 。
特に高学年や中学生はそうです。
国語や社会などなら、苦手な子でも部分的にわかるということもあります。
でも、算数・数学はそうはいきません。
なぜなら、算数・数学は積み上げ教科だからです。
つまり、既に学んだ内容の上に新しい内容を積み上げていく教科だということです。
ですから、躓いてよくわからないままになってしまうと、その後はますますわからなくなってしまうのです。
算数・数学が苦手な子の多くは、わけがわからないまま教室に座っているという状態が続きます。
日本の学校では、わからない子への個別指導ができない
本来は学校でそういうところまで個別指導して、一人一人の躓きに対応してくれるといいのですが、実際にはそれができません。
なぜなら、日本は小学1年生は35人学級ですが、それ以外は基本的に40人学級、つまり大人数教育だからです。
日本の先生が授業中に個別指導をしていれば、他の子はほったらかしになります。
そもそも授業を進めることができませんので、その学年で教えるべき内容を教え切ることができなくなります。
休み時間に個別指導をすれば、次の受業の準備もできませんし、保護者からの連絡帳に目をとおして返事を書くこともできません。
子どもたちとおしゃべりしたり触れ合ったりなどのコミュニケーションもできません。
欧米の学校では、わからない子への個別指導ができる
欧米は教育予算を増やして先生の数を増やし、少人数教育を実施していますから、個別指導が可能です。
例えば、フィンランドは1学級20人の少人数教育です。
同時に、複数担任制でもあり、アシスタントティーチャーがつきます。
その上、授業に付いていけない子に個別指導をするスペシャルティーチャーもつきます。
つまり、3人体制の授業なのです。
彼我の違いを嘆かざるを得ません。
資源のない日本ですから、教育にお金を向けて人づくりをすることが大切なはずです。
ところが、日本の教育機関に対する公的支出は、国内総生産(GDP)の約3.5%で、加盟34カ国の中で最下位です。
日本の最下位は6年連続です。
(以上は「図表でみる教育2015年版」より)
子育て世代の人たちと、そのよき理解者たちは、政治や行政に働きかけて教育の予算を獲得する必要があるのです。
教科書を厚くして授業時間を増やしても学力はつかない
日本の教育改革(?)は、学力を上げるために、教える内容を増やして、教科書を厚くして、授業時間を増やす、などという方向に進んでいます。
でも、こういうやりかたで子どもたちの学力を底上げすることは絶対にできません。
なぜなら、わからない子はわからないまま座っている時間が長くなるだけだからです。
家庭教師と塾の個別指導
では、親ができることは何でしょうか?
家庭教師をつけてあげれば個別指導してもらえます。
でも、それなりのお金がかかります。
塾で個別指導をしているところもあります。
個別指導でなくても、一度に数人を指導する少人数指導でも、かなりの程度その子のニーズに合わせた指導をしてもらえます。
もちろん、完全な個別指導ほどではありませんが、それなりのお金はかかります。
とはいえ、費用対効果はよいと思います。
一斉授業だけで個別指導や少人数指導をしてくれない塾もあります。
こういう塾に通わせても、算数・数学の苦手な子が普通程度まで追いつくことはありません。
なぜなら、わからないまま座っている時間が長くなるだけだからです。
イライラして叱ってしまう親は指導しないほうがいい
もちろん親が指導するのもいいでしょう。
お金的には一番楽です。
でも、時間がかかりますし、教えていてイライラしてしまうこともあるでしょう。
イライラして叱ってしまうようなら、やめたほうがいいですね。
そういう人は、塾や家庭教師に頼りましょう。
子どもの躓きを見つけて、教えて、反復練習
親が指導する場合、子どもがどこで躓いているか見つけることが必要です。
子どもによっては、小学1年生から始める必要があります。
小学1年生の教科書があれば、そこに出ている問題をやらせてみましょう。
教科書がなければ、市販の問題集を買ってきてやらせてみてください。
楽々できるので、けっこう子どもは喜びます。
そのとき、「できて当たり前」という態度で臨むのではなく、「これもマル、これもマル。すごい。算数得意じゃん」など、プラス思考でほめてあげることが大切です。
躓いているところが見つかれば、教えてあげて、類似問題で定着させます。
一度教えれば終わりということではなく、反復練習で定着させることが大事です。
躓きが見つかったとき、「こんな問題もできないの」などの言葉は禁句です。
「算数の傷が見つかってよかったね。身体の傷と同じで治療して治せばいいんだよ」など、前向きな話をしてあげてください。
この繰り返しを丁寧に実行していくことが必要です。
高学年の子でも、足し算、引き算、九九などで躓いている子もいます。
これらの基礎的な部分は、楽しみながら反復練習できるように工夫して、完全な定着を目指してください。
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