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Case 9 ケータイ世代の電話事情(2)/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 9 ケータイ世代の電話事情(2)/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

前回は、電話に出ないことが平気なユカのエピソードでしたが、そんなユカの意外な弱点とは?

ユカ、緊張しすぎて時代劇に

大学生になってバイトを始めたユカ。そのバイトでいちばん苦労しているのが、電話応対です。

たいしたことではないと思っていたわたしは、あるとき、家にかかってきた電話にユカが出て「すみません、もういちど何者か教えてください」と応対していたのを見て、おもしろいを通りこして、さすがに心配になりました。

「そういうときには『どちらさまでしょうか』でしょう。『なにものか』って、時代劇か!」とわたしがツッコむと、ユカはほんとうにヘコんだ顔をして「わかってる! 緊張すると出てこないの!!」と言い訳をしていました。

ユカの名誉のためにつけくわえると、バイト先でも「ユカさんの敬語は大丈夫」と言われているので、本来ならもうちょっとまともに話せるはずです。

どうやら、苦手すぎて電話をまえにカチカチになっているようです。電話のなにがそんなに苦手なのでしょう? ユカに聞いてみました。

「相手の名前や用件を聞きとるのが苦手。メールで送ってほしい」
「うまく聞きとれないと相手の人がイライラするのがわかって怖い」

昔の電話は「公」、いまは「私」

いま、電話はひとり一台の時代です。ひとつの電話番号で出るのはたったひとりという「わたしの電話」があたりまえで育ってきたケータイ世代のユカは、電話をかけたら「あ、いま大丈夫?」と話しはじめます。自分の名前を言う必要も、相手をたしかめる必要もないのです。

ところが、バイト先の電話は「わたしの電話」ではありません。「だれかわからない人」からの電話に「会社の一員」として出ないといけません。電話が鳴ったら待ったなしでスタートです。

電話という音声だけのやりとりは、あとから見かえすことができません。「既読スルー」もできないので、相手の感情はその場で受けとめて、スタンプも絵文字も使わず自分の声と言葉だけでコミュニケーションをとらないといけません。それは、ユカの慣れ親しんできたSNSとはまったくちがいます。
SNSとも、「わたしの電話」ともまったくちがう電話に、ユカの苦手意識はどんどん大きくなってしまったようです。

電話が一家に一台だった家電(いえでん)世代のわたしには、電話は大人の言葉づかいをする必要がある、ちょっと緊張するものでした。
「友だち」も「おとうさんの会社の人」もかけてきて、自分がかけるときも「相手の家族のだれ」が出るかわかりませんでした。
家電は小さな「公」の窓口で、わたしは自然に心構えができていたのです。

いまは家電がない家庭も増えてきています。ネットマナーやSNSについての講習といっしょに「電話の出かた」を教わる日も近いかも……?

慣れるしかない! がんばれケータイ・スマホ世代

ユカにかぎらずケータイ・スマホと育つ子どもたちは、バイトや就活が始まると急に「私」から「公」になった電話に対して、同じようなとまどいを感じることになるでしょう。電話よりメールやLINEのほうが確実だと、不満に思うかもしれません。

いずれケータイ・スマホ世代が社会の多数になったら、ビジネスマナーも変わるでしょう。でもいまは「ケータイを持っていても電話しかかけない」という世代とユカ世代がいっしょに暮らしていますから、ユカがいま直面している悩みはしばらく社会現象として続くでしょう。

「ママはケータイに電話かけても『○○さんですか』って確認するけど、あれって古い感じ」とわたしを笑っていたユカですが、いまや、すっかり立場が逆転。わたしが「電話に『なにもの』って出ないでね、いま平成だから」とユカをからかっています。なかなかいい気分です。

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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