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【震災に備える②】  防災のプロが語る・そのとき何をする? どう動く?

【震災に備える②】  防災のプロが語る・そのとき何をする? どう動く?

今年も3月11日がやってきました。私たちは、11年前に起こった東日本大震災のことを決して忘れてはいけない。そして、子どもたちに震災に関することを伝えていかなくてはいけません。同時に、いつ大きな地震が起こるかわからないなかで、自分と家族の命を守るために備えておく必要があります。

前回は、被災者のリアルな声、そして被災しても生き延びられる人の特徴について、国際災害レスキューナースの辻直美さんに教えてもらいました。第二回目となる今回は、いざ地震が起こった、そのとき何をすればいいのか、どう動けばいいのかという具体的なお話を伺います。

地震発生! まずは身の安全が確保できる場所で頭を守る!

今この瞬間に地震が起こったら、まずはどこへ避難をすればいいのでしょうか。

 

「家の中で揺れを感じたら、当然ですが、物が倒れてこない安全な場所へ。そして、頭(延髄)を守りましょう。机があれば、机の下に潜ります。ただし、頭を机の天板につけていては、落下物があったときの衝撃を直に受けてしまいます。机の足を持ちながら、低い姿勢をとりましょう。

 

机など身を隠すものがない場合は、その場でダンゴムシのポーズです。頭(延髄)と首、手首などの太い血管がある場所を守ることができます。

【ダンゴムシのポーズのやり方】

両方の手のひらを上向きにしてクロスさせ、首の後ろに当てる

そのまま体をまるくする

 

手だけではなく、クッションなどで頭を二重三重に守ると、さらに安全です」(辻さん)

 

じつはこのダンゴムシのポーズ、体が硬いと難しい! また、小さな子どもでも一人でとれるポーズですが、咄嗟にはできません。日頃から繰り返しダンゴムシのポーズを練習しておくことが重要です。

 

「その他の考えられる被災シチュエーションとしては、調理中の場合。キッチンは、もっとも物が倒れてきたり、危険なものが飛んできたりする場所です。コンロの火を消したら即座にその場から離れましょう。

 

お風呂に入っている場合も考えられますよね。湯船に浸かっていると、お湯が激しく揺れて立てなくなることがあるので十分気をつけて。洗面器などで頭を守りながら、お風呂場から逃げ出しましょう。

 

ちなみにお風呂は、かつては丈夫で安全な場所だと言われていました。しかし、それは古い情報です。最近はユニットバスだったり、はめ込み式だったりと、非常に造りが弱くなっているんです。トイレも然り。下手をすると、閉じ込められてしまう危険性もあります。トイレやお風呂に逃げ込むことは避けましょう

 

就寝中に揺れを感じたら、布団の中に潜ってダンゴムシのポーズ。これが一番頭などを守れる方法です」(辻さん)

家の中で一番長く過ごす場所に「安全地帯」を作る

ここで考えなくてはいけないのが、「自分の家の中で安全な場所ってどこだろう?」ということ。

 

家の構造上、もっとも安全な場所は玄関です。どんな一軒家やマンションでも、かなり丈夫な造りになっています。けれども、家の中で揺れを感じたらすぐに玄関に走れるかというと、現実では難しいのではないでしょうか。

 

では、『家族が一番長い時間過ごす場所はどこか?』から考えてみましょう。コロナ禍で在宅勤務が増えたり、オンライン授業に切り替わったりして、おそらく多くのご家庭ではリビングがもっとも長い時間を過ごす場所になっているのではないでしょうか。であれば、リビングの中に、地震が起こっても安全な場所を作っておけば、いざというときに安心ということです。

 

地震が起きたとき、物は飛ぶ・倒れる・移動するといった動きをします。それを想定したうえで、安全な場所を作っておくんです。まずは、物が倒れてこない場所を確保します。重いものは高い位置に置かない、棚に滑り止めシートを敷いておく……方法はたくさんあります。その場所を安全地帯として、揺れを感じたらすぐさまその場所に避難する。

 

べランダと玄関まで逃げる導線を確保しておくことも重要です。扉の前が物で塞がってしまっては、外に逃げ出せませんから。私は防災セミナーなどで、いつもこう尋ねます。

 

『あなたの家のリビングは、今すぐにロボット掃除機がかけられますか?』

 

躊躇なくスイッチが押せる家は、物が片付いているということなので、いつ地震が起こっても動線の確保ができます。そうでない場合は、床に物を置かないよう意識しておくことが必要ですよね。実際には、さらに折り重なって物が落ちてきますから。不要な物は思い切って捨てたり、収納を見直したり……これだけでも立派な防災なんですよ」(辻さん)

 

安全な場所で身を守り、揺れがおさまったら、家の中をチェックし、壁に亀裂が入っていないか、物が倒れてきていないか、電気やガス、水が止まっていないかなどを確認します。そして、家の外の状況をチェックすると同時に、テレビやラジオから情報収集を。そのうえで、そのまま家に居てもいいのか、避難するのかを考える……という流れなのだそうです。

 

また、地震が起こるとスマホに釘付けになってしまう人がいますが、「ネットは貴重な情報源である半面、それだけを頼りにしていては危険です」と辻さん

 

「命を守るためには、自分が今いる場所の状況を把握しなくてはいけません。また、ネットには信憑性の低い情報もたくさん飛び交っています。本当に信頼できる情報かどうかを見極めつつ、自分の目で見て、その後の行動を判断していかなくてはいけないんですよ」(辻さん)

 

週末の家族時間を使って、楽しみながら防災対策を

辻さんに教わった地震が起こってからの一連の流れを見ていると、それらの行動をとるためには、事前の準備と訓練が不可欠だということがわかりました。

 

「準備しなきゃ、訓練しなきゃと思うと億劫になってしまうので、全部遊びにしてしまえばいいんです。たとえば、週末に家族でくつろいでいるとき、ホイッスルを1回吹いたらダンゴムシのポーズをとる、2回吹いたら机の下に潜る、なんてどうでしょうか。何の前触れもなくホイッスルを吹くことがポイントです。

 

実際にやってみることで、ダンゴムシのポーズがうまくとれない、家族全員が食卓の下には入れないといった事実が判明すると思います。そこから、対策を考えていけばいい。リビングに安全地帯がなかったら、家族みんなで考えながら作る。被災したときの家族の連絡手段も、あらかじめ全員で話し合って決めておけば安心です。我が家の場合はこうする!というオリジナルの防災を見つけていくことが、とても大切なんですよ」(辻さん)

 

最終回となる次回は、被災時に本当に役立つ防災リュックの中身についてお伝えします。

 

 

(取材・文)水谷映美

【震災に備える①】  防災のプロが語る・地震が起こったときに「命を守ることができた人」とは

【震災に備える③】  防災のプロに聞いた・「本当に使える防災リュック」の中身

お話を聞いた人:国際災害レスキューナース/一般社団法人 育母塾 代表理事 辻直美さん

お話を聞いた人:国際災害レスキューナース/一般社団法人 育母塾 代表理事 辻直美さん

お話を聞いた人:国際災害レスキューナース/一般社団法人 育母塾 代表理事 辻直美さん

阪神・淡路大震災で実家が全壊したことを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。現在は講演会と防災教育をメインに、要請があれば被災地で活動を行っている。近著は『保存版防災ハンドメイド100均グッズで作れちゃう!』(KADOKAWA)。

※辻直美さんの「辻」は「二点しんにょう」です

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