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Case 20 ノートをとるか、写真をとるか/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

Case 20 ノートをとるか、写真をとるか/わが家のSNSトラブル ~ユカの事件簿~

スマホで手軽に写真が残せるようになったいま、「先生が授業をしながら黒板に要点や図を書いていき、学生がそれを書き写す」という授業風景は、過去のものになりつつあるのでしょうか。

いま、大学生はノートをとっているの?

2015年のことですが、深夜のトーク番組で、「大学の授業スライドをスマホで撮影する学生はOKか?」が話題になっていました。わたしが仕事でかかわっているセミナー(社会人向け)でも、受講者がスライドを撮影する姿はここ数年おなじみの光景です。

スマホで手軽に写真が残せるようになったいま、「先生が授業をしながら黒板に要点や図を書いていき、学生がそれを書き写す」という授業風景は、過去のものになりつつあるのでしょうか。

娘のユカに大学のようすを聞いてみると、意外にも、ユカ本人も他の学生も板書は普通にノートに書き写していると言います。
学校側から撮影禁止されているわけではなく、とりたいならとることができますが、写真をとる学生はあまりいないそうです。
なぜ板書を撮影しないのかとユカに聞いてみたところ、たいへんシンプルな答えが返ってきました。

「だって、写真をとっても頭に入らないじゃない」

ノートをとるのが追いつかない(特にスライドを使った授業)ときに復習の補助として板書の写真をとることはあるそうです。
しかし授業の板書を全部スマホでとったところで、そこから自分でまとめたら結局二度手間、残しただけで安心して終わりなら、むしろ逆効果です。
ノートをとることで自分の頭を使うほうが授業内容を理解できる、とユカはあたりまえの顔で答えました。

つまりノートをとるほうが効率的なので、ユカたちはノートをとっているのです。わたしはそれを聞いて、ユカたちはスマホの便利さに惑わされず自分が主体で学んでいるのだと安心しました。

実は、板書は著作物

ところで、学校や教師から禁止されなければ、板書のスマホ撮影や録音は問題ないのでしょうか?

シャッター音がまわりの人の迷惑になる、暗い講義室でスマホの画面の明るさが周囲の邪魔になる……などいろいろ考えられますが、意外な問題もあります。それは著作権の問題です。

実は板書は、書いた人の著作物になるので、許諾なく勝手に複製したり配ったりすることは著作権の侵害になります。「私的使用のための複製」(この場合自分で勉強するため)以外で使用すること……たとえば、許可なく友だちにLINEで板書の画像を送ったり、ネット上で公開したりすることは、NGなのです。

電車内で他人を撮影してSNSに載せることが肖像権の侵害になるのと同様、板書画像の共有も気軽にやってしまいそうなことですが、悪気はなくとも法律違反をしてしまう可能性もあるのです。

複製・公開がかんたんでなかった時代と違い、著作権はネット社会でしっかり意識していかないといけないことのひとつです。

学びの道具が進化しても、学びの主役は「自分」

小学校や中学校でのタブレット端末をつかった授業はすでに始まっており、デジタルデバイスはこの先も授業で大きな役割を果たすようになります。板書やノートもやがてデジタルのものに取って代わられ、授業内容がデータで残っているのがあたりまえになるかもしれません。

それでも、スマホのデータがそのまま人間の脳に記憶としてインストールできるようなSFじみた技術でもできない限り、なにかを学ぶには自分の頭を使って理解したり記憶したりしなければならないことは変わりません。

トイレの壁にはる「九九の表」が、スマホの「九九アプリ」に代わっても、「にいちがに」とくりかえすのは自分です。あくまでスマホは道具で、学びの主役は自分なのです!

学習方法の変化で親世代の経験が通用しなくなっても、親が子どもに変わらず教えられるのは、このような学びの態度だとわたしは思います。

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マリ(まり)

マリ(まり)

マリ(まり)

サラリーマンの夫・大学生の娘(ユカ)との3人暮らし。
大学の恩師の「あなたは一生文章を書きつづけなさい」という言葉を真に受けて、今も日々ものを書いている。
現在はIT系の会社で、セミナー関連の仕事に携わっている。
趣味は映画鑑賞。年に100本みることがひそかな目標。

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