子どもが伸びる親力

子どものころ大人に言われて救われた言葉

子どものころ大人に言われて救われた言葉

「佐賀のがばいばあちゃん」(島田洋七著)の中にこういう逸話があります。

著者で漫才師の島田洋七さんは子どものころ勉強ができませんでした。
あるとき、1や2ばかり並んだ成績表を見せたとき、おばあちゃんが「足せば5になるだろ、人生は総合力」と言ってくれました。

洋七さんはこの言葉で救われました。
子どもを思いやる大人の優しいひと言が、どれだけ子どもの力になるかわかりません。

前回は「子どもに言ってはいけない言葉。親に言われて傷ついた言葉」を紹介しましたが、今回は逆に「大人に言われて救われた言葉」を紹介します。

50代女性・Fさんのお話。

夏休みに子ども会のイベントで「宿題お助け教室」があり、私は、そこで友達と一緒に算数の宿題をやっていました。

でも、その友達はどんどん問題が解けたのに、算数が苦手な私はなかなか進みませんでした。

私が「あ~、私、頭が悪くてイヤになる」と言ったら、近くにいた母親が、「あんたはお裁縫が得意じゃない。お裁縫なら誰もあんたに適わんよ」と言ってくれました。

すごくうれしくて、未だに思い出すとあたたかい気持ちになります。

40代女性・Dさんのお話。

私の父親は毎日帰りが遅くて、私は母親と弟と3人で過ごすことが多かったです。
ある日、3人で夕食を食べていたとき、母親がぽつりと「あなたがいてくれて救われるよ」と言いました。

なぜそう言ったのかなど、その前後は忘れましたが、「お母さんと弟のために、私もがんばらなきゃ」と思ったことを覚えています。

50代男性・Jさんのお話。

子どものころ先生が家庭訪問に来たのですが、「この子は授業中の手いたずらが多くて困る」「人の話を聞いてない」「だらしがなくて片づけができない」など、私の悪口ばかり言い始めました。

私と母親は恐縮して聞いているしかありませんでしたが、とつぜん襖が開いて隣の部屋から祖母が入ってきました。

そして、「あんたに何がわかる。あんたなんかにこの子の良さはわからん」と言い放ちました。

先生はきょとんとするばかり。
母親はますます恐縮して謝っていましたが、私は気持ちがすっきりして、祖母のことがますます好きになりました。

30代男性・Aさんのお話。

中学生のとき、社会の授業で友達が「国会でシュショーを選びます」とか言ったときに、私は「シュショーって何?」と聞きました。

それを聞いて、クラスの誰かが「首相って総理大臣のことじゃん。そんなのも知らないの?」と言ったので、私はしまったと思いました。

すると、先生が「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。○○君は向上心があって偉い」と言ってくれました。

これはうれしかったです。

20代女性・Mさんのお話。

小学生の時、家族でテレビドラマを見ていました。
飼っていた犬が交通事故で亡くなってしまう場面で、私は悲しくて涙がおさえられませんでした。

ティッシュで涙と鼻水を拭いていると、お父さんが「お前は気持ちが優しいな」と言ってくれました。

20代男性・Yさんのお話。

子どものころ習字の昇段試験に落ちました。
友達はみんな受かったのに、自分だけ落ちたのですごくがっかりして家に帰りました。

すると、母親からは「練習しないからでしょ」という冷たいひと言…。

ところが、後で帰宅したお父さんが「そうか、つらいなあ。お父さんも試験にたくさん落ちたよ。水泳の試験に落ちたし、英検の試験にも落ちた。大学の入試でも4連敗した。就職試験もいっぱい落ちた」と言って励ましてくれました。

40代女性・Eさんのお話。

小学生のころピアノ教室に通っていたのですが、ある日、まったくやる気がなくていい加減に弾いていました。

すると、ピアノの先生が「気の乗らない日もあるよね。先生だってあるもの。そういうとき無理にやると嫌いになるよね」と言いました。

そして、先生が羊羹か何か出してくれて、一緒に食べながらおしゃべりして帰ってきました。
それで、その先生のことが好きになって、通うのが楽しみになりました。
今でもその先生のことは懐かしく思い出します。

今考えても、ピアノの先生なのにこういうことを言えるのはすごいと思います。

傷口に塩を塗る言葉を言っていませんか?

子どもが悲しい気持ちでいるときや、失敗して落ち込んでいるとき、どういう言葉を贈ったらいいでしょうか?

傷口に塩を塗るような言葉はよくないですね。
そういう言葉は子どもを傷つけるだけでなく、言った人への不信感も出てきてしまいます。

失敗についてはすでに本人が反省していますので、わかりきった正論を言う必要はありません。

それよりも、つらい気持ちに共感したり励ましたりする言葉が大事ですね。

とにかく、まずは「共感」が大事

ただし、「つらいね」などの共感的な言葉がないまま、いきなり「だいじょうぶだよ」と励ますと、相手は「この人は私がどれだけつらいかわかってないな。そんな簡単なことじゃないんだよ」と感じてしまうことがあります。

ですから、大事なのは順番です。
いきなり励ますのではなく、まずは共感してあげてください。

「だいじょうぶだよ」は「つらいね」の後です。
これを覚えていてください。

また、場合によっては、たっぷり共感してあげるだけで、敢えて励ましはしない方がいい場合もあります。

ですから、相手の様子をよく見て対応することが大事です。

親野智可等(おやのちから)
教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。
著書多数。
Webサイト http://www.oyaryoku.jp/